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終演

遂に100話!これからもよろしくお願いします!

「さてと、これからがメインだね。おそらく君らの中で1番強かったであろうこの冒険者たちも始末したし、今度は君らの番だよ」


 ボクが放つ言葉は、物理的に距離は遠くともしっかり彼らには聞こえているはずだ。なぜならボクが発している言葉は、村人たちを拘束しているキューブの中に魔法で伝わるように設定しているからね。


「じゃあ、君らを1人1人この地上に下ろそうかな。そして、ボクと戦うんだ。ボクはその試合に勝つたびに、物語を少しづつ紡いでいく。なんていい脚本だろうね」


 ボクが言葉を終えたとき、村人たちは恐怖で顔が歪んでいた。なぜならボクが言ったことを真とするならば、1人1人個別に殺されていき、その姿を上空という『特等席』で見なければならない。


 とりあえず剣を抜き、指を弾いて1人地上に下ろしてくる。ちなみに完全ランダムだから誰が選ばれるかはわからない(2人を除いて)。


「さあ、始めようか。まずは君から」


 性別は女。年齢は20ぐらいかな。つまりはほぼ同年齢っていうことだけど……全く見覚えがないや。


「ゆ、許してください…!」


「命乞いなんて通じるわけないでしょ」


 手足を切り上げ、腹を突き刺して殺した。


「楽しいねー。とっても楽しい。ボクに蹂躙される君ら。なかなかにいい絵だと思うね」



「さてと……でもそろそろお話を始めようか。ボクが今から語るのは、ただの夢物語。実際にあったものかもしれないし、なかったかもしれない。けど、ボクはこんな世界を妄想する」


「物語の始まりは、とある村からだ。小さな村で、人口は200人ほど。生活の基盤は主に農耕に頼っていた。そんななんの変哲もない平凡な村に、ある日変化が訪れた。ただの夫婦の間に、強大な力を持った女の子が産まれた。女の子は頭がよく、成長も早く、物事を即座に覚え始めた。まるで無限に入るポケットの中に、物を詰め込むように。けれども、こんな変化は当然この世界では受け入れられなかった。この世界では長女は悪とされ、迫害されていたためだ。こんな馬鹿げた教えに従い両親は子供を『厄災』と呼び、村の外に放り出した。その後の女の子の人生は、実に想像に容易いだろう。生きる術すら知らない彼女は、とにかく1人で生きるためのノウハウを蓄え始めた。1人で、1人で、1人で。何百もの夜を1人で過ごしても、この女の子は生き続けた。そして、親を親と呼んでいた」


 ボクはここで話を区切った。


「おっと、ここで1人ぐらいは殺っとかないと朝まで経っても全員殺し終わらないね」


 また指を弾いて、1人を地上に下ろす。


「で、えっと…どこまで話したんだっけ。…あ、そうだ。その女の子は、親と呼び続けた『人間たち』に、遂に裏切られた。王城に連行され、毎日毎日拷問まがいの経験をした。この経験の元凶には、親と呼んでいた人間と、腐り切った人間の本性があった」


 ボクが話に夢中になり始めると、目の前にいる地上に下ろした人間が逃げようとしていた。だから腰にあるナイフを人間の心臓に突き刺し、ナイフで肉を抉るように抜き差ししながら絶命させた。


「そして物語はここで転機を迎える。その腐り切った人間の本性に飽きた彼女は、段々と壊れていったんだ。何度叫んでも言葉は届かず、どうやっても現状を打破できなくなった彼女には、壊れる以外の選択肢がなかった。けれども、そんな最悪の状況から救ってくれた人がいた。その人は人類の敵とされながらも、人間である彼女に情けをかけ、救ってくれた。その後は、もう簡単だね。彼女は敵地と呼ばれていた場所で成長し、人間の脅威となるほどの強さと権力を持つに至った。……さあ、そしてこの物語は今終わりを迎える。彼女は生まれ育った村に復讐しようと、十数年の時を経て戻ってきたんだ。この物語のフィナーレはどうなるかまだわからない。けれど、もう終わりはすぐ目の前にある」


「さあ!あとは一気に片付けようか!」


 ボクはずっと被っていた兜を脱ぎ捨て、素顔を露わにした。人間の反応なんてものはどうでも良かったけど、唯一『親』の反応だけは気になった。残念ながらここからじゃあまり見えないけど、どうせすぐわかるか。


