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師匠と弟子と

付け足しました。すでに読んだ人は面倒ですがもう一度読んでいただけたら。

「ミアー!」


「おー、ティア。すごかったね?さっきの試合。あの力は何?」


「うん。まだ制御は難しいんだけどね、あれが堕天使族の力の一端なの。本来の私もあんな感じ」


「そうなんだ。いいなー、ボクもなんか固有能力みたいなの欲しいなー」


「安心してよ、ミアは存在自体がずるいから。あ、もちろんいい意味でね?」


「それもそっか。ボクは強いからね」


「そこに反論ができないんだよねー」


「あはは。まあそれは置いといて、サラさんのとこに向かおう?さっきは戦いが終わってすぐに別れちゃったからね」


「そうだね、サラさんは……今治療室にいるのかな?行こっか」


 

※※※



「サラさん!大丈夫でしたか?」


「私は大丈夫だけど…あなたこそ大丈夫なの?」


「何がですか?」


「あの姿……堕天使化といいましょうか。あの姿になるのはどこか苦しそうだった。実際、あなたもあの姿が辛いと言っていたではないですか」


 どこか心配そうな顔。師として、弟子の身を案じているのがひしひしと伝わってくる。


「…そうですけど、まあそこまでしないとサラさんには及ばなかったと言うことですよ。いつもの姿のまま戦ったら魔法の知識量で差がついて負けていましたから」


「そんなことはないわ。あなたは死霊術師、魔法を使うのに多くのエネルギーを使うわけではないじゃない。消耗戦にもつれ込むことができれば、私の魔力が先に切れて、余裕を持って倒せたはずよ。……でも、いまさら『もしも』の話をしても意味がないわね。おめでとう。私から言えることはこれだけよ」


 そう言われた瞬間、ティアの空気が和やかになり嬉しそうになった。小さい頃から育ててもらった師に、ついに認められたのだから。


「もう行きなさい。次の試合が始まってしまうわ。あなたもサルベージュさんの試合を見たいでしょ?」


「ですね。ここらへんでお暇させていただきます」


「じゃあ、ボクもこれで」


「………」


 何かすごい目線をボクに向けてくる。


「どうかしました?」


「いえ、なんでもないわ」


 背中を向けて去ろうとするも、後ろから視線を感じた。が、それを振り切り戻ったのだった。


「えっと、次はサルベージュさんの試合だっけ?」


「そうそう。サルベージュさんとルーイくんの試合だよ。ルーイくんは今大会の注目選手だけど、どう?サルベージュさんより強いと思う?」


「んー、私はノーかな。いくらルーイくんといえどサルベージュさんには勝てないと思う。だって近接において負けることはないミアがあんなに苦戦したんだよ?普通に考えればルーイくんはミアよりも弱い。だからサルベージュさんには勝てないと思うんだよね。ミアは?」


「ボクもそう思うんだけどさ、ルーイくんが覚醒したら分からないかなって。竜族の長と獣人の長と密接に関係がある子だ。覚醒する可能性は大いにあり得る。けど、最初に負けた時に覚醒しなかったから望みは薄いのかな」


「サルベージュさんがどれだけルーイくんを圧倒できるかだね。覚醒はそれにかかってる」



※※※



「結局、ルーイくんは覚醒せずにサルベージュさんの勝ちか〜」


 後ろに手をついて空を見上げる。覚醒を期待してたんだけどなー。


「流石にサルベージュさんが圧倒的に強かったね。ルーイくんがアサシンタイプだったからまだマシだったけどさ、サルベージュさんのアンデッドが強くなると一気に倒せなくなって足をとられたね。そのままアンデッドに囲まれてさよなら。終始近づける雰囲気がなかったよ」

