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整合性

「はぁ……。クルガ。君を殺したのはいいものの、ボクはこれからどこへ向かえばいいのかな」


 クルガの遺体のそばで座り込み、もう今は動かない体に手を伸ばす。 


「本来はこんなにしみじみとする感じにはならなかったはずなのにな……」


 こいつが、最後に優しさを見せたから。ボクを殺す気でかかれば、もっともっと長い時間戦っただろうに。ボクも長い時間戦うことを望んでいた。復讐は簡単に成せるより、苦労して成す方が自らの人生に深く刻み込まれるから。


「こいつ、簡単に死にやがって。ボクを痛めつけたのにボクが痛めつける時間は取らせなかったじゃないか」


 これはボクにとっての1番の後悔であり、クルガにとっての1番の復讐かもしれない。クルガはあえて本気を出さずにボクにわだかまりを残させた…とか?いや、でもそれだと最後に優しさを見せた整合性がとれないか。


 結局、クルガの心情は彼のみぞ知る、か。ボクがどんなに推測しようがそれはボクの想像に過ぎない。事実もあれば、嘘もある。つまり何も考えてないのと同じか。


「もしかしたら……君は早く解放されたかったのかな」


 クルガは言わずもがなこの世界で強者であり、長年を戦線に捧げた戦人だ。彼は命のやりとりをする戦場に身を置いたが、本当は戦場には飽き飽きしていたのかもしれない。もう解放されたくて仕方がなかった、ということにしておこう。そっちの方がクルガにとってもボクにとっても、1番心に残らない道だから。


「はぁ……なんでだろうね。君が育てたボクは魔族に寝返って、君に刃を向けた。これは本当に君が願った未来なのかな」


 鞘にしまってあるフロレントを握る。


「もし違うなら、ボクは君と決別して前を向くだけ。でも、こんな未来を君が願ったなら、ボクは君の想いも背負って生きていくよ」


 これはボクなりの優しさだ。クルガが優しさを見せたなら、ボクも優しさを与えなければ誠実じゃないじゃないか。


「さてと、禊は終わったしクルガは火葬するか」


 クルガが持っているはずの神武は……回収するか。倒された奴の武器は勝ったものが回収する権利があるし。…あと、神武が失われては勿体無い。決して神武コレクターになりたいとかじゃないからね?


 それはさておき、クルガが持っていた神武はおそらく未来を見通せる神武。戦闘中の動きに滑らかに取り入れられるなら、相当強力な武器になるはずだ。


「多分目の近くとかに神武はあるはずなんだけど……もし取り出せなかったらどうしよう」


 目の中に埋まっていたりしたらクルガの目を引きちぎんないといけないし。頼むから目元にあってくれー。


「ん。あ、これかな。この耳にあるやつ」


 左耳にかけるようにしてある大体3センチぐらいの小さな筒は、大きさに見合わず大きな魔力を保持していることが見てとれた。


「やっぱクルガが左目を触っていたのはブラフだったか。左目のあたりに手を持ってったときに耳も一緒に触っていたのかな」


 耳から神武を取り外し、ボクの耳にかける。


「取り扱いは…まあ後で試せばいっか。今はクルガを火葬してあげよう」


 手を前に組ませて、まるで眠っているかのようにする。


「クルガ。君はボクの人生に大きな意味を持ったよ。ありがとう」


「じゃあまた来世でね。<火の祈り>(プレア)」


 ボクが手元から放った魔法はクルガの体を焼き、残ったのは灰だけだった。逆に言えば、彼の魂や肉体は無事天に届いたのだろう。


 クルガの灰はこの地に撒いて、また新しい生命を築いてもらおう。


「今回の収穫は勇者討伐と神武2つ。それに十二騎士3人か。まあなかなかに良い結果にはなったかもね」


「だね」


 独り言に入ってくる人がいた。


「あ、ティア。それにミーナも。来てたんなら声かけてよ」


「別にずっと前からいたわけじゃない。私たちが見てたのはクルガの遺体を燃やしてたところから」


「ならいっか。じゃあ……帰ろっか。魔王様たちも朗報を聞きたがっているだろうし」


「うん。<転移>」



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