出会い
時間が経って午後。もう昼食は済ませてあり、これから訓練場に向かうところだ。
ちなみに昼食もなぜかテーブルに置いてあった。魔王様に呼ばれてからずっと家にいたのにリビングから離れた瞬間に置かれてた。どうなってるんだろう、本当に。
一応人の気配を感じるのは得意なんだけどな。もしかしてどこからともなく現れてたりする?そのレベルで謎だ。
訓練場に着いて周りを見渡すと、昨日と同じところにサラさんがいた。
「サラさん、こんにちは」
「あら、ラミアの方が先だったのね」
「?もう一人の方はまだ来てないんですか?」
「ええ、そうみたい。でも…噂をすればね。ちょうど来たわ」
後ろを振り向くと一人、女の子が立っていた。髪はサラサラな金髪、目は水色のような透き通る青色をしていた。そして年は……ボクと同じぐらいかな。魔王様よりは上に見える。体つきは細身ではあるけど、別に平均より少し軽いだけな気がする。そして次にとある部位に目がいく。……デカくね?細身なのもあってか余計大きく見える。同年代……なんだよね?不安になってきた。
「揃ったわね。早速魔法を教えていきたいのだけれど、いかんせん二人共扱う属性が違うからねー。でもとりあえず今日は魔力の扱い方を教えて行こうと思います」
了解。
※※※
数十分後。ここまで魔力を感じたり、魔力を体から放出したりと昨日したことをもう1回してきた。そしてここで1つ思ったことが。
一緒にやってる子がめちゃくちゃうまい。
まだなにも喋れてなくて彼女のことはよくわからないけど、魔力を感じるのにめちゃくちゃ長けてる。おそらくは魔法職の何かなんだろうな。
なので自分は彼女より一歩遅くできている感じだ。悔しいけどこれも訓練か。
ボクはあまり好きではない言葉だけどこれほど魔力の扱いに長けているのは天性の才だと思う。もちろん本人の努力も含めてね。努力できることも才能の一つだと思っている派閥だから。でもなんで才能、とかそれこそ天性の才とかいう言葉が嫌いなのか。それはその言葉が広義すぎるからだ。なんでもかんでも上手い人を才能という言葉でひっくるめてしまうと、その人の裏にあるストーリーまでには目がいかなくなる。天才とか言われてた人の裏にも、必ず努力の道筋があるのに、それを一言で片付けてしまうのはもったいないし失礼だ。というのがボクの持論。だからこれから先もこの言葉は使わない予定だ。
「それでは今日はこのぐらいにしておきましょうか。長く魔力を扱っていると疲れてしまいますからね」
ボクが魔力を感じていたところで声がかかり練習の終わりが告げられ解散となった。
それにしても魔力制御の練習、か。これは一人でもできることだから家でやるべきだな。
あ、そうだ。
「君さ、名前なんて言うの?」
訓練中はサラさんの方に集中していたから聞くのを躊躇っていたけど、やっぱり好奇心には勝てなかった。
「え、私?」
「うん。ボクはラミアって言うんだ。で、君の名前は?」
「私はミーティア。呼ぶときはティアって呼んでいいよ」
「そっか。じゃあボクもミアって呼んでもらって構わないよ」
「ところでさ、ミアって人間?」
「うん。まあ。種族上は」
「もしかして噂の元勇者だったりする?昨日こっちに来たって聞いたんだけど」
「多分そう。人違いじゃなければ……」
「人違いな訳ないじゃん。同じ世代に勇者は2人は現れない。だから君が勇者だったって言うなら確定でご本人だよ」
………今知ったんだけど勇者って1世代に1人しか生まれないんだ……あれ、どっかで聞いたことある気がしてきた。いつかは明確に思い出せないけど。
「ボクも気になるんだけどティアは種族はなんなの?」
「えっと、私は堕天使っていう種族なんだよね。あまり馴染みがないかもだけど。少数しか存在しない種族だし」
「堕天使かー。聞いたことなかったよ。今度でいいから堕天使について聞かせてくれる?」
「いいよ。ところでだけどミアは初めて魔力コントロールとかしたの?」
「魔力を感じるの?」
「そうそう。初めてにしてはうまいなー、って思ってさ」
「一応昨日初めて感じたけど、実質初めてといっても過言ではないかも」
「昨日初めて魔力を感じたの⁈」
「そうだけど…」
「本当に?今何歳よ」
「えっと、記憶してないけど多分15とかだと思う」
「マジか。つまり15年間魔力を感じずに生活してきたと。恐ろしいな」
「これってそんなにヤバいこと?」
「ええ。普通は6歳ぐらいから魔力は身近に感じるものなのだけれど…今までどんな生活を送ってきたのよ」
「ボクの生活なんていいんだよ」
「いいんだ……」
「それよりもティアはなんて言う職業なの?」
「私の職業は≪死霊術師≫って言う職業なんだけど、知ってる?」
「知らない」
「まあ魔力を感じてこなかったということで知らないとは思っていたけど……この職業についてはあまり知らなくていいわ」
「?なんで?」
「少し……闇があるから。いつか知りことにはなると思うけどさ」
「……そっか。無理に聞くのはやめておくよ」
「それがいい。ところで私はもう帰るんだけどミアも帰る?」
「うん。そうするよ」
サラさんとの魔法訓練が終わり、そこで出会ったミーティア(ティア)と一緒に帰ることとなった。
途中までは先ほどのようにザ・初対面っていう会話を続けていたが、途中から何か違和感を感じ始めていた。
「ねえティア。ティアの家ってどこなの?」
そう、この魔王軍の住宅地はとても広く魔王城を囲むようにズラーっと並んでいる。それなのに訓練場から約15分、全く同じ方向に向かっているのだ。もうそろそろボクは家に着くからティアに家はどこなのか聞いてみることにした。
「ん?571だけど」
「え、571なの?ボク569なんだけど」
「確か571と569って…………」
ここで家に着く。
「そうだよね、目の前だよね…」
どんな奇跡かティアとボクは道を挟んでの隣の家だった。
なんでこの1000とある家々の中から隣同士になるんだ。まあ別に嫌な気持ちはしてないからいいんだけどね。
「っじゃあボクはここで。明日の午前中にも訓練があったよね?」
「そうね。また明日かな」
ティアと別れて家の鍵をポケットから取り出す。そして鍵を開けて家の中に入った。もう日が暮れ始めていて空がオレンジ色に近かった。
ミーティアは重要人物なので覚えておいてください。