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花染家。

一つの部屋は黒いカーテンを閉められ、さらには天蓋ベッドのレースまでかけられていた。


その部屋に入ってきたのは薄紫色の肩までの伸びた髪の中性的な少女だった。

凛々しい赤目がカーテンを見据えて、バッと開くと朝日がベッドへと差し込む。



「ひゃああっ!熱い〜っ」


ベッドから起きた少女は緩やかな長い白髪をした可憐な雰囲気だった。薄紫の瞳には涙が滲んでいた。


「リオ…酷いよぉ、今何時…」


「7時。そろそろ起きないと。

てか、また昨日食事してないだろ?マリア」



マリアと呼ばれた少女は、花染マリア。

う…、と答えづらそうに目を伏せる。

それを見たマリアの妹である花染リオはやれやれと肩を竦めた。



「今日から新しい学校なのに…、血が足りなくて変身しちまったら…また転校になるの分かってる?」


「ごめんね…、今回はトマトジュースで乗り切るから。頑張るから」



マリアはベッドから出ると身支度を整えた。

アームウォーマーや日焼け対策も万全の様だった。


「リオはもう朝食も済ませたの?」


「朝方に美味そうなの見付けたから済ませられた」


リオはVサインをマリアに見せてバッグを持つ。


「さ、行こっか。って日傘も?

相当弱ってんなぁ」


「こうしないと焼けちゃうから…」



2人は苦笑いしながら学校へと向かう。

その間すれ違う人や通り過ぎる人達は、マリアに見惚れていた。

リオも顔は整っているが、マリアは容姿端麗だった。それに加えて弱っているため儚さも相まって酷く美しかった。


女のリオですら見ていると吸い込まれそうだった。


「リオは1年何組だった?」


少しふらつきながらマリアはリオを見つめる。

多少ドキリとしながら慌てて書類を見る。



「…4組だ。マリアは?」


「2年2組だよ。何かあったら来てね」



微笑むマリアに頬を染めてしまい俯くリオ。

分かったと呟き、2人は学校の門を潜り下駄箱でそれぞれのクラスへと向かっていった。



待っていた担任の先生に連れられ教室へと入るとザワついていた教室はシンっと静まり返る。

そして違うザワつきがマリアの緊張を高めた。



「花染マリアです。どうぞよろしくお願いします」


深々と頭を下げて前を向くと軽く目眩を覚えた。

そろそろ危ない。休み時間に何処かで…、マリアは考えていた。


しかし3回の休み時間は主にクラスの男子からの質問攻めで教室からは出られなかった。



昼休み。

壁伝いにヨロヨロ歩くマリア。

こんな状態では食事にありつけない。

トマトジュースもとっくに尽きてしまっていた。


その時目に入ったのは生物室。



(もしかしたら…いるかもしれない…)


生物準備室を開けて中へ入るがお目当てのものはいなかった。

小さく溜息をつくが、奥にいる男性に気付くとビクリと肩を揺らした。

居るとは思わなかった。


しかし灰色の髪の白衣の男性は微動だにしない。

意識は朦朧としていたが、眠っているのだろうと近寄っていく。


膝に手を置いてみる。

反応は無い。


(今のうちに…)


マリアはゴクリと喉を鳴らして男性の首筋に唇を付けるくらい近付くと軽く口を開いた。




「何をしているのかな」



「!!!!!」


ビックリして少し離れると長い前髪から、緑色の瞳と目が合う。


マリアは彼の肩に置いていた手を離し、オロオロとその場にへたり込んでしまう。



「眠ってる先生に襲いかかろうとしたの?」


クスリと口を歪めて見えてくる男性。

教師だった様だ。

マリアは言い訳を考える事も出来ない程頭が真っ白になり弱っていた。



「ふふ…辛そうだね。君が転校してきた花染姉妹の…マリアちゃんかな?…首筋を狙ってたけど…

まさか吸血鬼だったりする?」



マリアは先生を見つめる。

そしてとうとう力尽きボフンッと音を立て変身してしまった。



「ぁ…ああ…」


愕然とするマリアの声。

先生はその姿を見て興味津々だった。



「へぇ、仔犬?」



「なっ、狼です…っ」



恥ずかしそうにマリアは反論していた。




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