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はじめに ― 世界にいなくなった人へ
この物語は、「いなくなった誰か」のことを、今でも心のどこかで感じ続けている人へ向けて書かれた物語です。
もう会えないはずなのに、
ふとした瞬間に思い出す声や、
風の匂いや、空の色に重なる気配。
あなたにも、そんな“いないけれど、いる”としか言いようのない存在が、心に残っていませんか?
人がいなくなるということは、本当に“いなくなる”ことなのでしょうか。
記憶の中に、生き続ける存在。
姿は見えなくても、確かに感じられる関係。
それは、もしかするとこの世界のどこかに、もう一つの地球があるからなのかもしれません。
これは、そんな“失われたもの”を探す旅の物語です。
けれど同時に、“自分自身”と再び出会うための物語でもあります。
大切な誰かが、ただ消えてしまっただけの話ではありません。
いなくなっても、やさしく感じ続けられること。
その人がいたことが、今のあなたに静かに宿っていること。
そう信じて、静かにページをめくっていただけたら嬉しいです。