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ヴェラVSニーヒル

 大会2日目。王都は相変わらず賑わっていて人でごった返していた。


 昨日、2回戦までの全ての試合が終了し今日は3回戦からだ。2回戦では出場している幹部の方全員が無事勝利を収めていた。ティアも魔法で相手を潰していた(物理)。観客はまさか空から岩が出てきて相手を潰すなんて思っていなかったようだ。


 3回戦からは幹部同士の戦いも見られるようになる。確かニーヒルさんとヴェラさんが戦うはず。幹部は全員が優勝できるぐらいの実力があるから、勝ち上がれるのは相性によるところも大きい。その点ではヴェラさんはニーヒルさんとは相性が良くないかも。ヴェラさんは近接、肉体を使って攻撃するタイプに対してニーヒルさんは精霊族の力を使った遠距離攻撃が主だ。ヴェラさんが懐に潜り込めるならどうとでもなるとは思うがニーヒルさんがそれを許すかどうかが見どころだ。


 


 そんなこんなで始まったペンタグラム第3回戦。会場は昨日よりも一層ボルテージが上がっていた。3回戦ともなると猛者以外は残っておらず1試合1試合が面白くなる。


 というか今更気づいたんだけど、この大会で賭けが行われているらしい。試合でどちらが勝つかをあらかじめ予想して、それが的中するとお金は増えて戻ってくる。倍率は予想している人数が少ければ少ないほど高倍率に、多ければ多いほど低倍率になっていく。当たり前といえば当たり前なんだけど幹部が出ている試合は倍率が極端になっている。みんな幹部が勝つと予想していて対戦相手の倍率は結構おかしいことになっている。1発当てれば大儲けだけど、そんな危ない橋を渡りたいと思う変人はごく少数のようだ。


 ボクもその賭けに参加して儲けようと思ったけど元々お金に困ってはいなかったから遠慮しておくことにした。ちなみにこういうのが好きなヒリアさんはカルタさんと一緒に参加していた。世間では風神雷神と呼ばれ、あまり仲がよろしくないように思われているヒリアさんとカルタさんだが実際はそんなことはない。親戚でもあるしお互いに族の最も強いポジションにいるから結構仲はいい。同じ境遇の同性には惹かれるんだろうね。ちなみに、数ヶ月前には一緒に酒を呑んで酔った勢いで魔王城を荒らしていた。なお、魔王様に怒られて謹慎処分になった模様。


 


 そんなこんなで時間が進み、3回戦は修羅場に向かおうとしていた。そう、ヴェラさんとニーヒルさんの試合だ。ここまで幹部は全員勝ってきていたが(ボクの3回戦の試合は終わってる)ここで初めて幹部が脱落することになる。ここで、大会の空気は逆に落ち着いた感じになった。いや、正確にはみんな興奮を抑えている感じなのだろう。空気がピリついている、というのが正しいだろうか。


 ヴェラさんとニーヒルさんがグラウンドに降り立つと空気はさらにピリついた感じになった。ちなみに、ボクの予想はなんだかんだ言ってニーヒルさんが勝つと思っている。理由はやっぱり精霊族の祖の力は強いと思うから。あと単純に序列はニーヒルさんの方が上だし。


 というかひとつ思ったことがある。……ニーヒルさんがちっちゃすぎて見にくい。精霊族は全員が小型の妖精であるためちっちゃい。それはニーヒルさんも例外ではない。そのため観客席からだとどこにいるのか本当にわからない。なのでボクは自分の眼に魔力を流し視力を無理矢理上げて観戦することにした。


  


「試合開始ッ!」


 その合図とともに試合が始まった。最初はお互い見合って、腹の探り合いと言ったところだったが、先に仕掛けたのはニーヒルさんの方だった。


 ニーヒルさんが自分の下にあった地面に触れると、地面はうねり始め、ヴェラさんを襲うように波状に変形していく。そして波は高さを増しながらヴェラさんの方に向かっていく。対してヴェラさんは地面のうねりを殴ることで止めるという荒技に出た。波を正面から受け止め、壊す。波は水ではなく地面、固形物なので拳で殴っても問題なく壊れる。……いや、それができるかは置いといて。まさに『破壊』という異名にふさわしい方だ。


 ヴェラさんが波を壊すとお互い何もなかったように向き直す。おそらくお互いに小手調べを終わらせたところだろう。


 次に仕掛けたのはヴェラさんだった。ボクらの目では追えないほどの速さでニーヒルさんに迫る。しかしニーヒルさんは予測していたとでもいうように地面を隆起させて壁を作りヴェラさんの動きを制限、動きが止まったところに空から雷を落とした。ヴェラさんはそれに反応出来ず雷がクリーンヒットしてしまった。冷静に考えてみても全力で走っていたところにいきなり目の前に壁が出てきて、視界が遮られたら誰だってパニック状態になるって。脳が状況を把握しようと努め、動きが止待ってしまうのは生物上致し方のないことだ。そしてそこに『上空』という視界に入らないところからの攻撃が加わる。これを避けるのは不可能に近いはずだ。おそらくニーヒルさんが元々考えていたコンビネーションにヴェラさんはハマってしまったわけだ。


 ヴェラさんが雷に打たれ、体勢が崩れたところを逃すニーヒルさんではない。これを好機と見るや否や連続で攻撃を仕掛けてくる。ヴェラさんを囲むように地面を鳥籠のように変形させヴェラさんの動きを封じ、行動が難しくなったところに雹を降らしダメージを稼ぐ。そしてそれを察知してヴェラさんも再度地面を壊し、脱出するも広範囲に降り注ぐ雹を避けきれず当たってしまう。


 

「すごい、圧倒的だ」


これがボクの心境だった。確かに、ボクはニーヒルさんが勝つだろうと予想していたが、流石にここまで実力差があるとは思っていなかった。ヴェラさんも序列5位で上位に入る。しかし序列5位と序列3位の間には想像以上に差があったようだ。ニーヒルさんは戦闘IQと能力の扱い、どちらもヴェラさんに勝っていた。


 試合はニーヒルさんがヴェラさんを完封し勝利。負けたヴェラさんは悔しそうだったがニーヒルさんを称えていた。ということで、ペンタグラムで一番最初に姿を消す幹部はヴェラさんということになった。


 見応えのある試合だったけどあまりにもニーヒルさんが強過ぎてびっくり。ヴェラさんも上へと入れるぐらいの実力は道合わせているはずなんだけどな。けれど勝負は勝負。相性を言い訳にせず相手を称えるヴェラさんの姿はカッコよかった。


 ここからは4回戦。さらに戦いは激しさを増すことになるだろうな。



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