作戦終了
「団長ーー!」
「お、ギルクたち!大丈夫だった?」
「俺は大丈夫ですけど………。早くここを離脱しましょう。街はもう燃えていて壊滅したと見て問題ないかと、これ以上ここの居れば俺たちも灰となっちゃいますよ」
「それもそうだね」
「ティアさんやミーナ、リゼさんは既に離脱しています」
「本当?じゃあここにいるのはボクらだけ?」
「そうです」
「じゃあ早いとこ行っちゃおう。成功を噛み締めながらね」
ポケットにあった転移石を使い、魔都の近くにある森へ転移した。
これにて、モンスーン襲撃作戦は終了したのだった。
「なんか意外な収穫があったな」
ハルカ、フェイクをやれたのは大きい。しかしそれ以上に今の王国内の情勢が知れたことがでかい。わざわざ調査をしなくても良くなった。ザルバトスは……馬鹿だけどなんだかんだいい奴だったって最後に知れたし。
「それにしても、か」
まさか妹が十二騎士になっていたなんて。嫌だなぁ、対峙したくないなぁ。どういう顔で会えばいいんだ。正体を明かさなくてもいいけどいずれバレそうだし。
あとは勇者かー。さらっと言ってて流しそうになったけど復活してるのか。勇者っていう職業は魔族に対して大幅な有利を持っている。けどまぁ、ボクには効かないんじゃない?そのデバフ。
「ミア!」
「ティア!」
ティアがボクの顔を見たと同時に抱きついてきた。珍しい。
「大丈夫?怪我はない?怪我があるなら私がヒールで……」
「平気平気。なんの問題もないよ」
「とりあえずミアが無事ならよかった……!先に離脱しちゃったから状況が掴めなくて」
「ボクが怪我するわけないでしょ。それより、フェイクにやられた面々の傷は治りそう?」
「幸い、治らないような重傷を負った人はいないみたいね。今は全員意識も戻っているわ」
「ならよかった。みんな、注目!」
この場にいた全員に声をかけ、ボクに視線を集めさせる。
「これにてモンスーン襲撃作戦は終了した!結果としてモンスーンはもはや都市ではなく、さらには十二騎士であるハルカとフェイクを討ち取った!これは大きな戦果だ!」
「「「オオォォォーーー!」」」
「また今度、みんなで祝杯をあげようね。では各自解散してよし!」
みんなは雑談した後に各々家に帰宅して行った。幸い、魔王城の医務室に運ばれるような人はいなかったみたいだし。
「ティア、ボクらも家に帰ろっか」
「だね。もう朝だよ。早く寝て今日の午後には魔王様に戦果を報告しないと」
「それもそうだね」
そうして笑い合いながら帰路に着いたのであった。
※※※
久しぶりに号令がかかった。この場にいるのはメシア王国十二騎士のみ。皆が揃って忙しいため、よっぽどのことがなければ号令はかからない。
「みな、席についたな」
この場を取りまとめる者、王国十二騎士第一席『尊貴』ヴェロスト。王国十二騎士長といえばこの方以外相応しくない。王国を作り上げた英雄の血を引き、長年にわたって王国を支えてきた立役者だ。
「先日、モンスーンの都市が焼け野原となった。生き残った者はおらず、そこに住んでいた10万もの民の命が失われてしまった」
「なぜ、そのような火災が?」
発言したのは第六席のクルガ。あまり私は好きではない。
「わからぬ。いかんせん、誰も生きてはいないからな。目撃したものも皆、息絶えてしまった。調査部隊を派遣したが、結果は無数の死体が発見されるのみだった」
「そんな………」
「だがしかし、その場にいたハルカとフェイクも死んでいるのが見つかった。どちらも首を切断されている状態でな」
「つ、つまり……」
場の空気が重くなる。
「我々はモンスーンの悲劇を魔族の侵攻と見るべきだ。そこには強大な力を持つものも居合わせた。最低でも幹部級の者が1人。その者はフェイクを簡単に打ち倒せるほどの実力を持っている。総員、気をつけるように」
「わかりました」
「アクア。其方には特に期待しておるぞ」
「その御言葉、光栄に思います」
この方の言葉は優しい。私のことを気遣ってくれているのは伺える。しかし、どれほど真意が混ざっているのか。
「うむ。其方はこの場で最も幼いのだ。そのような若い才能を守るのが我々人類の役目。自分のことを、大切にするんだぞ」
「かしこまりました、ヴェロスト様」
視線を前に戻し、部屋全体を一蹴する。
「ではこれより、本日の会議を始める。まず最初に一点、新たな勇者の特訓がまもなく終わる。そろそろ初陣の時だ。前回の失敗を踏まえ、今回は勇者と十二騎士クルガ、ナイロン、さらには上級騎士10名をつける。なんとしてでも勇者を守るんだ。良いな?」
「「はっ」」
「ならば良い。早速勇者と共に行くのだ。特にクルガ、お前に次の失敗はないからな、気をつけるように」
「わ、わかりました」
クルガ……せっかくなら死んで仕舞えば良いのに。