第13話 楠木の誘い
僕は楠木を家まで送って行く。楠木は断ったが父の指示がある。送って行かなかったら、父に行かなかった理由を説明しなくてはならない。
僕は楠木に死ぬ人がどのように見えるのか教えてもらう。
「死ぬ人は、さっき話したように濃い黒い靄が体全体にかかっているわ。死に近い人ほど靄が濃いのよ。」「お母さんの靄は晴れるのかな。」
「薄い靄だと消えた人もいるけど濃くなるとだめだわ。」「お母さんの靄は薄いの。」
「うん、薄いから消えるかもしれないわ。でもどうしたらいいのかわからないの。」「僕に何かできないか考えるよ。」「頑張ってね。」
話しているうちに楠木の家に着く。
「今日は母がごめんね。また明日、学校で。」「待って、お願いがあるの。」
「僕にできることならOKだよ。」「あのね。買い物に付き合って欲しいの。」
「それなら、日曜日にでもみんなで行こうか。」「違うの。」
「えっ。間違った?買い物に行くんでしょ。」「私は日下君と二人で行きたいの。」
えええっ、これってデートではないの。楠木は僕に気があるのかな。楠木、顔が赤くなっている。かわいいな。
僕が茫然としていると楠木が僕を見つめて言う。
「だめなの。」「いいよ、楽しみだな。いつにする。」
「日曜日はどお。」「大丈夫だよ。待ち合わせはどこにしようか。」
「桐ヶ丘駅の噴水の前で待ちましょ。」「わかった。時間は10時でどお。」
「うん10時に噴水前ね。」「楽しみにしているよ。さようなら。」「うん、バイバイ」
僕が家に帰ると母は再び寝込んでいた。父が僕に言う。
「今日は嫌な気持ちにさせてしまったな。麻木は、かなり参っている。」「僕のことで頭が混乱しているんだね。」
「私は明後日から仕事へ行かなければならない。麻木はそっとしておいてくれ。」「分かったよ。」
僕は、リアルな夢を見ずに過ごしている。これも日浄さんと楠木のおかげだ。
すると母が起きてくる。母は僕を見るという。
「あの子とは、わかれたのでしょうね。」「なぜそんなことを言うんだ。」
「分からないの。悪いものに憑かれているとか言って、お祓いまでさせているのよ。」「楠木さんは間違っていないよ。」
「このままだと連続殺人の犯人にされてしまうよ。」「僕は殺していないよ。殺したのはアラタだよ。」
「そんな穢れが人を殺したなんて世間で通るはずないよ。」「もういいよ。」
僕は母を残して2階へ上がる。




