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魔剣士隊

新しいメンバーの登場です。

「あれ……ここは……?」

 

 周りを見渡すといつもの朝の景色が。寝た跡がついた散らかったベッドに、窓から入ってくる日光、視界の先には愛剣のフロレントがある。


「ああ…そっか。戻ってきたんだ…」


 未だに気持ちはウーロンのあのホテルにいるため自分の家に無理やり引っ張ってくる。


「えっと……今は何時なんだろう……」


 太陽を見る限り今は8時前といったところ。あれ、今日の集合何時にかけてたっけ?


 寝床の横にあるリマインダー用の予定帳をみる。


「今日は……9時⁉︎え、今8時なのに起きたばっかなんだけど?絶対間に合わないじゃん……」


 と、とりあえず急いで準備をしよう。


 ティアは……下からガサゴソと音が聞こえるから起きてるね。 


「おはようティア…」


「遅かったね。今日の集合何時にセットしてるの?」


「9時……」


「……厳しくない?明らかに間に合わないと思うんだけど」


「だから焦ってる。ちょっと髪とか梳かしに洗面所行ってくる」


 そう言ってリビングに背を向ける。


「ごはん、用意しといたから準備が出来次第食べといて。私も9時に集合掛けてるけど、魔都の外で集合にしてるからそろそろ行くよ」


「教官としてはそっちの方が厳しくない?」


「しょうがないじゃん。街中で魔法をぶっ放しても迷惑になるだけだし」


「それはそうだね………。行ってらっしゃい」


「はい、行ってきます」


 ガチャッという音と共に家から出てしまった。やっぱり魔法使いって大変なのかな……。


 噂によると、ティアの魔法隊はティアが直々に選抜した魔法使いの精鋭部隊らしい。その数は20名で、発足から3ヶ月しか経っていないにも関わらず、今や全魔法使いの憧れらしい。


 そしてその選ばれた20人の魔法使いはティアから指導してもらえる。


 発足してからちょっとした頃、ティアに「厳しく指導してるの?」と聞いたことがある。


 しかしティアがいうには「むしろゆるゆるだよ。みんな覚えが早いから無理に教える必要もないし。今日なんて適当に魔法戦やってあとは雑談、って感じだったし」とのこと。


 ボクが思うにティアはいい教官だからね。その下で働けるなんていいなー……。


 いや、そういえばボクも部隊を持っているんだった。


 櫛を手に取りその銀色に輝く髪をとかしていく。


 ボクの部隊もティアと同じようにボクが直接スカウトした剣士たち。正確には魔剣士隊となっているためみんな少しは魔法が使える。しかしメインは剣術。いわゆる近接戦闘部隊だ。だからよく、ティアの魔法隊と稽古をしている。遠距離の部隊と、近距離の部隊。訓練するにはもってこいの相性だ。


「ふわぁーー……」


 眠い。昨日は……旅行から帰ってきて魔王様のところに行って、そのあとすぐ寝ちゃったのか。ならそんなに疲れは溜まってないはずなんだけどな。ボクの知らないところで疲れていたようだ。


「いただきます」


 ティアがいない朝ごはんなんていつぶりだろうか。記憶ではペンタグラム以降初めてな気がする。そう思うとちょっと寂しい。


「ご馳走様」


 とりあえず食器を片付けて急いで支度をする。


 寝巻きから運動着に着替えて、フロレントを右腰に、杖を左腰にぶら下げる。


「鍵を閉めて…行ってきます」


 あまり時間もないので走って闘技場へ向かう。あ、お土産……持ってるよね?肩から提げているバッグを覗く。そこには15箱、お土産のクッキーが入っておりちょうど人数分あることを確認した。



※※※



「なあ、いつもより団長遅くねえか?」


「そうか?普段とそう変わらない気がするが……」


 闘技場にて、自分達の上司を待っている2人の男がいた。


「だって今日9時集合だろ?いつもは遅れることはあまりないのに」


「実はさ、ラミア団長って結構遅刻魔らしいよ」


 その話に割り込んでくる女性騎士。


「え、どこ情報だ?」


「王城勤めの友達が言ってた。いつも幹部会議ギリギリの時間に廊下を爆走しているんだとか」


「あー…なんとなく想像できるわ……」


「俺も……」


 話をしている3人の目の前には、1人の女の子が息を切らしながら走ってきていた。


「ごめーん!遅れた!」


「遅いっすよ。何かあったんですか?」


「ちょっと……寝坊して…」


「何してんすか……」

 

 手を組みながら呆れる表情をする。


「はーい、整列整列!」


 散り散りになっていた男女15人の剣士たちが一列に整列する。その動きは一糸乱れず完璧に近い動き。それは一流の部隊であることの象徴だった。

 