 ボクは2人を残して、全員の拘束を解いた。と言っても、隔離していた箱を解除しただけだ。空中にある足場が突然なくなったら、当然人間たちは落下してくる。それこそ妖精族とかだったら空を飛んで逃げれたんだろうけど、これは現実で、事実を改変することはできないんだ。


 人間たちが落ちてくる前にボクは地形を操作して、地面から土でできた刃を生み出した。そしてその槍のような刃に人間たちは突き刺さり、何もすることはできず無様に死んでいった。


 ある人は足に、ある人は頭に、ある人は内臓に刃は突き刺さり、串刺しとなっている。そしてボクは刃を片付けることで死体たちを地面に横たわらせ、上を見上げた。


「さ、残りは君ら2人だけだよ。『父さん』『母さん』?」


 ボクは最後の2人の拘束も解除して、地上に下ろしてきた。先ほどとは違って自由落下じゃないけど。


 地上に降りてきた親たちは、かなり顔色が悪そうだった。汗はダラダラで呼吸はヒューヒューと荒い。けどそれと共に、目を丸く見開いてボクの顔をまじまじと見つめている。その瞳には様々な感情が混ざっているようだった。怒り、嫉妬、悲しみ、驚き。どれもボクの肌に突き刺さるようだけど、心にまでは届かなかった。


「どうしたのさ?折角の家族の再会だよ?こんなに立派になって帰ってきた娘を褒めようとは思わないのかな?」


「「……………」」


「そう押し黙らないでよ。妹のことはさぞ可愛がったんだろうね。今では王国十二騎士の1人。この人間という種族を守る12人の盾のうちの1人。うん。なんとも誇らしいね。けどさ、ボクも頑張ったんだよ?ボクも人間を滅ぼそうとしてるとはいえ、魔王軍幹部第7席に入っている。それはちっとも誇らしくないの?おそらくだけど、ボクは今世界で1、2番目に強い存在だよ」


「そんなもの……認められるわけがないだろう!」


「何が褒めてだ!お前みたいな厄災、産まなければ良かった!そうしなければ、俺らは幸せに暮らせたのに………」


「知らないよ、そんなもん。そもそも、お前らの育て方が悪かったんだろうが。馬鹿か?そんな自覚すらないなんて、本当におめでたい頭をしてるよな」


「……」


「それに、お前らだって理解しているはずだ。ボクのおかげで、今のお前らの生活があると。ボクを売り飛ばした時の額は相当なものだったらしいからね。その金で妹を育て上げ、家も新しく建てたんだよな?ボクにも少しは感謝してもいいんじゃないかな」


「それは……」


「でもいいよ、別にボクはお前らなんかに感謝されたいわけではない。ボクは君らを殺すために来たんだ。感謝されるためではない。さ、さっさと遺言を残して死んでくれないかな」


「……なあ、俺らは…お前をどう育てれば良かったんだ…?お前は今こうして俺らを殺そうとしている…。そして、俺らだってこんな状況になったのは俺らのせいだってわかってる…!関係のない村民だってたくさん死なせた…!けど!俺らはお前をどう幸せにすれば良かったんだよ!」


「じゃあ冥土の土産に教えてあげるよ。ボクは『幸せ』を求めたんじゃない。『普通』を求めたんだ。ごく平凡な村娘として過ごしたかった。ただそれだけだ」


「…っ」


「じゃあ、またね。来世はこんな形ではないといいな」


 ボクは優しく親を突き刺し、永眠させた。最後に見たのは、初めて親がボクのために泣いている所だった。



「……ティア。そこにいる?」


「居るよ」


 空から優しく、堕天使の羽を使って地上に舞い降りてきた。


「ボクは…上手く演じれたかな」


「うん。ミアはよくやったよ。あれがベストだった」


「そうかな……」


「そうだよ。じゃ、魔都に帰ろう。ここにいてもミアにはもう何も残らないよ」


「…それもそっか。よし!ずっとぐてぐてしててもボクらしくないしね。早く魔都に帰って魔王様に報告しちゃおう」


「うん。<転移>」



ようやく、復讐が終りましたね……。

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