第1話 はじまり
僕は日下光喜、桐ヶ丘高等学校1年2組に通学している。自分で言うのもなんだが、内気で人とコミュニケーションをとることが苦手だ。
だからクラスで友達と言えるのは、幼馴染の結城勝也一人だけである。勝也は僕と違って明るくて、すぐに人と打ち解けるところがありクラスでも友達が多い。
勝也は、いつも僕を誘ってくれるのでクラスで孤立することなくやっていられる。勝也は、今クラスの友達と話をしている。
僕は、一人で過ごしている。もちろん、勝也たちの会話に興味はない。すると勝也が僕に話しかけてくる。
「肝試ししないか。みんなで話していたんだ。」「僕はあまり興味ないな。」
「そんなこと言うなよ。きっと楽しいぞ。」「分かったよ。いつするんだ。」
「今夜、山にある廃病院ですることになったよ。」「廃病院か。うわさの所だろ。」
「大丈夫さ。7時に迎えに行くからな。」「ああ。」
僕は気乗りしないが、勝也が誘ったのでついて行くことにする。廃病院は街から外れた北の山の中腹にあった総合病院の址である。
幽霊が出るとか黒い塊の妖怪が出るなどと噂されている所である。もちろん立ち入り禁止だが放置されているため、心霊スポットになっている。
僕は家に帰ると母に「勝也が呼びに来るから」と言って、早めの夕食を食べる。母の日下麻木は、僕より勝也を信用しているのでなにも聞かなかった。
勝也は約束通り7時に呼びに来た。僕たちは自転車で廃病院に向かう。廃病院は街から離れているので、僕たちが集まっても警察に通報される恐れはない。
7時半には10人のメンバーが揃う。ルールは一人づつ3階の310号病室に置かれた10枚の紙の自分の順番の紙を取って来るというシンプルなものだ。
僕は7番目になる。勝也は8番目だ。1番目のメンバーが出発する。5分程で戻ってきて、2番目の者が出発する。1番目の者は自慢げに言う。
「大したことなかったよ。もっと雰囲気がないとだめだな。」「嘘をつけ、腰が引けていたぞ。」
仲間の一人が言う。
「防犯カメラを仕掛けていたんだ。スマホと連携するやつだよ。」「汚ねーぞー。」
「まーあ、怒るなよ。動けなくなっていたら助けないといけないだろ。」「ふん、わかったよ。」
一人5分位で肝試しは進んで行く。そして僕の順番が来る。僕は廃病院の中に入る。なぜか別世界に踏み込んだ気分になる。そして、1階の廊下を進んで階段を目指す。
僕は受付から視線を感じる。視線は僕に付いて来るような感じがする。僕は階段で一気に3階まで行く決意をする。一歩また一歩、階段を踏みしめて登っていく。
それにつれて視線が近くなる。僕は勇気を振り絞って振り返る。しかし、何もいない「気のせいか」と思った。すると耳元で声がする。
「体をよこせ」「えっ・・・誰だ。」
黒い影が僕の横にいた。僕は走って逃げる。僕は誤って3階に向けて走ってしまう。3階の廊下に上がると黒い影が僕の右手を掴む。冷たい、沼にでも手を入れた感じがする。
ここで僕の記憶が途切れる。
仲間たちは10分経っても僕が戻ってこないため、騒ぎ始める。
「防犯カメラはどうなんだ。」「それが、光喜が廃病院に入ってから何も映らないよ。スマホの操作を受け付けないよ。」
「肝心な時に役に立たないな。」「次は俺の番だから、探しに行くよ。」
勝也が僕を探しに向かう。そして、3階の廊下に倒れている僕を見つける。
「光喜、大丈夫か。」「う・・・ああ、勝也か。」
「どうした。体が氷のように冷たいぞ。」「黒い影に襲われたんだ。」
「とにかく。ここから出よう。歩けるか。」「何とか立てるよ。」
僕は勝也に支えられて廃病院から出る。外では仲間たちが待っていた。
「どうしたんだ。」「3階の廊下に倒れていた。」
「光喜、大丈夫か。」「ああ、何とか。」
「どうする、続けるか。」「何言っている。中止に決まっているだろ。」
「誰か、防犯カメラを回収するから付き合ってくれ。」「いやだよ。」
「分かった。一人で言って来るよ。」
仲間は無事、防犯カメラを回収するが青い顔をして帰って来る。
「どうした。青い顔をして。」「誰もいないはずなのに話し声が聞こえてきたんだ。」
「気のせいだろ。」「あれが出て行ったと聞こえたんだ。」
僕たちは怖くなり、早々と解散する。勝也は僕を家まで送ってくれた。
「今日は早く寝ろよ。」「ありがとう。」
僕はいつもより早く寝ることにいた。そして、悪夢を見る。僕が包丁で勝也を刺す夢だ。妙にリアルでまだ、右手に勝也を刺した感覚が残っている。




