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テーマパーク

「ねえ、ボクが思っているよりも広くて豪華なんだけど…」


「奇遇ね、私もそう思う」


「もしかしなくてもさ、ボク達豪華待遇されてない?」


「だね。最初の列に並ぶところから違うルート通されたし。これは完全にハマっちゃてる」

 

 なぜこんなにもボクらが高待遇を嫌がるのか。理由は簡単、ボクらは一般市民の目線で物事を楽しみたいからだ。だから魔都ではお店とかに行っても幹部特別の値引きはしてもらわない。なんなら人よりも多く払ってお店に貢献している……多分。実際、多く支払うことがお店側にとっていいことなのかは定かではないが。まあ、他にも高待遇を嫌って避けていることはある。

 

 しかしまさかテーマパークでこんなことが起きるとは予想していなかった。


「で、どうする?ボクは変装が一番だと思うんだけど」


「いいんだけど…問題は変装道具を持っていないことじゃない?そのバッグ何か入ってるの?」


 ボクが肩からぶら下げていた白いバッグを指差す。


「いや、帽子とかなら……」


「…しょうがない。本当は使いたくなかったんだけどね、<変身>(アピアランス)」


 ボワッと白い煙がたち、ボクとティアの姿が一瞬にして変わる。


「おお。その魔法すごいね。便利そうだ」


「戦場で使うにはあまりにも脆いけどねー」


「え、なんで?姿が変わっている点では強そうだけど」


「冷静に考えてみて、今の私たちの姿は?」


「エルフ、かな?耳が尖っているように感じる」


「そう、じゃあその耳を触れる?」

 

 笹の葉のように尖っている自分の耳を触ろうとする。が、触った瞬間にまるで実体が無いように消え、触ることができなかった。


「あれ?触れなかった」


「そう、この魔法はあくまで幻覚。実体は存在しないの。しかも変えられるのは一部の箇所だけ、それこそ耳とか髪の色とか。だから身長や顔立ち、体重とかも変えられない」


「なるほど、確かにそれは戦場では弱いかもしれない」


「まあこの魔法についてはこのぐらいで中、入ろっか。これなら一般ゲートから入り直せるんじゃない?」


 一度今いた部屋から出て再度列に並び直す。さっきはスタッフに声をかけられて別の道に案内されちゃったけど今回はどうだー?


 ドギマギしながらも入場口まで無事、くることができた。


「何名様でのご入場ですか?」


 受付はダークエルフのお姉さん。制服のようなものを着ているからか実際の年齢よりも少し大人びて見える。


「2人です。私と、隣の子」


「はい、わかりました。ここからみて左側にロッカーがあるのでお荷物を置きたい場合はあちらへ。ではこれが入場チケットになりますのでこのまま中へお入りください」


「あ、ありがとうございました」


「今日も一日楽しんでくださいね」


 とりあえず入場はパス。中に入ることができた。


「荷物預ける?」


「いいんじゃない?そのぐらいなら持ってても大丈夫でしょ。というかなんかドキドキするね。お忍びでって感じがして楽しい」


「だねー。変装してるのもまたいい感じ。最初はどうする?見た感じ色々なものがあるっぽいけど」


「んー、あれはどう?あの剣を使っているアトラクションは」


「えー、まあいいけど……変に目立ったりしない?」


「……それはミアの腕にかかってる」



 ということで、近くにあったアトラクションに行く。どうやらこれは木剣を使って制限時間内に多くの人形を倒したらいいみたい。

 えっと、現在の記録は20体か。制限時間は30秒だからなかなかのスピードで人形を倒してるなこれ。

 見ている感じ柵の中にいる人形は軽く殴るぐらいで倒れる強度に設定されていて、倒れてちょっと経ったらまた立ち上がるのか。………このアトラクション誰が考えたんだ…。人形が人間っぽいんだけど。まあ人形ってそんなもん、なのか?魔王軍の洗脳を見ている気がする。


