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緊急会議

「招集をかけましたがどのぐらいで来るでしょうか……」


 今は魔王様に急ぎで幹部の方々に来るように伝えてもらったところだ。


「お前たちがいつも最後だからそれよりは早いんじゃないか?」


「…………」


 お前たち、と言う言葉が胸に刺さる。普段いるはずの少女が隣にいない。頭の中に入ってくるだけで言葉が出てこなくなる。


「……ごめん。無神経なことをいった……」

 

 それを察したのか魔王様も謝罪を入れてくる。


「ううん、大丈夫です。少なくともここ数日は耐えなければならないですからね」


「そうだな。ミアにも休息が必要だった。と、考えればいいだけだ」


 魔王様と会話していると扉が開く音がした。


「あら、ティアが最初にいるなんて珍しいわね」


 入ってきたのはサラさんだった。


「だね。というかラミアはいないの?」


 と、ヴェラさん。本当にサラさんと仲がいいな。


「すまないが、今ラミアのことは気にしないでくれ。今回呼び出したのはあいつが関係している」


「そうですか…」


「なら余計な詮索はやめておきますね。事情は後で聞けるっぽいですし」


「頼むな」


 サラさんとヴェラさんが入ってきて10分ほどで幹部全員が揃った。魔王様のいる玉座の視点から見れたからちょっと新鮮だった。


「あれ、いつもこんだけ早く皆さんが揃っているなら私たちは……」


「そうだ。お前たちを待つのにこの倍の時間かかっているぞ」


「す、すみません……」


「気を付けてくれればいい。実はいつもティアとミアがくるまでの時間で賭けているのだがな……」


「ん?今なんか面白いことが聞こえた様な……」


「気にしなくていいぞ」




「で、魔王様。全員集まったわけですしそろそろ今回の要件を話してくれませんかね」


 ざわざわしていた部屋を一気に静めたのはサラさんだった。


「ああ。察しているやつも多いが今回の要件はラミアに関してだ。やつは今、記憶を失くしている」


「どういうことですか?」


「言葉の通りだ。今日の明け方にラミアが倒れているのをミーティアが発見した」


「ミアは血を出しながら倒れていて、その時には心臓が止まっていました。なので急いで魔王城の医務室に運んだんです。そして、ミアをベッドに寝かせてすぐにミアは目を覚ましました」


「記憶がなくなった状態でな」


「「「…………」」」


「…記憶喪失の具合はどの程度でしょうか」


 質問したのはサタンさんだった。


「我らの顔や名前、場所すらも覚えていないようだ。記憶がまっさらに近い」


「けど付け加えるならミアは自分の名前は無いと言っていました。さらには一人称も『私』でしたね」


 それを聞いてサタンさんが少し頷いた。


「なるほど。それを聞く限り、ラミアの記憶ではまだ村にいる、という認識になっていそうですね」


「村?」


「おそらくはラミアが生まれ育った村だろう」


「確かに……!ミアは医務室で目が覚めたときここは村の中ではないっぽい、とか言ってました!」


「じゃあおそらくはサタンの推察であっているだろう。ラミアの記憶はまだ勇者になる前、村にいた頃で止まっている可能性が高い」


 ……仮にそれが正しいとするならば、ミアはまだ人間に対する恨みを抱いていないはずだ。


「だとしたら本当に最初に戻っていますね。ステータスのことは愚か、魔族というものをわかっていないはずです」


「そうなのか?」


「ええ、私がはじめてラミアにあったとき。…確かラミアが勇者としての初陣の時ですかね。その時は私を異形の何かと認識していましたから。その後会話しても、魔族という単語をはじめて知ったようでしたし」


「でしたら街には出させない方がいいでしょう。人ではないものが住んでいるこの街に行ったとしたらきっとラミアは混乱してしまいます」


 間髪入れずにサラさんが会話に入ってきた。


「ああ。だから暴走しないためにも、今はラミアに眠ってもらっている。ミーティアの睡眠魔法でな」


「ティアの魔法で……」


「でも、いくらミーティアちゃんの魔法でもラミアだったらすぐに起きちゃうんじゃないの?あの子の魔法耐性ははっきり言って異常だし」


 ヴェラさんが言った。


「それが懸念していることなんですよね……。私のありったけの魔力を込めた魔法でもミアなら30分ぐらいで起きそうですし……」


「妥当な予測だな。もう既にラミアに魔法をかけてから15分ほど経っているから、残り15分で何か有効な手立てを考えなければならない」


「それならいい案がありますよ」


 発言をしたのはサルベージュさん。アンデッドなのにわかるのかな…?


「アンデッドは時々、前世の記憶を取り戻すことがある。すなわち生きていた時の記憶じゃな。そういう時は大抵の場合が死んだ場所、つまり記憶を置いてきた場所じゃ」


「ならミアを私たちの家に戻らせれば……」


「記憶を取り戻すかもしれないなぁ」


「なるほど。それはいい案だな」


「ただ問題はどうやってミアを家に送り届けるかだ」


「それは問題ないと思います。適当に移動することになったよーとか言って誘導すればいいですから。案外、ミアは単純なので引っかかるはずです」


「それもそうかもな………。ミーティアが言うことでもあるしまずはそうするしかないか」


「私もそれがいいと思います。サルベージュさんが言うんですから、その理論は正しいのでしょう」


「サタンもそう思うか。よし、ならまずすべきことはラミアを家まで誘導し、記憶を取り戻させることだ」


「魔王様、私あと3つほど話さないといけないことがあると思うんですけど」


「ん?なんだ?」


「1つ目は記憶を失うことになった原因を探ること。2つ目はミアがいない状態での人間との戦いについて。3つ目は幹部の皆さんのミアへの対応です」


「一番最後は明白じゃないかしら。極力ラミアと会わないようにする。これに限るわ」


「確かにな。仮に会ってしまったら突発的に記憶を取り戻してしまうかもしれないからな」


「ええ。けれどもし会ってしまった時にはどういう対応をすればいいでしょうか?」


「んー、難しいですが即座にミアの目を誤魔化してください。完全に見られても適当に話を逸らして」


「また難しいことをいうねえ」


「けどしょうがないです。これ以上にいい選択肢が思いつかないんですから」


 声を張り上げて強勢する。


「……1つ目と2つ目はまた後日にしましょう。今この場で話し合ってもいい案が出るとは思いません」


「……長引く可能性も高いか…。なら一旦この場は終わりにしよう。また何か進展があったら招集をかける。少しの間、柔軟な対応を求める」


「「「わかりました」」」



※※※



「さてと、まずはミアを家に戻らせたいんですが………」


「もう起きてしまっているかもな。誘導は任せるが、万が一のことが有ればすぐに連絡をくれ。念のため、ミアには剣を持たせるな。くれぐれも剣を持たせたら記憶を取りもどすかも……とか思うなよ」


「分かってますって。慎重にやりますから」


「頼んだ。では我もこのぐらいで自室に戻るとするか」


「さようなら」


「ああ、またな」


 魔王様と別れてミアのいる医務室へ向かう。


「ミアいるー?ってあれ⁈なんでミアがいないの!」




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