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女神

 死んだことに、後悔はしてない。だってボクはもう、死んでるんだもん。でもせめて…ティアには言葉を遺しておいた方が良かったかな。ずっとそばにいてくれたし。でもまあ…レイが伝えてくれるでしょ。


 それにしても、死んだらこんなとこに行くんだ。なんか…不思議な感じがするな。暖かいのに、冷たい。そして黒くて、白い。何もかもが矛盾しているようなのに実際に存在している。


「お疲れ様です。ラミア様」


 え、誰?


「私は天界に住んでいる者。あなた方の世界では天使などと呼ぶのでしょうか」


 へー。で、ボクはどうなるんですか?というか今喋れてます?


「あなたは現在魂として存在しているので口や声帯はありませんが、声を出さずとも私には通じているので大丈夫ですよ」


 ならよかった。


「あなたの問いにお答えしましょうか。大前提として、あなたはまだ完全には死んでおりません」


 え?でもボクは完全に自分の首を斬ったはず。切断はできてないけど、斬った感覚はあった。


「確かにそうかもしれませんが、あなたのそばにいた魔王が命を取り留めようと奮闘しております。彼女は本来、魔族に対しての治癒能力は持っているのですが、あなたは人間なので生き返らせるにはまだまだ苦戦しそうですね」


 レイのやつ。余計なことしやがって。ボクはようやく解放されたと思ったのに。ところで、死んだ者だったり死にかけている者は全員ここに来るのですか?


「そんなことはありません。おそらく今までであなた1人だけですね。それほどまでにあなたは特別だということです」


 特別?それでボクはどうなるって言うんですか。ボクが味わったのはその『特別』が故の苦痛と疎外感です。それに対して言われてもボクは何もいい気は感じません。


「そうでしょうとも。強い者はそれ相応の報いを受けてしまう。しかし、私たちにも思惑があり、それにはあなたが必要です。ですので、私と取引を致しませんか?」


 内容は?


「あなたには2つの選択肢があります。1つは承諾。もう1つは拒否。そして承諾した場合、あなたは再度あの世界へと戻ることになります。けれども今のあなたは戻る気などさらさらないでしょうから、私からいくつかのメリットを提示しましょう」


 メリットねぇ…。


「あなたを人間以外の種族へと転生する機会を与えます。もちろん、再度人間となることも可能ですけど、あまり利点があるとは思いませんね」


 ………他には?


「あなたが感じている孤独感、その答えを授けましょう。そして最後に、あなたが望むことなんでも1つ叶えて差し上げます」


 そんなにいいの?ボクはボク自身にそれほどまでの価値があると思ってないんだけど。


「いいのです。私たちが望むことはただ、あなたがあの世界へと戻り生きることですから」


 ……望むことはなんでもいいんだね?


「ええ」


 数秒の沈黙の後にボクは自らの願いを決めた。


 じゃあボクが望むのは………。


「……わかりました。では契約成立ですね」


 はい。ボクはこれから何をすればいいのですか?


「ただじっとしていてください。心を落ち着かせて、体に染み込むように」


 ボクはその言葉に耳を傾け、自らの心に問うてみた。なぜボクは生きるのか。

 その問いに対して、昔の自分ならこう答えていただろう。それは人間を滅ぼすため。


 けれど今、ボクの心に自然と別の答えが出てきた。それは自分たちの、平和のため。そのためにボクは生きるんだ。




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