「へー、面白そうじゃん。ティアやりなよ」


「え、私?」


「そうだよ?ほら、魔法職の力を見せてやりなよ」


「いいけど……私の後ミアもやってよ?それが条件」


「分かったよ。でもまずはティアからね。ほら、やったやった」


 ティアの背中を無理やり押して柵の中に入らせる。

 

 するとカウントダウンが始まりティアも慌てて木剣を取り出して構える。


「3…2…1…ピッーー!」


「ちょ、待……」


 文字通り慌てふためきながら人形を倒していく。


「あははは」


 なんかシュールで面白い。だってティアの剣、周りを適当に薙ぎ払っているだけなんだもん。これは傑作だ。


「はあ…はあ…。結果は……何体だった……?」


「えっと、22体。良かったじゃん、最高記録だよ!」


「はあ……ほんとに…普段やらないことをやると疲れる…」


「面白かったからボクもやろーっと。なんかボクだけ笑いっぱなしってのもあれだし」


「そうだよ。ティアもやればきっと私みたいにへばることになるよ」


 ボクも備え付けの木剣をもって柵の中に入る。


「3…2…1…ピッーー!」


 先ほどと同じようにホイッスルがなってアトラクション開始。


 周りの人形達を適当に殴っていく。実際に斬る動作をしちゃうと人形が壊れちゃう気がするからね。


 でもどうしよう。ぶっちゃけ手を抜いてもいいんだけどな…。


「ほらミア!なに手を抜いてんの⁈真剣にやろー!」

 ティアがうるさい。……しょうがない、真面目にやろう。


 木剣が宙を切る音が耳に心地いい。あ、これ楽しいかも。なんだかんだ練習になる気がする。……強いていうなら、ボクが円形状に斬っているからか目が回ってきた。


「ピッーー!」


「ん、もう終わりか」


 正直目が回っていたから終わりでよかった。


「すごいじゃん!41体。最高記録更新だよ!」


「それはこのボクがやったからね。1位じゃなきゃ困る」


「流石にね。じゃあ今度はあれに行こうよ!」


「えー、疲れたんだけど」


「いいからいいから」


「あ、ちょっと待ってよティア!ティアったら!」

 

 その後、ボク達は1日中テーマパークを満喫した。


「疲れたーー!今日のティア、やけにテンション高くなかった?」


「そうー?」


「そうだよ。なんかいつもと立場が逆だった気がする。普通はボクが振り回してティアがそれをなだめてるけど、今日はティアがボクを振り回していたよ」


「いいんじゃない?久しぶりの休暇なんだし」


「その言葉が万能すぎる……。じゃあ休暇2日目からはどうするんですか?」


「えー、私は特にしたいことはないけど。魔都で行きたいところは行ったし」


「じゃあさ、思い切って魔都以外の場所に行ってみようよ」


「例えば?」


「ウーロンとかどう?」


「お、いいんじゃない」


 都市ウーロン。魔族領第二の都市であるウーロンは魔族領の中心であるこの魔都から見て東南の方向にある大きな都市。観光ランキングでは毎年1位を獲得していて、その理由は海に接している点にある。基本的に魔族領には海がなく、あったとしても北の方にありすぎて1年中凍ってしまっている。しかしウーロンの港は不凍港であり、漁業や観光に適している。

 

 あと人間の領地にも近いため時々攻められるが、それを利用して交易をしている人も多い。


 どういうことかというと戦が始まれば必然的に混乱が生じる。その混乱に乗じて魔族と人間が会合を開き物々交換をするのだ。魔族領でしか取れない貴重な産物と人間領でしか取れない産物を交換する市が開かれるのはそのタイミング。

 

 そしてこの行為が違法かといえばそうではない。なんなら魔王軍公認だ。人間の持ってくるものは貴重で面白いものがほとんどだし魔族内で流行るものも多い。だからメリットも大きいんだよね。


 ということで明日から3日間、ボクらはウーロンに旅行することにした。



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