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真実

「ちょっと、ボクの部下をいじめないでくれる?」


 その剣は大剣をいとも簡単にしりぞけた。


「団……長……」


「こりゃまた酷くやられたね。とりあえず、フェイクはボクがやるから負傷者の手当てに回って」


「……わかりました。ご武運を」


 ギルクの狙いはかろうじて達成された。団長がいれば……という願いが通じたのだ。


「ギルクたちは手を出さないでね。……‥危険だから」


 団長ことラミアがフェイクの方に向き直る。


「フェイク……いや、ザルバトス。お前を殺す」


 しかしラミアの口から発せられたのは、ギルクたちの知らない名の人物だった。



~潜入班が捜索に出掛けたころ ラミア視点〜


「みんなどこにいるんだろう……」


 辺りを見渡してもギルクたちは見当たらなかった。時間的にはとっくに潜入できているはずだけどな。


 10分ほど目視で捜索していたが見つかりそうになかったため、魔力探知で探していた。魔力探知を行うと魔力を持ったものの位置がわかる。世界が白黒のようになり、魔力を持つものが光るのだ。


 しかし、その結果は酷いものだった。あたりには生きているものがいなかったのだ。地面には焼け爛れた人の死骸が転がっているばっか。人なんて1人も生きてはいなかった。


「でもさー、1人ぐらいは反応あってもいいんじゃないかなぁ」


 魔力探知が行えるのは自分の半径1キロほど。つまり自分の周り2キロメートルには誰もいないのだ。


「もうちょっと城壁に近づいてみるか」


 ギルクたちが潜入したと思われる城壁の方へ向かう。予想ではフェイクとの遭遇は街の中心らへんになると思って街中ばっかり探していたけれどどうやらそうではないらしい。


「あ、あれじゃない?」


 城壁の近くで反応があった。ちょうど32人分の魔力反応。隊員とフェイクだから……ぴったりだね。


 

 見つけた!と思い近づいてみるが、早速ギルクたちがピンチだった。フェイクと見られる男の剣がギルクたちを文字通り両断しようとしていた。


 なのでボクは剣とギルクの間に入り、剣を止めてあげた。


「ちょっと、ボクの部下をいじめないでくれる?」


 フェイクに向かって言葉を放つ、が、その時に勘づいた。仮面を被っているが雰囲気からわかった。


「なんでこいつがここに………?」


 ボクがまだ、王都の地下に幽閉されていた頃。その頃にボクを斬りつけてきた男のうちの1人。王国十二騎士第五席ザルバトス。目の前の男と同じぐらいの体格で武器も一緒。


 だけれどその事実を受け入れられないでいた。復讐をする、格好の機会。今の自分なら勝てる相手だ。しかし、十二騎士の第五席だったやつがなぜこんなところにいて、さらには顔や名前を偽っているのかが理解できなかった。


「ねえザルバトス。なんで君がここにいるの?」


「……その名で呼ぶな。我はもう……ザルバトスではないのだ!」


 フェイクことザルバトスは激昂し、お得意の魔法を連発してくる。実はザルバトスは剣一筋だと思いきや魔法もそこそこいける。まあどっちかっていうと魔力をゴリ押しで飛ばしてくるだけだけど。


「そんなに怒らないでよ。せっかくの再会なんだから」


 魔力弾を避けながら言った。


「再会……?お前のような魔族を我は見たことがない」


「別にいいよ、それで。………3秒で終わらせる」


「……っふ。来い」


 全身に魔力を巡らせフロレントを抜く。

 

「<身体強化>」


 持っていた魔力を全て使い、一時的にステータスを20倍にする。


 光速をも超えた速さでザルバトスの剣と本体を殺る。


「ぐはぁあ」

 

