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魔剣士隊の訓練

「はあ、なんでこうなるんだか……」


 目の前には疲れ果てた隊士の姿。教官として呆れちゃうよ。


「せめて一発はボクに与えられると思ったんだけどなぁ」


 たしかにボクのステータスはこの子達よりは高い。けど15対1の戦闘、単純なステータスの合算ならば言うまでもなくボクの方が低い。なんでこんなボコボコにできるんだろう。


「はーい、立って立って。まず最初に、感想をどうぞ。じゃあまずはギルク」


 指名されたギルクはノロノロと立ち上がって感想を述べ始める。


「俺はチーム内でうまく役割を分担していたつもりだ。具体的には、3班に分けてそれぞれがローテーションで団長に攻撃しに行くって感じでな」


「たしかに、そんなんだった気がする」


 うんうんと首を縦に大袈裟に振る。


「他に意識したことは?」


「は…はい…」


「どうぞ、にゃん君」

 

 にゃん君は獣人の男の子。頭には猫耳がついているため猫系の獣人だ。にゃん君はあくまでボクがつけた呼称ではあるけど本人はそれでいいとのこと。よかった。


「僕は…ミーナさんを前線に出して戦うように自分自身は少し後ろ気味で戦っていました…。僕たちの中で最もラミア様に近いのはミーナさんですし…」


「なるほどね。他にはある?」


 全員顔を下に向け、口をつぐむ。


「なし、か。じゃあボクからさっきの戦闘についてアドバイスを」


「1つ目、ギルクの考えたローテーション攻撃は悪くはない。けど別の形でアプローチしてほしかったな。……質問なんだけどさ、なんで君たちは列を作るように3班で回していたの?普通は対象を囲むように三角形に陣形がなるはずだ」


「「「…………」」」


「特に考えていなかったってことでいいかな?流石に、周りを囲んだ方がいいのは理屈としてではなく感覚でわかるはずだ。なのにそれをしなかった。その理由は?」


「ローテーションするなら……わかりやすく一班ずつ前に出た方がいいと思って……」


「はぁ。それはないね。第一、自分達にとってわかりやすいということは相手にとっても読みやすいということだからね。そこは覚えておくように。で、ボクの中で最悪の選択肢が縦一列になって戦うことだったけどなんでその危険性に気づかないんだか……。そんな規則正しく一方向攻めてきたら違う方向に逃げればいいだけ。逃げ道が多すぎる。論外」



「これで1つ目は終わり。じゃあ次の2つ目のアドバイス」


 2本目の指を立てる。


「もっと自分に自信を持つこと。みんな才能とかステータスとか、そういうものもすごいけど、何より誇ってほしいのは君たち自身の努力量。確かにこの中でミーナが1番強いから前に出したくなる気持ちはわかる。けどさ、君たちもボクにダメージを与えるぐらいの実力はあるってこと。絶対に忘れてほしくないな」


「そこは自分を倒せるぐらいの実力って言ってほしかった……」


「あはは。それは今の君たちには無理だからね。……でも3週間の間には、君たちがボクを倒せるぐらいの実力になることを望むよ。ボクを倒すことができるようになれば、王国十二騎士下位相手には引けを取らないからね。これはボクが保証する」


「本当ですか……?」


「うん、本当。絶対だから」


「ならいいっすけど……。……そういえば、俺たちは十二騎士の上位と接敵したことがないんっすよね。上位の奴らって、やっぱり下位とは違うんですか?」


「全く違うね。王国十二騎士の上位6席といえば化け物揃いだ。その6人とボクは昔顔を合わせたことがあるけどやばかった記憶がある。少なくとも、下位6人の2倍は強さがあると思ってくれていいよ」


「……そんな奴らを…ラミア様は倒せるんですか?」


「もちろん。ただ……上位2人はちょっと厳しいけどね。まあ、あいつらは普段から王宮に引きこもってるだけだし心配しなくていいよ。ボクらが接敵するのはおそらく下位6人の誰かだし。ということで、向こう3週間の課題を挙げていこうと思います」


 周りを見渡し一つ間をおく。


「では簡潔に。まずは個人の練度。次にチーム内での連携。この2つを意識しながらボクと戦ってね。じゃあ今日は解散!おつかれー」


「「「お疲れ様でした!!!」」」


「うん。帰る時にお土産のクッキー忘れないようにね。ボクは帰るけどみんなはどうするの?」


「俺は残ろうと思ってる。あんなに団長にボコボコにされたのに練習しないわけにはいかないからな」


「私も。流石に悔しい」


「僕も……」


「そっか。ミーナは?」


「私は帰らせてもらう。一人で訓練した方が性に合う」


 そういってスタスタと訓練場を去ってしまった。


※※※


「はぁ…疲れた……」

 

 一人で練習した方が性に合うとか言って一人訓練場を抜け出してきてしまった。


「それにしても、やっぱりラミア様は強かったな……」

 

 ボタンを外しただけのシャツをだらしなく着ながらベッドに仰向けになる。


「あの人ならいくら少なく見積もっても十二騎士2人には確実に勝てる」


 実際、今の所属である魔剣士隊に入る前に聞いたことがある。幹部の1人が初陣にして十二騎士を2人、討ち取ったと。それがラミア様だ。


「今の私は……未熟すぎる。経験が足りていないのか、それとも……」


 ふと、ベッドの横にある写真に目をやる。魔剣士隊のみんなに初めて会った日の写真。初対面ということもあり、皆緊張していたが酒の席になると一瞬で雰囲気が変わっていった。


 自分だけあの席で酒を断り、その後悔から家に帰ってきて1人やけ酒をしていた。




 やはり…自分のコミュニケーション力なのだろうか。今までろくに人と話さずに生きてきた人生。いきなり話せと言われても難しい。


 本当はみんなともっと仲良くなりたいし、戦闘のことを教え合いたい。しかし今の自分にはできないことは自覚していた。


「ラミア様はチームの連携って仰ってたけど……私の場合はコミュニケーション面の連携が第一、か」


 魔剣士隊の隊士のエース、ミーナとして。課題はしっかりこなさないといけない。



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