「覚醒に必要なのは緊迫した状況。お互いの実力が拮抗しているようなね。それを促すにはサルベージュさんが強すぎたみたいだ。それにしても、覚醒見たかったよー」


「なんでそんなに覚醒に固執するの?ルーイくんと面識があるわけではないでしょ?」


「いや、強くなればなるほど戦いがいがあっていいでしょ⁈なぜそれがわからないんだ〜!」


「落ち着いてよ。強くなったところで手合わせする機会がなければ意味ないでしょ?」


「そのときは決闘を仕掛けに……」


「それを魔王様が認めると思ってるの?」


「……無理だね」


「ほら言った。…まあ覚醒は悪いことじゃないし魔王軍が強くなると考えたら問題ないかもね」


「これからは覚醒に必要な条件を探すことかなー。まだ解ってるのは本人がピンチになった時に発動することぐらいだし」


「条件を探すなら私も協力するよ。ミアがいうことだしね」


「ありがとー」



 こうして、ボクとティアに目標ができたのであった。この研究が、戦いに大きな影響を及ぼすとも思わず。


※※※


「ティア、家帰ったら何食べたい?」


「んー迷うなー。昨日はカレー食べたんだっけ?」


「だね。うーん…手はかかるけど唐揚げとかにする?今ならまだ食材も買えるし」


「いいね。えっと、家にないのは鶏肉かな?ちょっとお店行って買ってくるけど先帰ってる?」


「一緒に行くよ。鶏肉以外にも買いたいものはあるし」


 家の近くにあるいつものお店に入る。このお店は幅広いものを取り扱ってるから結構便利。長いことやっている老舗らしく時代に合わせて形態も変えているんだとか。老舗であるため市民からの信頼も厚く、この城下町で最も人気な店と言っても過言ではない。


 そしてごくたまーに魔王軍の上層部の人と会ったりする。基本幹部とか准幹部の人ってハウスメイドみたいのを雇っていることが多いからあまり顔を合わせないんだけどね。でもサラさんは料理が好きで自分でよく作っているからこの店では一番顔を合わせる。同じ料理好きとして今度一緒したいな。

 そう考えると、ボクとティアは変わってるかもしれない。身の回りのことを全部自分たちでやるからこうやって街に顔をみせることも多い。けどその分親しみを持たれているのはいいことだ。

 

 店の奥の方にある肉を扱っているブースまで行き鶏肉を手に取る。大体このぐらいでいいかな。300グラムほどの鶏肉を持って家まで帰る。なお、銀貨3枚ぐらいしたため値上げしたのかもしれない。今までは銀貨2枚と銅貨5枚で済んでたのに。銅貨5枚分高くなってるや。

 

 そして帰宅後、早速料理に取り掛かる。さっき買ってきた鶏肉に簡単に下味をつけたら、あらかじめ温めておいた油へポン。パチパチと音を立てて鶏肉が揚げられていく。見た目はパリパリで最高に仕上がった。


 あとは野菜も適当に添えて、

「「いただきまーす」」


「……美味しい!」


「いやー、試合後のこれは体に染みるわー」


「久しぶりに作ったけど上手にできて嬉しい。これからは定期的に作ろうかな」


「1ヶ月に1回あってもいいかもねー。これは飽きないと思う」


 結構あった唐揚げもペロっと食べて時刻は夜9時。割ともう遅い。


「ボクは寝るけどティアはどうする?」


「私もそろそろ寝るよ。私たちは明日試合もあるんだし」


「明日、決勝で戦おうね?それまでに負けたら罰ゲームで」


「いいよ。その勝負乗ったる!罰ゲームは……1回だけなんでもお願いできる権利を相手に渡すこと。どう?」


「いいね。それにしよう」


「さてと、罰ゲームも課せられたことだし負けるわけにはいかなくなったね。それも踏まえてもう寝ることにするよ。おやすみー」


「おやすみ」


 それぞれの自室に別れてベッドに滑り込むように入る。

 明日はペンタグラム最後の日。これからのことが決まる日と言っても過言ではない。優勝すればペンタグラム第一席の地位が与えられ魔王軍最強の戦士の称号を得られる。称号自体に興味はないけど、地位は欲しい。別に承認欲求のためとかではない。単純に人間と戦える機会が増えるからだ。ボクはその機会が欲しいのだ。




 人類に復讐するために。



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