 一流の部隊、それはもちろん戦で大きな任を果たした功績に由来する。しかしそれはあくまで外面から見た印象。内面的には隊員同士の信頼、長への忠誠心の高さから来ていることが多い。


「13…14…15…全員いるね。早速、みんなにいいものを持ってきたんだ」


 ガサゴソとバッグを漁り、クッキーの箱を取り出す。


「ボクが3日間、ウーロンへ旅行に行っていたことは知ってる?」


「知らなかったです」

 

 先程話していた男のうちの1人が話す。


「あれ、みんな聞いてなかった?」


「いや、ギルク以外全員知っていましたよ」


「ちょっとギルク?情報収集を怠っちゃダメでしょ」


「ちょ、お前ら…いつ聞いた?」


「普通にラミア様から直接聞いた」


「だからいつだよ!」


「いつだっけ、確か前の戦が終わったところだったと思う」


「はーい。そこらへんで終わり。ギルク、後でボクと稽古の刑ね」


「わかりました……」


「で、話を戻すとウーロンにティアと一緒に3日間行ってたのね。だからそのお土産を買ってきて。それがこのクッキー!訓練の合間とか、家に帰ったら食べてね」


 1人1人手渡しで渡していく。


「「「ありがとうございます!!!」」」


「まあまあ。これもみんなのためを思ってだから。そんなに固くならないでね」


 お土産の話はこのぐらいにして。


「で、そろそろ真面目な話をしていい?」


「はい、大丈夫です」


「なんと、ボクらの次の任務が決まりました!」


「お〜〜」


「けどね、今回は作戦の原案からイラストまでボクとティアがやったから今までとはちょっと勝手が違うんだけどね」


「ミーティア様と作戦を立案されたということは……」


「そう。今回はボクら魔剣士隊とティアの魔法隊の合同任務となりまーす。じゃあ早速、作戦の概要を話していくね」


「まずボクらの最終目標はメシア王国第二の都市、モンスーン。ここを攻め落とす。そして主な作戦部隊は2つ。潜入班と主戦力班だ。潜入班はその名の通りモンスーンの関所を通り内部に潜入。内側から攻める役。この役はボクとティア、後はこの部隊から一人、魔法隊からも一人の合計4人。そして主戦力班。こちらは潜入班の合図と共にモンスーンを外側から攻め落とす。メンバーは潜入班以外全員。何か質問はある?」


「その2部隊以外の参戦は?」


「ない。この作戦は少数精鋭で行うことに意味があるからね。真っ向からモンスーンを落とそうとなるとそれなりの犠牲が必要になる。しかしこの作戦はあくまで奇襲。これなら少ない犠牲で、いや、こちらの消耗はゼロで落とせるはずだ」


「潜入班は誰が行くんですか?」


「ボクとしてはギルクは主戦力班に居てほしい。なぜならボクとティアは別部隊に行っちゃうからね。副団長である君が主戦力班をまとめてほしい」


「わかりましたよ。俺も、その方がいいと思いますしね」


「じゃあギルク以外で。条件は柔軟性があって、ある程度強さもある人。……今回は推薦式にしようか。みんなは誰が適任だって思う?」


「ミーナじゃない?私たちの中では一番強いし」


「賛成。柔軟性があるっていう面でも最適だし」


 その後も、ミーナを推す声が止まらず結局ミーナ以外全員が彼女へと投票した。


「で、こんなに愛されているわけだけどミーナ、引き受けてくれる?」


「……喜んで」


 ミーナはこの魔剣士隊のエース的存在。ボクが真っ先に部隊へスカウトした子でもある。年齢はまだ幼いが、既に成長が止まる時期にはなっているとのこと。種族は吸血鬼族で、グラザームさんと仲が良いのは知っている。彼女は基本寡黙(吸血鬼族ってみんな静かなの?)だが意外とお茶目だったりする。ボクも信頼を寄せていて実力で言うと准幹部にはなれるぐらいだ。


 実は前、ミーナにお願いしてレベルを見せてもらったがその時は既に100を超えていた。理由を聞くと意外にも戦場に出る機会は多く、レベルも上がりやすかったらしい。


「ミーナが潜入班ということで、それ以外の14人はギルクの言うことに従ってね。で、みんなが気になっていると思うのは日時だと思うんだけど、まだそれは決まっていません。それはどういうことかと言うと、君たちの実力だと十二騎士複数相手には厳しいからなんだよね。だから最低でも3週間、毎日ボクと稽古をします。よろしくね」


「えぇー……」


「どうした?そんなに不満なの?」


「ラミア様のことは嫌いじゃないんですけど、なんか戦ってると自分の弱さが浮き彫りになって嫌なんですよね……」


「それは君たちが弱いのがいけないんじゃないか。ほら、そうと決まれば特訓しかないよ。ということで頑張ってね。応援してるよ。」


「なんでまた他人事みたいな感じなんですか!」




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