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潜入開始

「はぁ……。酔った……」


 なーんで転移だけは慣れないのかな…。


「みんな大丈夫ー?ここからは大きな声を出さないからよく聞いてね」


 大きな声が出せないのは周りに人間がいた場合をケアしてのこと。ティアの呼びかけに皆耳を傾ける。


「じゃあこれから、2班に分かれる。潜入組ー?」


 ボクの招集に応じて来たのは3人。ティアとミーナ、あと1人は魔法隊の女の子だ。


「君があと1人のメンバーか。仲良くしようね」


 唯一顔を知らなかった子に話をかける。見た感じはエルフかな。


「は、はい。よろしくお願いします」


「よし。これでみんなわかれることができたね。主戦力班のみんなはここで合図まで待機」


「私が空に向かって炎を撃ったら魔剣士隊の人と一緒に街の近くへテレポートしてきてね」


「「「はい」」」


「街の中ではボクらは変装しているけど、襲撃を開始したらこの姿になるから合流は手間取らないと思う。けど合流する前に十二騎士と対峙した場合は戦うこと。変に撤退しようとすれば奴らは追いかけてくる、そんなに甘い相手じゃないからね」


 ティアの顔を見て、お互いに頷いた。


「最終確認もこれだけかな。じゃあ潜入班は行きます。合図が出るまで大人しくしておくんだよ?」


「待機中の派手な行動は慎んでね。健闘を祈る」


 そう言って、ボクらは森から出ることにした。


「ティア、こっから目の前に見える道に入ればいいんだよね?」


「うん。けどその前に。<変身>(アピアランス)」


 ティアが自分自身に幻影魔法をかける。前テーマパークに行った時にも使ってたよね。


「ほら、2人も来て。<変身>掛けてあげるから」


「あの…この魔法は……」


「その名の通り、指定した相手の見た目を変える魔法。ただ、変わった部分の実体はないから気をつけて」


「ほ、本当だ」


 エルフの子が自分に生えた人間の耳を触ろうとする。するとその手は本来通り抜けるはずの場所では通り抜けず、エルフの耳を触ってしまった。


「ボクにはかけてくれないの?」


「ミアには必要ないでしょ。人間なんだから」


「うー……ティアの意地悪」


「はぁ全く。これだと気が抜けちゃうじゃない」


 大きくため息をつかれた。なんだよ、そんなに悪いことだった?


 話を交えながらとりあえず街道に入ることができた。この調子なら関所の門が開く頃には着きそうだね。


「あ、そうだ。君、お名前なんて言うの?」

 

 残り1人のメンバーの子に話しかける。なんでだろう。ちょっと漂う怪しい人感。


「私はリゼって言います。種族は見ての通りエルフですね」




「なるほどリゼ君。ところで君はなんで魔法職になろうと思ったの?」


「いきなりですか。そうですね……周りがそうしようって言ってきたからですかね。エルフって先天的に魔法に優れている人が多いんです。なので私も……って、結構流動的な理由なんですよね」


「そうなんだ。でさ、ティアのことどう思ってる?」


「ミーティア様ですか?」


「うん」


「頼りになる、いい隊長だと思ってますが……。あとは時々抜けてるところもいいですよね」


「わかる!!!ティアってさ、基本真面目だし何か忘れるってことはないんだけど時々見せる油断が魅力的に映るって言うか」


「そうなんですよ!そういうところも含めて親しみの持てるいい隊長なんですよ」


「ああー、リゼ君とは絶対に仲良くなれる」




「ねえミーナさん。あの2人、私がいるっていうことを忘れていると思いませんか?」


 遠巻きに眺めていたティアが呟く。


「おそらくは。でもいいじゃないですか。愛されてるってわかりますし」


「そうね………。私たちもお話ししましょうか。ミーナさんの種族は吸血鬼だと伺いましたが……日中、外で歩けるんですね」


「そうなんですよ。知らない人にはよく驚かれるんですよね。吸血鬼って日の光が苦手じゃないのかって」


「私もそう思ってました。しかしミアがあなたを選んだということは、日中も大丈夫だということを暗示していたのかも知れませんね」


「そこまで深く考えているんですかね……」


「意外にも、彼女は頭が回ります。特に戦闘に関しては誰も敵わないほどの判断能力の速さを見せますしね」


「ラミア様のステータスは十分高いですが、それ以上に才能が目立ちます。まだ18か19歳でしたよね。素晴らしい逸材です」


「私はそれに比べるとどうしても見劣りしちゃうんですよね……。でも才能の方面が違うので比べる必要はないか」


「そんなに気にしなくてもいいですよ。たかがステータス、です」


「あなたは本当に大人びていますね。会話が楽に進みます」


「いえいえ、それほどでも」


「……おっと、そろそろ気を引き締めなければなりませんかね」

 

 だんだんと迫ってきたモンスーンの関所が近づいてきた。王国の中でも大きい都市なだけあって城門もかなり大きい。中に入る人は全員、交通証を見せなければならないが今回はティアの精神魔法でなんとかする予定だ。


「ティアー?そろそろ順番回ってくるけど大丈夫?」


 現在目の前にいるのは6組ほど。つまりその6組の検査が終わればちょっとした緊張が訪れる。


「次の人!」


 衛兵が声を張り、ボクたちに近づくよう指示する。


「君たち、交通証はあるかな?」


 ボクたち全員の見た目が割と幼いからか優しく対応してくれている。


 けどすいませんね。ボクたちにもやることがあるんだ。


「ティア」


「<精神操作>(スピリタスコントロール)」


 ティアが精神操作の魔法を放ったがいかに……。


「君たちは中に入りたいのかね?」


 緊張が走る。


「そうですけど……」


「じゃあいいぞ。中に入りたまえ」


「あ、ありがとうございます」


 軽く会釈して中に入る。衛兵さんを見るとしっかり目の色が紫色に変わっていた。それが意味するのは精神魔法に侵されているということ。つまりうまくいったみたいだね。


「じゃあね、衛兵さん」



 そうして、無事にモンスーンの関所を突破し中に潜入することができたのであった。


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