第1章:第11話「“つくるひと”と“つかうひと” ― ひまわり中央バンクの夜 ―」
ローズ村のしくみを見たひまわり村は、
自分たちのお金の流れをどう守るべきか考えはじめます。
「中央の金庫」が生まれる前夜──
信頼をどう支えるかが静かに問われます。
ローズ村からロゼットが帰ってきた数日後の夜。
ひまわり村の集会所には、ふくろう長老、リオ団長、しばのすけ、りすのしんが集まっていた。
ランプの灯が、机の上のサンキューサンキューマネーを淡く照らしている。
あの“ありがとうがふえすぎた夏”の記憶が、まだ村のみんなの胸に残っていた。
「増やすこと」だけでは、幸せは守れない――
そんな思いが、静かにこの夜を包んでいた。
リオ団長:
「ローズ村の話、すごかったね。
“金庫をひとつにまとめて、みんなの信頼でお金を生み出す”なんて。」
ふくろう長老:
「うむ。わしらのサンキューも、もとは“信頼”の上に成り立っておる。
ただの紙でも、みんなが信じれば“ありがとう”になる。
しかしローズ村のように、“仕組み”を整えねば、その重みは守れぬのじゃ。」
しばのすけ:
「ローズ村には“中央銀行”っていう特別なところがあるんだよね?」
ふくろう長老:
「そうじゃ。はじめのローズ村にはワンワンバンクのような小さな銀行がいくつもあり、
それぞれが自分のサンキューマネーを出しておった。
だが次第に“金”の量より多くのサンキューマネーが出回り、混乱が起きた。
そこでローズ卿は考えた。“金をまとめる中央の金庫”を作り、
そこからだけ新しいお金を出すのじゃと。
それが“ローズ中央銀行”じゃ。」
リオ団長:
「争いのとき、村の借金をその中央銀行が助けたんだよね?」
ふくろう長老:
「うむ。税金だけではまにあわず、“未来に返す約束”を紙にして――
それを“ローズ債”と呼んだ。
中央銀行はその紙を受け取り、新しいお金を生み出し、
船や道具を作り、村を守る力に変えたのじゃ。」
りすのしん:「つまり、“未来の信頼”が“いまのお金”になるってこと?」
ふくろう長老:
「その通りじゃ。
金の重みと、信頼の重み――
そのふたつで、ローズ村は立ち上がったのじゃ。」
~ ひまわり村の“新しい仕組み”~
リオ団長:
「ぼくたちもローズ村みたいにできるかな?
でも、うちは金庫も金も集めていないよ。」
ふくろう長老:
「ならば、“心の金庫”を作ればよい。
わしが“サンキューを見守る代表”として立ち、
リオ団長が“村を代表して使い道を決める代表”として立つ。
ふたりの信頼でサンキューを生み出すのじゃ。」
長老は古い木箱を開けた。中には金色のハンコがひとつ。
ふくろう長老:
「このハンコを押すには、わしとリオ――“つくるひと”と“つかうひと”――
ふたりの印が必要じゃ。どちらか一方ではお金は生まれぬ。」
リオ団長:
「なるほど……どちらかが暴走すれば、村が乱れる。
だからこそ、ふたりの信頼が要るんだね。」
ふくろう長老:
「うむ。この印が押されたサンキューマネーは、“むら債”の約束を背に生まれる。
“今必要なもの”をつくりながら、“未来に信頼を返す”――
それが“ひまわり中央バンク”の約束じゃ。」
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ワンワンバンクの役割
しばのすけ:
「でも長老、ぼくのワンワンバンクはどうなるの?
ぼくはもうサンキューを作れないの?」
ふくろう長老:
「いや、違う。おぬしの役目は“流れを作ること”じゃ。
中央バンクが作ったお金を受け取り、
必要とするどうぶつたちに貸し出して、
村じゅうに信頼を回すのじゃ。
つまり、“信用で生まれるもう一つの創造”――
それがワンワンバンクの力じゃ。」
しばのすけ:
「なるほど。ぼくは“つくる”じゃなくて“増やしてまわす”。
でも、その流れが村を生かすんだね!」
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“ありがとうの経済”
リオ団長:「“つくるひと”と“つかうひと”、そして“まわすひと”。
三つの輪がそろって、村は動くんだね。」
ふくろう長老:「そうじゃ。
サンキューは、もう“ただのお金”ではない。
信頼が生み、信頼が流し、信頼が使う。
それが、わしらの“ありがとうの経済”じゃ。」
夜風がひまわりの丘をわたり、星々が光った。
りすのしんが空を見上げ、そっとつぶやいた。
りすのしん:
「ありがとうって……ほんとうに生きものみたいだね。」
この夜押された“信頼のハンコ”が、
のちに語り継がれる「ひまわり中央バンク」のはじまりとなった。
増やすだけでは守れない。
ローズ村の経験は、
“ひとつにまとめる仕組み”が信頼を支えることを教えてくれました。
ここから、ひまわり村の通貨の土台が整いはじめます。




