スキルや称号が仲間を否定する
とあるゲームっぽい異世界へ転生した男の、悲痛な叫び。
「なあ、お前はなんでそんなに強いのに、ソロでしか活動しないんだ?」
「はは……言い方が悪いんだけど、ついてこられる奴がいなくて」
「そうか? オレは確かについて行けないけどさ、お前以外にも化け物みたいに強いのが居るじゃん。 そいつらと組めるだろ?」
「あ〜〜……そっちまで行くと、逆に俺がついて行けなくて」
「いや、お前がこの世で一番t………………ああいや、そっか〜。 丁度良いのが居ないのか」
「そうなんだよ」
「しっかしさ、お前ってソロを徹底してるよな。 誰かと行動するとか、護衛とかは絶対に断るじゃん」
「それは…………ちょっと断るしか無い事情が有ってさ」
「事情かぁ。 だったらまあ、しょうがねーやな。 ……うん、無理言ったなスマン」
「いや、こっちこそすまん」
〜〜〜〜〜〜
何かと気安く話してくれる冒険者仲間を見送った後、溜まりに溜まった大きな溜め息を吐く。
俺はいわゆる典型的な転生者だ。
地球の日本のサラリーマンしてたのが、気が付くと死んでいて、気が付くと異世界にサラリーマンしてた頃より微妙に西洋風な顔立ちと18歳頃の肉体になって立っていた。
ここが異世界だと理解したのは、異世界にしばらくボーっとした後にハッとなって、異世界に立っていると認識した直後だった。
目の前に俗称・ステータスボードが開き、それが俺のステータスだとわかった瞬間に脳へ刻み込まれた情報の濁流からだ。
刻み込まれた情報から理解できたのは、この世界はベタなゲームみたいなステータスボードがある世界で、スキルや称号もある世界だった。
そしてそのステータスボードに最初に載っていた、称号が問題だった。
称号:おひとりさま
この称号が悪かった。
称号の効果だが、単独行動時に能力がプラス補正される。
これだけなら良かったと思うだろう。
悪かったのはその後の効果だ。
誰か他のものと行動したり、恋人や配偶者が居るとマイナス補正。
これだから折角プラス補正されるならと、ソロで動くだろ?
冒険者ギルドに加入して立場と仕事を得て、依頼をこなすだろ?
その時に下っ端冒険者の定番の肉体労働をするだろ?
その時に一緒に働く冒険者がいると、俺のステータスがマイナス補正される。
階級が上がって護衛の仕事を受けると、護衛相手が他のものと行動している判定になってマイナス補正がかかる。
こういう時の定番として、魔物って害獣を仲間にすればソロ判定のままって抜け道を探ったが、それもマイナス補正の判定内だった。
そうして色々諦めてソロ活動ばかりをしていたら、スキルや称号が生える生える。
ワンオペマスター
孤高の〇〇
心の殻
一人暮らし
天才の心凡人は分からじ
お一人様専用〇〇
秘密道具
誰にも絶対内緒だよ
今日もどこかでソロ活動
マスター・オブ・ソロ
伝わらぬ心 他多数
スキルや称号で、ソロじゃないと効果がでないものとか、ソロじゃないとステータスが大幅マイナス補正を食らうものとか。
ワンマンハウスなんて異世界小説おなじみの、野外で完全に安全な状態寝られてクラフト設備も全て完備されている超機能エアコンが設置された超快適な家を喚び出す系統のスキルなんだけど、スキル使用者しか使えないし入れないし干渉できない。
護衛者や同行者が居たら、絶対に使えない。 使ったら非難の目で見られるのは確実。
秘密道具なんて形を自在に変えて決して壊れない全能具だが、他人に見られた瞬間に消滅して二度と使えなくなる、特大デメリット付きの道具を召喚するスキルだ。 これは絶対に手放したくない。
伝わらない心って称号なんて、超常的な天啓じみた鋭い直感を得られてあらゆるものの仕組みや裏事情などを理解できるが、他人にそれを伝えようとすれば口がもつれてうまく喋れなくなる。
これであらゆるスキルを見るだけでマスター出来るのだが、師匠や教師には絶対になれない。
ちなみにこの称号により、指揮スキルなどの他者へ干渉してプラス補正をかけるものは無効化されてしまう。
他にもソロで活動するなら有効なスキルや称号が盛り沢山。
これで他者に協力を求められても、不可能ってなモンで。
もちろんその辺の理由すら口に乗せるとデメリットが発生する称号も持っているので、話せない。
俺のスキルや称号は、トコトンまで
俺をボッチにさせたいらしい。
おのれ! スキルや称号!
そしてそれらを創った神よ!
俺はお前らを絶対に許さない!!
俺だって友達が欲しいんだ!!!
誰かと一緒に行動したかったんだ!!
歴代冒険者で最強とかワンマンアーミーとか一人で全世界を敵に回せる男とか褒められても、全ッッッ然! 嬉しくない!!
前世からそうだったけど、一人は寂しいんだ!!!!
ソロで万能を越えて全能まで育った主人公だが、その末路はボッチだった。
蛇足
ちなみにワンオペマスターの方はソロ時にステータスやスキルや称号効果を超強化するが、他者と行動時に所有者のステータスが同行者と同じステータスとスキルになる。
これはワンオペ中の行動をツーオペ時にもしてしまい、相方の作業終了待ちなんかが起きて待機しないといけない時間ができるのを考えた効果。
マスターオブソロは所有者のステータスやスキルや称号効果を超強化するが、同行者のステータスやスキル効果等を超低下させる称号。
「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」とやる気を無くす味方の図を表現する効果。