ヒリアVSグラザーム
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サルベージュさんとの準々決勝に勝ち、準決勝へ駒を進めたラミア。試合が終わると、幹部がいる特別席へと向かった。
「ティアー、疲れたよー!」
ティアのお腹に顔を埋めるようにしてもたれかかる。
「疲れたと言っている割には疲れたように見えないけど?あと人前でそういうことするのは無し。離れなさい」
お腹に埋まるのは気持ちいいからやめたくなかったけど嫌われたくはないので渋々離れる。
「もう、全く。そういうのは家でね」
「家でならやっていいの?」
「まあ…人前でやられるよりはマシ」
「分かった!家でね」
「なんでそうなるの。…それはそうと、サルベージュさんと戦ってどうだった?」
「どうだったって言われてもなー。でも強かったのは確か。攻守共に隙がなくて流石、古参の幹部だなって。実際、魔法職の人からすれば天敵のような方だから相性次第では実感が変わるかもね」
「そうね。ミアが戦っている時にサラさんと話したんだけど、私たちではきついかもねってなった。まさか飛び道具系の魔法が一切効かないとは。魔法職が攻撃できる手段は具現化魔法とか召喚魔法とかの物理系に属するものだけだから随分と幅が縮まっちゃう」
「実際ボクも魔法合戦に持ち込まれるのは面倒だったから先に魔力を消費させたし」
「あれ、サルベージュさんからすればうざかったと思うよ。ちょこまか逃げられて追うにはアンデッドを使って追いかけるしかない。でも1体1体がそこまで強くないからすぐにやられちゃう、けど追いかけるしかない…って無限ループだよ」
「まあそれも戦いのしきたりよ」
「あ、サルベージュさん」
先ほど戦い消耗していたからか一回り小さく見えるが、それでもアンデッド特有の圧は健在していた。
「戦いにおいては如何なる手段を使っても最終的に立っていればいいからな。久しぶりにあのような経験ができてこちらも楽しかったぞ、ラミア。しかし、今のお主を見ていると魔王軍に入った頃の姿も思い浮かぶわ。あの時はまだ何も知らない無知な状態で可愛かったがのー。いつのまにか抜かされておったわい。ホッホッホッ」
昔を思い出したからか少し顔が和やかになったのが伺える。まあアンデッドって顔が骸骨だったり目の部分に炎が宿っているだけだったりして表情がイマイチわからないんだけど。
「それにしても、あのような作戦をやられては疲労が溜まる」
「なんか…すみません」
「よいよい。これからは人間をおちょくりたい時に同じことをやってやれ。おそらく怒りで顔が真っ赤になるぞ」
敵をおちょくりたい時に、か。たしかに楽しそうだから今度戦場に出た時にやってみよう。
「そろそろ次の試合が始まるからここらで失礼するとしよう。じゃあな、ラミア」
「はい、また今度会いましょう」
「ティア、ボクらもそろそろ席に戻ろうか」
「そうだね。えっと……次はヒリアさんとグラザームさんの試合だっけ?」
「そうそう。……あの2人が本気でやり合ったら闘技場壊れない?」
「流石に結界張ってくれてるから外には被害がないとは思うけど……地面はあの人たちにとっては柔らかすぎるかもね」
「だよねー」
※※※
ペンタグラム準々決勝第2回戦。ヒリアさんとグラザームさんの一戦だ。
お2人の性格は真逆のところもあれば似通っているところもある。
ヒリアさんは熱血系で明るい感じだ。しかしグラザームさんは寡黙、冷静さが売りでいつも黙っている。だがお互いに頼れる存在なのは間違いない。ヒリアさんは熱い兄貴分で、グラザームさんは言えばなんでもやってくれる縁の下の力持ちだ。
お2人の戦い方に詳しくはないが、簡潔に戦いを表すとするならば『本能』vs『知略』だ。戦いのカギはヒリアさんがグラザームさんの戦略を見抜き、対応できるかだ。これの結果によって勝負の結果も大きく変わることとなる。
ヒリアさんとグラザームさん、どちらもグラウンドに入場し準備が終わった。ちなみに、グラザームさんは吸血鬼だけど別に太陽光の下に晒されても影響は受けない。というか吸血鬼族って別に太陽光を浴びたら消滅しちゃうとか、何らかのデバフを受けるとかはしないんだよね。それはただの噂に過ぎず、事実無根の話だ。実際は太陽は何の問題もなく、月の下ではステータスがアップする。それだけの話だ。
「試合、開始ッ!」
掛け声と共に両者が動き出す。ヒリアさんは一直線にグラザームさんの方へ進み、対してグラザームさんは一歩下がって手に赤黒い剣を召喚する。その剣はおそらく『血』でできたものだろう。グラザームさんの種族は吸血鬼族の始まり、始祖だ。血で剣を作ることなど造作でもないだろう。
ヒリアさんの突撃にグラザームさんも合わせ、剣を交えることとなる。ボクは最初、ヒリアさんが剣捌きにおいては上だと思っていたが、その予想に反してグラザームさんはヒリアさんの独特な動きを見切り完全に合わせていた。
やはり、年齢の差かも知れない。グラザームさんは、実は最古参の幹部の1人で昔から魔王軍にいる方だ。年齢は600歳以上あることは確定しているがそれ以上はわからない。なぜ600歳以上とわかっているかというと魔王軍が発足したのがその時期だからだ。600年前に魔王軍は設立され、その時代から所属しているということは、鍛錬してきた時間が他の幹部とは比にならない。その経験の差というものが如実に表れていた。剣技はヒリアさんの独壇場という考えが覆された瞬間だった。
「竜族もこんなものか」
グラザームさんが呆れも込めて呟く。会場は静まり返っていてやけに響くようだった。
「ははッ、お前が化け物なだけだろ」
「その程度で息切れとは、情けないものだ」
圧倒的強者の余裕。ヒリアさんを値踏みするかのように眺める。
「俺だってこんなもんが本気じゃあない。序列が下だからって少し油断していたかも知れねえな」
ペッと唾を吐き出し睨みつける。
「いかせてもらうぞ」
「…来い」
ヒリアさんのスピードはそこまで高くはないが、彼の強さはパワーにある。最初と同じように剣を交えるが今度はグラザームさんがぐらつき、後ずさる。
「そのパワー、本物だな」
何度も、何度もぶつかり合いグラザームさんは闘技場の端の方へ追いやられていく。
「竜人族最強の戦士と言われるだけの実力はあるようだな……」
並の相手なら視線だけで殺してしまいそうな目つきでヒリアさんを冷徹に見据える。
「そうでなきゃ、興がのらないというものだ」
(速いッ⁈)
先ほどの動きが嘘かのような速さで今度はヒリアさんを追い詰めていく。
……あの速さは下手したらこの世で一番速いかも知れない。少なくとも魔王軍ではトップの可能性が高い。サタンさんでもあの速さには及ばないだろう。速さ、単純な力、どちらもトップクラス。最古参の幹部の実力を示すには十分なものだった。
「これで、終わりだ」
とどめと言わんばかりに力強く振られた赤黒い剣は、ヒリアさんの持っていた白と水色の剣を貫きヒリアさんに刺さる。
「ゴボッ…」
吐血!竜人族の特長である硬い鱗で防いでもあの威力。ヒリアさんの奥深くまで剣が刺さってしまったのだろう。
その後も、何回も剣を突かれ出血を繰り返したヒリアさんは意識を失い、グラザームさんの勝利が決定した。
というかボク…この人と次戦うのか……。




