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 考えていると日は既に落ちていてあたりは真っ暗になった。しかし、その中でも火魔法が使われているランプだけは明るく辺りを照らしていた。


 兵士たちはそのランプを囲むようにいくつかのグループを形成しており、皆わいわい話をしながら食事をしている。


「それにしてもよお、あの部隊強すぎねえか?全員が俺らより圧倒的に強え。正直、俺はすぐにでも逃げ出したかったよ」


「同感だ。いくら下級兵士の俺らとはいえ5人がかりで1人も倒せねえとは」


「そのうち、生き残ったのは俺ら2人だけだしよ。飛んだ災難だぜ」


 お、なんか面白そうな会話が聞こえてきた。


「ねえねえ。その部隊の話、聞かせてくれる?」


 先ほどの会話をしている2人の間に入る。


「いいぜ。戦場の真ん中にとんでもなく強い集団が居たんだ」


「数は1000人ぐらいだが全員ステータスが異常だった。俺らが怖気付いてしまうほどにな」


 ボクの初陣でもあったけどステータス差がありすぎると相手はこわばって動かなくなる。圧っていうのかな。その現象が起こるのは大体ステータスが3倍以上違う時だから…この人たちのステータスを見ればわかるか。


<アナリシス>、そう小さく唱えて男達のステータスを覗き見る。


「なるほどなるほど……」


 平均2000って言ったとこか。3倍だから大体6000ぐらいのステータスを相手は持ってると。強くない?いや、もちろんボクには及ばないとしても魔王軍だと上級兵士になれると思うな。流石に准幹部にはなれないと思うけど…。だってそこ、あまりに力の壁が大きいんだもん。


 准幹部は最低でもステータスが1万は必要だしね。流石は選ばれし者たちなだけある。一般兵からすれば雲の上の人だろう。


「なんかさ、その隊の真ん中に指揮官みたいな人はいなかった?」


 指揮官について探りを入れてみる。


「どうだったかな。いかんせん俺らは中心からは遠い方だったからわかんねえってのが事実だ」


「ああ。でも確かに、一際大きな声で指示を出している人はいた気がするが…」


「ほう……」

 

 指揮官はいるかな。人ってあやふやでも意外と覚えていることが多い。だからもし違うことを言っていたら否定してくれるはず。


「ところでよ、おまえさんはどこら辺にいたんだ?戦ってる時は見なかった顔だが」


「ああ、実は今日は戦場に出てなかったんだよね」


「なんでだよ。俺ら下級兵士は全員出動命令がかかってたろ」


「あはは…いやー、そうじゃなくて……。申し訳ないけどボクは下級兵士じゃないから」


「そうなのか。悪かったな、勝手な思い込みで話して」


「いや、全然。また後で招集をかけるからその時はよろしくね」


「ああ、よろしくな」


 とりあえず、ここで会話は終了して位置についた。なんの位置かって?それはボクが招集をかける位置さ。


 高さ50センチぐらいのちょっとした台に登って、ここにいる2万5000人全員に呼びかける。


「はーいみんな注目!」


 拡声魔法を自分にかけて話し始める。


「ボクはラミア。魔王軍ではペンタグラム第1席を務めているんだけど…みんな知ってるかな?」


 そりゃあ知ってるよ、みたいな声がちらほらと聞こえてくる。よかった、知名度はあるみたい。


「で、ボクは今回この戦場で総大将をすることになったので皆さんに挨拶とちょっとした連絡を一点。明日からここにいる2万5000人の人のうち2万人は隣の中央の戦場に移ってもらいます。申し訳ないけど前線にいる残りの5000人の人は明日もここでお願いします」


 そう、この右側の戦場には3万人の魔王軍がいるがここまで戻ってきているのは2万5000人。残りの5,000人はもっと前で見張りをしている。王国軍が夜襲をかけて来たときのためにね。


「ボクらの方で残るメンバーを選抜してもいいんだけど、どうせなら自分達の意志で戦場を移すかどうか決めたいだろうからそこはみんなに任せることにする。けど、あんまり残ることはオススメしないかな」


 何でだ?というような疑問を呈する声が聞こえてくる。


「なんでかって?それは中央の戦場がまだ比較的穏やかなのに対してこちらの戦場は苛烈だから。生き残りたいなら中央の戦場に行ってくれ、でも自分が兵士だと思う人、真の猛者はこの戦場に残ってくれ。これがボクからの命令。どう?できる?」


「お、おう……」という声がちらほらと。まあ割と自分の演説は変だと思ってるから無理もないか。でも、ボクの話が終わった途端に一斉に移動が始まった。残るか、残らないか。これは彼ら兵士にとって重要な意味を持つ。それは説明しなくてもわかるはずだ。命の大切さと、兵士としての責務。どちらも捨てがたい。


「大体分かれたかな……」


 数も2万と5千に分かれた感じがする。


「いいね。じゃあ移動すると決めた人は明日の朝には移動を済ませておいてくれ。なるべく迅速に。健闘を祈る」


 そう言ってボクは拡声魔法を切り台から降りた。


 降りた直後すぐ、さっき話した男2人がボクの視界に映った。


「やあ、さっきぶりだね。君たちは残ってくれるの?」


「………なあ。おまえは本当にあのラミア様なのか?」


「うん、そうだけど」


「す、すげえ。これが魔王軍幹部かぁ…!人生で一度は会ってみたかったんだよ」


「俺もだ!こうして目の前にいることがめちゃくちゃ嬉しい!」


「そ、そんなに?」


「もちろんだ!本人様が知っているかは知らないがラミア様は結構人気があるんですよ、魔王軍内でも魔都一般でも」


「そうなんだ……」


「あ、質問の答えがまだでしたね。もちろん、俺らは残りますよ!なんてったってあのラミア様と一緒の戦場にいられるんですから!」


 ど、どうやらボクはかなり祀り上げられているらしい。そんな大層じゃないんだけどな……。


「あ、ありがとうね。じゃあ明日、頑張ろう」


「「はい!」」


 うー…狂信者に似た雰囲気を感じる…。コワイコワイ。


「でも、実際幹部の中ではボクは何番目人気なんだろう。帰ったら魔王様に聞いてくるか」




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