 目の前で起こったことが信じられないような目でボクを見据えてくる。


「なんだよ。3秒で終わらすって宣言したじゃん」


「…………」


「黙っちゃってさ」


 フロレントによってザルバトスの腕は切り裂かれており、もはや戦うのは不可能だった。地面に這いつくばり、ただひたすらに怒りを抑えているのが見てとれる。


 そんな奴に近づき、髪の毛を引っ張りながら目を合わせる。


「邪魔だなこの仮面」


 ボクはザルバトスのつけていた仮面を引き剥がし、ようやく本人とご対面した。


 ザルバトスの顔はいかにもって感じの顔。髭が生えていて傲慢そうな顔だ。


「どう?見えやすくなっただろうしボクのことを思い出せそう?」


「………誰だ」


「もう、相変わらずこの頭は使えないんだから」


 頭をポカっと殴り地面にめり込ませる。


「ゔぅぅ」


「まあ思い出せないなら思い出させてあげる。ボクのことを見たのは王宮でだ。薄暗い部屋の中でね」


「………?」


「なんでここまで言ってポカーンって顔をしてるのさ!勇者だよ、勇者」


「勇者……?なぜお前がここに?」


「簡単な話、ボクは魔王軍に寝返ったんだ」


「裏切ったのか……」


「普通あんなことされたら裏切ると思うけどねぇ。でも別に復讐は後でいいんだ。ボクが気になっているのはなんで君がそんな姿になっていたのか、だ」


「俺は嵌められたんだ!あの小娘のせいで………!」


「小娘?誰のこと?」


「お前の……‥妹だ」


「………は?お前今何つった?」


 雰囲気を変えて問い詰める。


「だから言ってんだろ。お前の妹に俺のやってたことが暴露されたんだ!そのせいで俺はこんな目に……」


 あー、なんとなく分かっちゃった。このザルバトスっていう男は素行が昔っから悪かった。賄賂に暴行、女遊びにギャンブルまで。禁制とされていたことにも手を出していたからその行いを密告されて、地位を落とされたと。


「でもまだ奴隷になってないだけマシじゃない?」


「そんなことはない。俺は今までの生活から一変して名前も、姿も変える羽目になったんだぞ!」


「それは自業自得でしょ……」


 たしかにそれは気の毒だけど自分のせいだな。というか名前、偽りの姿だからフェイクって名乗ってたのか。


「なんとなく君の事情はわかった。けどなんでボクの妹が登場するわけ?」


「お前が死んだとされたあの日から少しした後、お前の妹が十二騎士に加わったんだ。お前とよく似た容姿だから覚えていたよ。あの鬱陶しいほどの銀色の髪の毛。思い出したくもない!」


「で、あいつは今何席?」


「…‥五席だ」


「もう1回言ってみろ」


 首根っこ掴み目を合わせる。


「五席だよ。何回も言わせんな」


 王国十二騎士の第六席以上は不動のものとされてきた。ここ数十年間変わってきていなかった。しかしその歴史が変わってきている。よりによってあいつが。


「ごめん。他の面々は変わってないの?」


「六席以上はな。下位層はころころ変わる。今日だって、お前がここにいるってことはハルカは死んだんだろ?」


「もちろん」


「じゃあまた交代だな。くそが。こんな人生、ゴミ同然じゃねえかよ」


「……で、このまま殺されたい?それとも拷問の末に死にたい?」


「どっちでもいい。俺だってこの人生に飽きてんだよ」


「へー、意外にそこらへんの分別はあるんだね」


「お前は俺のことをなんだと思っているんだ。ただの大男だと思っているのか?」


「いや、ドアホな大男だと思っているよ」


「んだよその答え」


「いいよ。3年前の借りも返したし、苦しませずにこの場で殺してあげる、何か言いたいことはある?」


「特にはねえが……お前は人間を滅ぼすのか?」


「そのつもりだね」


「ならば十二騎士の上位と勇者には気をつけろ。お前だってわかってるはずだ。お前の部下は今のままだとすぐ死んじまう。ちゃんと特訓してあげな」


「………なんだよ。最後に優しくして…」


「俺だって人間の欲望にはうんざりしてんだよ。俺の人生にも、王国にも。それを終わらせようとしてくれる奴は応援してやるよ」


「……ありがとね。じゃあまた来世で」


「またな、勇者」


 ザシュっという音と共にザルバトスの首は転がっていった。


「これで、おしまいだね」


 小さく手を合わせ死体となったザルバトスを弔ってあげる。


「悪い奴だと思っていたけど………案外いい奴だったな」


 牢屋に入れられてた時は、ザルバトスはトップを争うほどボクのことを酷く扱っていた。けどその恨みは清算された。プラマイゼロ。死んだ人には敬意を払わないと。



「それにしても、あいつが十二騎士とはねぇ」


 うっすらと炎で輝いている空を見上げて想いを馳せる。よく顔は思い出せないけど、血は繋がった姉妹。敵同士でやりあうのも……悪くはないな。



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