閉会式
「起きて、起きて!」
「ん…………まだ寝てたい……」
「まだ寝てたいじゃない!魔王様に呼ばれてるんだよ⁉︎」
「えー、面倒だけど行くしかないか……」
「ラミア、お前今我のこと『面倒』と言ったか?」
「あ、レイじゃん。おはよう」
「おはようじゃないわ!あと下の名前で呼ぶのはやめろ!」
「え、魔王様の名前ってレイなの?」
「そうだよ?知らなかった?」
「初耳なんだけど……」
「ちょっとミア!好き勝手に他人に人の名前を言い散らかすのはやめろ」
「なんで。いい名前じゃん。レイって」
「そう言う問題じゃない。とにかく言うな、わかったか?」
「はいはい。で、お忙しい魔王様がなぜこのようなところに?」
「お前達を呼びにきたんだ。表彰式に1位と2位がいなかったら務まらないだろ」
「なるほどね。でも安心して。一緒に行くからさ」
「分かった。ほら、廊下に出るぞ」
「そんな急かさなくても……」
魔王様に背中を押されるがまま廊下に出る。もちろん、ティアも一緒だ。
そして少し歩いたところで魔王様が話を切り出す。
「なあ、聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「いいけど、今はオフの状態だから大体のことは受け流すよ」
「………それでもいい。だが聞かせてくれ、お前の身体強化魔法の1つである武器強化の魔法。あれは一体どれぐらい強化できるんだ?」
「ええー、わからなーい」
「そうなのか……」
「聞きたいことはそれだけ?それ以上ないならボク達は直接表彰台の方に向かうけど」
「……ああ、それでいい。また後でな」
「じゃあねー」
廊下の真ん中で別れて表彰台の方へ向かう。おそらくボクらが最後なので既にグラザームさんやカルタさん、そして敗者復活部門でダントツだったサラさんなどの入賞者は先にいるだろう。
「……それにしてもミア。なんで嘘ついたの?」
「嘘って?」
「ミア、本当は倍率、知ってるでしょ」
「………まあね」
「じゃあなぜ言わなかったの⁈」
「……なんでそんなに怒ってるの」
「あんなに落ち込んでいた魔王様を見たことある?少なくとも私にはない。おそらくは身体強化魔法のこと、魔王様は知りたいんだと思うよ?だからいつもはプライドが高くて質問しないあの方でも、今回は頭を下げてお願いした。違う?」
「ボクもそう思うけど………」
「気づいていてなんで言わなかったのさ?ちゃんとした理由があるの?私や魔王様が納得できる」
「それは……今は言えない。けど後で話す。絶対に、ね?だから今は見逃して」
「……わかった」
※※※
「これより、『ペンタグラム』閉会式を執り行う!まず初めは魔王陛下のお言葉」
いやー、サタンさんの声は響くなー。会場全体が引き寄せられると言うか、釘付けになる声を持っている。
「まず初めに、この大会を開き、無事に終えれたことを感謝しよう。こんなにも多くの者が集まり、しのぎを削りあった。それは素晴らしいことだと思うし、なによりの誇りだ。特に入賞した者たちの戦い。あれは今後魔王軍に、この『魔都』に語り継がれるものだろう。そんな彼らを評して、今、新たな幹部枠である『ペンタグラム』に任命することとする!」
「「「うおーーーっ!」」」
「入賞者諸君。前に」
サラさん、カルタさん、グラザームさん、ティア、ボクの順番で前に出る。
「『天魔』サラ。ミーティアとの魔法戦は歴史上最も熱い勝負だった。それに順じて、其方をペンタグラム第五席に任命する」
「ありがとうございます」
慎まやかにお辞儀をし、その命を拝借する。
「次に『狂士』カルタ。貴君も神武を用いた戦闘は素晴らしかった。よって其方をペンタグラム第四席に任命する」
「ありがとう…ございます」
言い慣れていないのか少しギクシャクしていたがまあ、カルタさんらしいといえばカルタさんらしい。
「次に『赤眼』グラザーム。今まで貴君の本気の戦闘は見ることができなかったが今日、初めて見せてもらった。そして其方をペンタグラム第三席に任命する」
「仰せのままに」
片膝をつきながら感謝を述べる。さすがグラザームさん。エレガントな返し方だ。
「次に『死操』ミーティア。新たな堕天使化という選択肢、その強さを見せてもらった。其方をペンタグラム第二席に任命する」
「ありがとうございます、魔王様」
「うむ」
「そして『神剣』ラミア。『神剣』という二つ名にふさわしい剣捌き、そして魔法センスを見せてもらった。よって其方を、ペンタグラム第一席に任命する」
「ありがとうございます」
ボクもこういう形式のものは慣れていないので変な声が出ていないか、ちゃんとできているか不安になる。が、前を見たら魔王様が親友に向けて笑ってくれているように思えたためいいのだろう。
「以上をもって、『ペンタグラム』は終了した!これから魔王軍はこのペンタグラムの面々を中心に、人類との戦争を終わらせようと思う」
「いつか魔王軍という組織が要らなくなるまで、その日が早くくることを願って、魔王軍を信頼してくれ」
「もちろんですよ!」「当たり前だ!」「平和を取り戻そう!」
繰り返される、魔王様への返答。それを聞いた魔王様からは、涙がこぼれそうだった。
そしてボクは魔族の人たちの平和を願って、戦い続ける。それがボク、魔王軍幹部の『神剣』ラミアだ。滅ぼすべきは、人間。そう思った日から、ボクの意志は変わっていなかった。




