相手の最期
短いですが
「はあぁぁぁ!」
「クッ……」
リゼさんの放った強力な魔法がハルカの防御を貫いた。
「ここ!」
その隙を見逃さずミーナは首を狙って剣を振るう。
カキンッ!
ミーナの剣は確実に首をとらえていた。しかし、剣が首に当たるのと同時に鉄と鉄が当たるような音がする。
「ミーナ!そのまま踏ん張れ!」
「うぉぉぉ!」
おそらくハルカが行ったのは十二騎士の力の一端、ピンチ時に発動するステータス強化だと思う。その影響で首の周りに強力な物理攻撃耐性のある結界が展開された。
しかしその結界はミーナの筋力には及ばなかった。ミーナはそのまま剣を横に一閃するとハルカの首はスパッと切れ地面に転がった。
「たお……したの?」
「おそらくはね」
ボクが声をかけるとミーナとリゼはその場に倒れ込んでしまった。疲労が限界に近かったのだろう。2人とも空を見上げているがその顔は笑っていた。
「どうだった?はじめての経験ってのは?」
「すっごい楽しかったです。なんかゾーンに入ったというか、敵以外何も見えなかったというか……」
「わかるよ。その感覚はとても大事なものだ。でも感覚を授けてくれたハルカにも、敬意を払わないとね」
首のないハルカの死体に目を向け、2人で手を合わせて祈るような格好になる。それに気づいたのか、ティアとリゼも一緒に祈ってくれる。
「よし……。殺し合いっていうのはね、戦っている間までだ。戦いが終わったら、必ず相手には敬意を払わないといけない。それがどんなに軽い祈りでも、ね。だって……相手の最後を唯一見ていたのはボクらなんだから」
「…………」
みんな得もいわれぬ表情となる。相手に敬意を払う、それは身内にのみだと思っていたのだろう。しかし実際は違う。同じこの世界に生きた、1人の生き物として接しなければならない。
彼女にも家族がいて、幸せな家庭を持っていたのだろう。なので彼女の家族のためにも、ハルカの最後をボクらは覚えていなければならないんだ。
「ボクたちは終わったけど………主戦力班は大丈夫だと思う?」
戦闘でヘトヘトになっているミーナに話しかける。
「どうなんでしょうか。城壁の方を見た感じ潜入はできていると思いますが、彼らは必ずフェイクという男と接近することにはなるでしょう」
「だね。だからボクらも急いで移動しちゃおう。主戦力班がどこにいるかわからない以上、4人散り散りになって探す」
「了解」
「移動中は適度に火を追加していって火災を少しでも早めるように。このままだと朝までに街が全焼するか怪しいから。そして主戦力班を発見したらやる行動は2パターン。パターン1、フェイクと戦っていたら加勢する。パターン2、フェイクと接敵していなければ上空に再度火を放つ。オッケー?」
「「「ラジャーー」」」
「じゃあ解散!」
そう言って、ボクらは主戦力班を探しに街の四方に散らばって行った。