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出陣

「全員いるーー?」


「副隊長ギルク、全員の姿を確認しました」


「おっけー。じゃああとはティアの班の人たちが揃うのを待つだけだね」


 今はモンスーン強襲作戦当日の朝。時刻は夜明け前。なぜこんなに早いのかと言うと潜入班が今回潜り込むために通るルートが割と長いのが原因なんだよね。


 モンスーンに続く街道には朝から人がごった返すと推測されているから、混み具合がピークの時にボクら潜入班も行く予定。その道に潜入班はいかにも旅人ですって感じで紛れ込んで、関所が開くのと同時に街に入っていくのが簡単な第一プラン。で、問題はその街道が長くて、転移する予定の森からまあまあ離れてること。

 

 モンスーンが今まで滅んでいなかったのは割と開けた土地にあるっていうのも1つあると思うんだよね。街に入る入り口が1つしかないのに、平原にあるから無理やり城壁をよじ登って潜入ってことも出来なさそう。やっぱ王国第二の都市であるだけあって、一筋縄では行かないか。



「ミーナ、ちょっとこっちに来れる?」

 

 早朝であるにも関わらずあんまり眠くなさそうなミーナを手招きで呼び、隊のみんなから離れた場所で話を始める。


「はい。なんでしょうか」


「今回はさ、潜入側として行くわけだけど、大丈夫そう?」


「何が、ですか?」


「緊張とかしてるかなーって。ミーナの人生で、十二騎士と戦ったことはなくても出会ったことはある?」


「ない……です」


「そっか。でも落ち着いてね。だってボクらがいるんだから。ボクはミーナなら取り乱さないって信じてるから」


 ボクがミーナに送りたい、励ましの言葉。


「実は最初はね、ミーナは主戦力班に入れようと思ってたんだ。だっていつも落ち着いて現場の把握に努めようとしてくれたりするから、そういう冷静な人が1人でもいると指揮官不在の戦場でもうまくいけるかなーって思った。でも結局、ミーナはこっち側に来たわけだけどね。……で、ボクが何が言いたいのかというと、ボクはミーナを信頼してるよってこと。能力も評価してるし、その冷静さも。ボクの部下の中で1番信頼が置けるよ」


「私は……モンスーンでどのようにすればいいでしょうか?」


「んー、吸血鬼って割と人間に近いからそんなに目立たない行動さえしなければバレないとは思うよ」


「そうですか……」


 不安そうに1人俯いてしまった。


「……もしかして聞きたいのは戦いが始まった後の話?」


「は、はい」


「うーん、難しいけど……派手にやっちゃっていいよ。ある程度の暴走ならボクらでコントロールできるし。十二騎士には手加減なんてしてる暇はないからね。ミーナが本気を出せばハルカにだって勝てるよ」


「わかりました」


「よし、ボクからの話は以上だ。一緒に頑張ろうね」


「あ、あの」


「ん?どした?」


 隊の方へ戻ろうとしたら後ろからミーナに呼び止められた。


「最近、ラミア様は頑張ろう、とか元気に、などの言葉を多く使いますがそれはなぜですか?」


「なぜって言われてもな……」


 また深い質問を……。


「私には、ラミア様の応援は自分自身に言っているように見えます。まるで自分自身を勇気づけるような」


「うーん。言われてみれば図星かも」


「ラミア様は……何がそんなに怖いのですか?魔王軍で最も強いあなたが、何を恐れると言うのですか?私には、それがわからなくて不安なんです。1人で抱え込んで、自分で自分の首を絞めちゃうんじゃないかって」


「ボクが怖いもの、か。それは……自分自身かな。さっきミーナが言ったように、ボクもいつか自分のせいで自滅しちゃうんじゃないかって思ってる。多分その時の原因はボクの燃料が爆発した時だ」


「燃料…?」


「まあ、長い付き合いになるんだしいつかわかると思うけどね。ボクが暴走する瞬間の共通点とか。でも……今は言うつもりはないかな。ごめんね。全てを答えられなくて」


「別に気になんてしません。生き物は誰しも隠し事の1つや2つは持っていますから」


「だね」



「おーい!団長ー!ミーナ!そろそろ出発するぞ!」


「おや、ギルク君が呼んでるから戻ろうか」


「そうですね」


 ティアやギルクたち総勢35名の隊員がランプを持って集合している。昨日と同じメンバーだが、みんなそれぞれ気合が入っていた。


「ミア、大丈夫?」


「ボクはね。ティアの隊も全員が揃ったことだし、そろそろ行こうか」


「了解。じゃあ号令よろしく」


「えー、またボク?」


「前にも言ったでしょ。基本号令はその場いる最も位の高い人がやるって」


「はーい……」



 とりあえず気持ちを切り替えて指揮官モードへ。


「我らはこれから、人間の都市モンスーンを急襲する。そこでは過酷な闘いがあるかも知れない。けれど、怖気付いてはならない。しかし無闇に突っ込み命を捨てろとも言わない。皆が笑って、この地に帰ってくるのだ!」


「「「オォーーッ!」」」


「気合は十分!ティア、テレポートできる?」


「じゃあみんな私を中心に円になって」


 言われた通りティアを取り囲むように移動する。


「<テレポート>」


 ティアは魔法を唱え、37名の身体をモンスーン付近へと転移させた。



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