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魔力

 ちょっと待ってって言ったじゃん……。転移魔法特有の酔いは慣れない。1日に3回も転移してるんだけど。


 それよりもここが訓練場か。見た目はただの闘技場だ。楕円形のようなフィールドがあってまあまあ広い。地面は……砂かな。少しざらついていて滑る。


「さて、ラミアさん。魔法の適性をこれから測るのですが、こちらにきてもらってもいいですか?」


「え、嫌だ……」


「大丈夫ですよ。転移はしませんから」


「……わかりましたよ」


 仕方なく近づく。


「さっきより近づいたはいいものの少し遠くないですか?」


「いきなり転移させる方が悪いと思いますよ?」


「ウッ。そう言われると言い返しづらいですね…。まあいいです。私の過失でもあるので」


「ってそんなことはどうでもよくて。ラミアさんはどうやって魔法適性を調べるか知っていますか?」


「知らないですね」


 そういうとおもむろにサラさんがポケットから薄っぺらい何かを取り出す。


「これを私たちは『紙』というのですが、まずこれを掌に乗せます」


 『紙』を渡され、手の上に乗せる。


「次に魔力を流すのですが流せますか?」


「……無理かもしれないです」


「まあそうですよね。私も最初はそうでしたから。もしできたら驚きですよ」


 そうなんだ。初めて言われたことをできなかったから少し落ち込んだけど、サラさんもそうだったなら安心した。


「魔力を引き出す方法。まずは身体の中に意識を向けてみましょう。目を瞑って、落ち着いて、深呼吸でもしながら」


「フーー」


「心が落ち着いたら次は自分の内側に意識を向ける」


 ………見える。身体の中を何かが循環している。ぐるぐると、お腹の辺りから頭、つま先に至るまで、その流れが見える。これが、魔力?


「魔力の流れを掴んだようですね。そしたらその魔力を手の方に、一点に集めてみましょう。あなたの場合は魔力量が多いので多少下手でも魔力を外に出せるはずです」


 これらを手の方に移動させるため丁寧に移動させていく。



「上手ですよ。そろそろ魔力が体から溢れ出るはずです」


「ッッッ!」


 ボクの目の前、掌に小さな白い炎のようなものが現れ、それを掌にあった紙が吸収していく。


「よし。これで完了ね。その紙を貸してくれる?」


 掌にあった紙を恐る恐るサラさんに渡す。


「………なるほどね。あなたの適性は大きく分けて4つあるわ」

 

 結果が出たようだ。


「一つ目は水。これが一番適性があるようね。魔力の中に水の色をしているものが多いわ」


「二つ目に火。普通水を持っている人は火を持っていないのだけれどねえ。どちらも色が強すぎて相殺されなかったのかしら」


「三つ目に電気。希少な属性ね。久しぶりに見たわ。大体300年ぶりぐらいかしら。水と電気は相性がいいから好都合ですね。そして最後は…………………」


 サラさんがボクが持っている4つの適性を簡潔かつわかりやすく説明してくれた。


「総評としてはかなり魔法に適性があると思います。特に元素同士の相性は抜群。さらには魔力量の多さ。これだけの逸材はなかなかいません。本格的に魔法使いの道を勧めたいのですが……」


「あくまで魔法は戦闘手段の一部として使いたいですね。本命は剣術にありますし」


「ですよね。少し残念ですが……私もできる限り魔法の指南を施そうと思っているので安心してください。これから今後ラミアさんをどう扱うか会議が行われるので魔王城に移動しましょうか。転移魔法で」


「げっ。いやでも今回は言ってくれただけましか」


「あ、そうでした。転移の前に何か質問はありますか?魔法のことでも、あなたの今後でもなんでも」


「見た時に思ったことなのですが、ヴェラさんとはどのような関係なんですか?」


「ああ、ヴェラとは従姉妹という感じです。私の祖父はエルフなのですが、ダークエルフの祖母と結婚しましてね。2人子供ができてそれが私の母と、ヴェラの父です。なのでかなり血は通ってますね」


「違う種族でも結婚することって多いんですか?」


「いえ、普通はしません。仮に結婚しても近しい種族同士じゃないと子供も作れません。エルフとダークエルフが子供を作れるのは先祖が同じだからですね。先祖が違うと子供が作れない。これがこの世界でのルールです。他に何か質問は?」


「特には……」


「なら転移するので近くに寄って来てください。そんなに遠くでは転移可能範囲外じゃないですか」


 流石に警戒したいんだよ!行きにあんなことされちゃあ警戒心も高まるって。


 それが今の10メートルという距離感に全てが詰まってる。


「はあ。来てくれないと転移できないんですが」


「わかりましたよ」


「やっと来た…。それじゃあ、<テレポート>」



 魔王城の城門に着いたボクとサラさんはそこでお別れした。もう日にちが回っていてかなり月が明るい時間帯だ。『幼い子はもう寝る時間ですよ』とサラさんに言われたので家に帰らせてもらうことにした。


 明日も魔王城に来てもらうことになると思うけど、とも言われたので早く寝て体力を回復しなければ。


 ぼちぼちと家に入り、剣を置いたらすぐにベットに倒れ込む。こんなふかふかなものに横たわるのは初めてだ。今まで寝床と言ったら藁を床に敷いたものか、地面に寝そべるかの二択だった。なのでこれはかなり貴重な体験だ。


 気持ちいなー。もうすぐにでも寝てしまいそうだったけど、今日一日を振り返る。


 まず午前中は王都にいて、出陣したらすぐにサタンさんと交渉(お話)をした。


 そしてシオンを斬殺して城下町に転移。そこから色々あって最後はサラさんと魔法適性を測って今ここにいる感じだ。


 冷静に考えるととても忙しい、でも最高に充実した一日だった。


 そしてボクは今日が人生の転機だったと思いながら眠りにつくことにした。




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