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シタデル攻城戦

「あーティアに会いたいよー!」


「落ち着きなさいよ。今から戦いが始まるんだから」


 今ボクらがいるのはとある馬車の中。つい先日までいた戦場とはおさらばして新たな戦場に向かおうとしている。


 作戦の指示は全部サタンさんと魔王様から送られてきた。戦いが終わったあとに指示を仰いだら、近くにある都市も滅ぼしてこいって言われたから引き続きヴェラさんと一緒に都市を破壊しようとしている。


「戦いって言っても今回は単純な都市攻めですよね?そこはどちらかというと人数による人海作戦でどうにかするのでボクとかの出番は少ないんですよねー」


「…まあそうね。流石にあなた1人よりも何万人で都市の中を占拠する方が速いもの」


「ですよね。今ボクらが持っている戦力は大体7万ぐらい。対して標的となる都市の人口は18万人。余裕にも程がありますよ」


「油断しないでって言いたいけど。あなたの強さじゃ相手になるのは十二騎士の上位3人ぐらいでしょうね」


 心配要素はあるけどね……。幹部の皆さん、なんなら魔王様にも妹のことは言っていない。バレたら反逆行為ともみられるけどそこはしょうがない。そこまでして隠したいんだ。


「少なくとも目的地にいる可能性は低いかな、と思いますけどね。相手もバンバン十二騎士を駆り出すわけにもいかないと思うので」


「それにしてもやけにあなたには十二騎士が当たるわね。羨ましいわ」


「なんでですか?」


 水分を補給しながら聞き返す。


「刺激がないからよ。戦いを楽しみたいのは軍人の癖でしょ」


「でも実際のところ、十二騎士って言ってもピンキリですよ。本当に下位は寄せ集め感があります。それだと手応えも何もありませんよ」


「それはあなたから見てでしょ。一般兵にとっては十分な脅威よ」


 確かに、十二騎士に入れているだけでステータス10000オーバーは固いから、一般兵から見たら敵わない存在だろうね。


「………そろそろ着くんじゃないですかね。目の前に見えてきた都市だと思います」


「あれね、城塞都市シタデル。人間にとっての魔法使い養成機関の要、それもあってあの都市の周りには強固な結界が常時張られているわ」


 結界のイメージはペンタグラムの大会があったときにティアとサラさんが展開していたものと同じ。あの結界を何らかの強力なアイテムでずっと維持しているものと思われているけど実態は不明。いかんせん魔族とは大規模結界の張り方が違うからね。

 人間たちはアイテムを採用しているが、ボクたちは魔王様が全ての結界を張っている。魔族の王である魔王様は流石、結界術にも長けているようだ。


 そんなこんなでシタデルの手前まで来て、そこで馬車を止めて地に足をつける。


「まずは結界の破壊からですね。破壊にどのぐらいかかるでしょうか」


「やってみないとわからないけど10分ぐらいだと思うわ」


「あの結界を10分で破壊できるんですか⁈」


「もちろんよ。なんてったって私の愛称は『破壊』だもの。物を壊すのは得意よ」


 そうだよね、ヴェラさんだもん。初めて会った時にサタンさんを悶絶させたパンチがあれば結界の破壊は余裕だよね。


 でも、シタデルの結界って結構硬いんじゃないか?人間側にとっての魔法の全てが詰まっている場所、もちろんそれは結界に関しても同じだ。公平にみて、魔族の技術とあんま変わらない。


 結界の特性上、外からの衝撃に耐えるのと内側からの衝撃に耐えるのは変わらない。だから中に入れば破壊しやすいってことでもない。そもそも、結界があるから魔法が都市本体に当たらないし、まあバリアってことだ。だからボクらは最初に結界を破壊することに全力を注ぐ。


「ヴェラさん、もちろんボクも一緒に結界を破壊します。ヴェラさんは地上で、ボクは上から壊します」


「分かったわ。壊れた瞬間に兵を中に送るからそのつもりで」


「はーい。あ、そうだ。魔剣士隊のみんなは今回もヴェラさん指揮の下動いてね。なのでヴェラさん、彼らに突入の指示だけでもよろしくお願いします」


「了解」


「では幸運を祈ってます」


 そういってボクは魔法で空を飛んで、シタデルの結界の上にまできた。


「はぁ、また魔剣士隊をヴェラさんに預けちゃった。でも大丈夫だよね、ミーナに指示は出しといたから。ボクの言った通りにやってくれればなんとかなるはず!」


 ミーナはボクの中での信頼度がぐんぐんと上がっている。実力も上がったし、何よりコミュニケーションを頑張っていて、最近ではボクよりもミーナの方が団長をしている。

 おかしいな。ボクの隊のはずなんだけど。


「けどそれよりも、結界の破壊か」


 下を見ると結界に覆われた大都市が目に映る。今の時刻は夜。街の明かりも相まって綺麗に見える。


「まずは耐久力とかをテストしないとね。手始めに…<落雷>」


 ボクの頭上から3本の雷が放たれる。一見街に直撃しそう、とも思ったが一定のところまでいくといきなり結界が現れて雷を打ち消してしまった。


「やっぱり硬いねー。これじゃ魔法はダメそうだ」


 鞘から剣を抜いて結界に物理的ダメージを負わせようと試みた瞬間、ズドーンという音が辺り一体に響き渡った。


「お、ヴェラさんも攻撃を始めたみたいだね。そうなってくるとボクも負けてられないよね」


 ヴェラさんとボクの結界破壊勝負だ。


 剣を結界にぶつけても変な反動がきて弾かれるだけ。でもそれを意にも介さず攻撃していく。ヴェラさんも変わらず拳で破壊しようとしてるね。


 数分攻撃したところで段々とヒビが入っていく。今までは衝撃があるまで目に見えなかったのに、ヒビが入ったことで目視で確認もできるようになった。しかしそれはボクらにとってだけじゃない。この都市の中にいる人たちも見ることができるようになったのだ。


 結界の異常に気づいて急いで隊を組織し始めているのが目で見てわかる。この都市の中心はなんかよくわかんない施設。噂によると魔法研究所兼城塞らしいけどぶっちゃけちっちゃい。その施設に入れるのはせいぜい200人程度。住民が避難できるわけもない。


「「パリン!」」


「あ、割れた」


 下を見るとヴェラさんもちょうど破壊できたようだ。破壊勝負は一旦お預けって事で。


 破壊ができたところでヴェラさんに連絡を取る。


「ヴェラさん、ボクは上から魔法を打ってから街中に移動します。そっちはどうしますか?」


「私もそのつもりよ。指揮は他の子に任せてあるし問題ないと思うわ」


「わかりました」


 そう言って連絡を切った。


「………じゃあ宣言通り魔法をぶっ放しますか」


 魔力を一箇所に集めていく。今の気分的に焼き払いたくはないので雷魔法にしておく。


「<界雷>」


 雷の中でも冷たい魔法。雷魔法の中でも火元素を混ぜるか水元素を混ぜるかによって感覚的な温度が変わるからね、今回は冷たいのにしてみた。


「それにしても無様だねー。この雷は建物の中だったら効かないのになんで外に出てくんだろう」


 今の攻撃で動いている人間はかなり減った。これでこちら側も動きやすくなったと思う。魔族は人間より五感が優れてるから人間との鬼ごっこだと逃げられることは無い。……やっぱ魔族の方が圧倒的に強いよね。ボクがいうのもなんだけど人間ってへなちょこすぎると思うんだ。もうちょっと頑張ってもらわないとボクが面白くない。


「ボクも街に降りるか……」


 そう言って、ボクは街の中へと入っていった。



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