第12話 楠木、光喜の両親に会う
放課後、僕は楠木と下校する。勝也と井上たちも一緒だ。僕と楠木は直接家へ向かう。なぜか勝也と井上たちも一緒だ。勝也はともかく井上たちは勘違いをしているに違いない。
井上たちは楠木に言う。
「厳しいことを言われるかもしれないが、くじけるなよ。」「覚悟はしているわ。」
みんな、僕のお父さんが楠木にひどいことを言うと思っているらしい。僕はみんなに言う。
「お父さんは、楠木と話したいだけなんだ。ひどいことを言ったりしないよ。」「どうかな。自分の息子が関わっているから別れろとか言うかもしれないぞ。」
井上が僕と楠木が付き合っている前提で発言する。これは楠木に失礼だ。楠木は親切で僕を助けてくれているのだ。勝也が井上に言う。
「光喜は楠木と付き合っていないぞ。」「そうなのか。光喜が積極的だから楠木と付き合っていると思っていたぞ。」
みんながうなづく。これは、クラスで僕と楠木が付き合っていることになっているかもしれない。そうこうしているうちに僕の家に着く。僕と楠木は、みんなに見送られて家に入る。
「ただいま。」「お帰り。」
父が玄関に出てくる。楠木がお辞儀して言う。
「お邪魔します。」「楠木さんだね。待っていたよ。入ってください。」
僕たちは居間に入る。隣の部屋では母が寝込んでいる。席に着くと父が話し始める。
「光喜から楠木さんの話は聞いている。光喜を助けようとしてくれてありがとう。」「いえ、私は責められるものだと思っていました。」
「幼稚園で友達の死を予言した時のようにかな。」「はい、私は友達が個通事故で死んだ後、幼稚園にいられなくなりました」
「大変だったね。」「いえ、私が軽率だったのです。子供でよくわかっていなかったのです。」
楠木が沈んだ声になる。まだ幼稚園児だつた頃のことが今でも楠木をとらえている。僕は楠木に悪くないと言ってあげたいが、軽いうわべだけの言葉になるだろう。
「楠木さん、つらいだろうが君は間違っていないと私は思う。何も知らない子供を責めることは間違っている。」「でも。」
「知らなかったんだろ。」「どうして、みんなに責められるのかさえ、わかっていませんでした。」
「だったら、周りの大人が間違っていたんだ。」
その時、隣で寝込んでいたはずの母が扉を開けて飛び込んでくる。
「あなた、なに甘いことを言っているの。」「麻木、よしなさい。」
「この子は光喜をそそのかせてお祓いに連れて行ったのよ。」「日下君には悪いものが憑いていました。お祓いは必要です。」
「もう、光喜に付きまとわないで、あんた町内でも有名なのよ。」「お母さんやめてくれ。」
「光喜惑わされないで。」「麻木、部屋に戻りなさい。光喜、楠木さんを送ってあげてくれ。」
父は母を抑えて部屋へ押し戻す。母が落ち着くまでには時間がかかるだろう。僕は楠木に謝る。
「こんなことになってごめん。家まで送るよ。」「それより、お母さんのこと注意してあげて。」
「何か見えたの。」「少し黒い靄がかかって見えたわ。死ぬ前の人はもっと濃い靄がかかっているわ。」
「ありがとう。気をつけるよ。」
母は、小山が来て僕の話を聞き、さらに。僕の話を聞いて追いつめられている。アラタが僕の中で封じられて、このままおとなしくしていることを望むばかりだ。




