お昼
意外と接敵しなかったのは幸いかな。で、これからどうしようかなー。太陽の位置的に正午より少し後なんだけど、お昼にしようか。遅めのお昼ご飯。
「ミアー、とりあえず設定できたからもう戻っちゃおう」
「了解。これで第2ステップも突破したから、次はお昼にしちゃおう!」
「「「おーーー!」」」
「私、人間の領地でしか食べられないもの食べてみたい!」
リゼが目を輝かせながら言う。
「私も、リゼさんと同意見で」
ミーナも同意する。
「私もそれでいいわ。リゼとミーナが行きたいところでいいんじゃないかしら」
「じゃあそうしよっか」
一度、工業エリアから抜けて観光エリアに戻ってきた。ティアが場所を記憶しているからいつでも工業エリアに戻れるしね。
戻ってきたのは観光エリアの中でも一際賑わっている通りだった。そこでは多くの人が客引きを行なっており、皆が料理料理ーって言っていたから、それはつまりレストランや食堂の客引きだ。なのでとりあえず、目の前の料理街と見られる場所へ入っていく。
首をキョロキョロと回して周りを観察する。結構いろんなお店があるんだな。定食屋っていうのもあるし食堂っていうのもある。50個ぐらいお店があって、全部見るのは厳しいけど美味しそうで賑わっているのは少ない感じだね。
「ミーナさん、このお店なんてどうです⁈」
「定食屋…どんなものがあるか気になりますね!」
とりあえず、ミーナとリゼは仲良く選べそうだ。
「ティア、部下たちが仲良くしてるのってなんか癒されない?」
「わかる。子供同士がじゃれあってるみたいな感覚」
実際は、ミーナもリゼもボクらよりは大人だと思う。リゼはエルフだし、ミーナも成長は止まってるから確実に18から20歳以上。対してボクは18でティアも18。幼いコンビだ。
「ミアさん、ティアさん!ここにしましょう!」
「ここで何が食べたいの?」
「このイノシシ肉ってやつを食べたいです!」
やけにハイテンションなミーナ。
というかイノシシ肉を頼むのかー。久しぶりに食べる気がする。ボクの記憶では昔1人でイノシシを狩っていた記憶がある。妹もいたっけ。まあいいや。
「おっけー。ここ入ろう」
扉をくぐるとそこは多くの人で賑わっていた。入り口にいた人に4名であると告げると中に通してくれる。
そして通されたのは端っこにあるテーブル席。よかったー。端っこじゃなくて真ん中とかに通されたら詰んでたよ。
「何注文する?」
メニューをパラパラとめくりながら注文する料理を吟味する。
「私はこのイノシシ肉の盛り付けと野菜を頼もうかな」
「じゃあボクもティアと同じので」
「やっぱ、私もそうします。ティア隊長が頼むものですからね」
「じゃ、じゃあ私も同じので」
結局、みんな同じものを頼んだ。
注文した後でも、メニューをさらーっとみていく。イノシシの原産地は……リチャッカ村というところなんだ。へー………って、なんか聞いたことがあるような。
「こちら、イノシシ肉4人前と野菜になります」
「ありがとうございます」
料理が出てくるまでの10分ほどリチャッカ村について思い出そうとしていたが、結局思い出せそうになかったので食べることにする。
とりあえず肉を4分割してっと。
「わ、私こんなには……」
「遠慮しないでいいよ。どうせこの費用はボクたちは出さないし」
「そ、そうですね。じゃあ遠慮なく」
間違っても、魔王軍がお金を出してくれるなんて言わない。そんなことしたら即任務失敗、人間に牢獄へぶち込まれて終わりだ。まあいまのところ危険らしい危険はないけど。
目の前のイノシシ肉を一口サイズに切ってフォークでとる。イノシシ肉………久しぶりに見たな。個人的には熊肉の方が美味しいように感じていたけど今はどうなんだろう?
「ん、美味しい」
結構歯応えがあるけど繊維が多いってわけではなさそう。味付けはめっちゃ美味しい。
「ですねー。なんか豚肉と似ていませんか?」
「たしかに。牛とは違うけどなんかに似てるなって思ったら豚か」
「私、初めてイノシシ肉を食べた気がします」
「そうなの?」
肉を口に運びながら言う。
「はい。いかんせん私の住んでる地域は寒かったですからね。イノシシが来れるようなところではありませんでした」
んー、この場合の住んでる地域って魔都になるのかなぁ。仮にそうなら魔都周辺にはイノシシがいないってことになるけど。
「ティア、ボクたちの家の近くにもイノシシっていないのかな?」
「確かいないはずだけど。買い出しに行っても見たことがないでしょう?」
「言われてみれば……」
じゃああの地域にイノシシっていないんだ。つまりボクが生まれたあの街は思ったよりも南の方にあると言うことか。それなら王都が近いのも納得だ。
「ふー、美味しかった」
「私もご馳走様かな。会計済ませちゃおう」
席を立ってレジへと向かう。
「リチャッカ村産イノシシと野菜のセットが4つですね。合計で銀貨7枚です」
「銀貨7枚⁈おもってたよりも高い…」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
「銀貨7枚ですね」
そしてそんなボクとは対照的に落ち着いた声で会計を済ませるティア。
「はい、銀貨7枚ちょうどお預かりしました。またのお越しをお待ちしております」
「みんないくよー」
「「「はーい」」」
ティアが店を出て、ボクらもそれを追うように扉を跨いだ。あれ、なんかティアを保護者とした子供の引率みたいになってる。