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第一の殺人3

読んで下さると、小躍りして喜びます。

「ここが殺害現場だ」

 岡崎君は、ホテルの奥にある会議室のような部屋のドアを開けた。岡崎君に続き私達二人は現場に足を踏み入れる。


 部屋の中央には白くて四角い机が四台纏めて配置してある。パイプ椅子も四脚置いてあり、その中の一脚は机から少し位置が離れていた。この椅子に被害者が座っていたのだろう。岡崎君は、手帳を見ながら私達に説明を始めた。


「殺害されたのは四谷耕助さん五十一歳。劇団『シューティングスター』の主宰。昨夜このホテルで行われたイベントに参加していた劇団だな」

「ええっ、あの劇団の方だったの!?」

 私が驚いて言うと、花音さんが補足した。

「四谷さんと言えば、昨夜のイベントではフィリップ役でしたね。脚本も担当していたはずです」

「詳しいんですね。木下さんも昨日の劇を見たんですか?」

 岡崎君が聞くと、花音さんは無言で頷いた。岡崎君は、また手帳に目を落として説明を続ける。


「第一発見者は『シューティングスター』の俳優、大野比呂さん。今朝七時頃、楽屋として使われていたこの部屋の荷物を整理しようとして部屋に入ったところ、机に突っ伏して亡くなっている四谷さんを発見したそうだ。死因は、スカーフで首を絞められた事による窒息。死亡推定時刻は昨日の午後十一時から今朝の三時頃」

 ご遺体はもう運ばれているが、私はパンフレットに載っていた四谷さんの顔を思い浮かべた。大らかそうな、眼鏡を掛けた劇団のリーダー。彼は何故殺されたのだろうか。


「この後、別の会議室で事情聴取をする事になっているが、お前達も立ち会うだろ?」

 岡崎君に聞かれ、私達は頷いた。


 殺害現場の側にある会議室で、関係者一人ずつ事情聴取をする事になった。最初に部屋に入って来たのは、第一発見者の大野比呂。二十八歳の彼は、サラサラの黒髪を靡かせたイケメンだった。昨夜の劇ではサム役だったと記憶している。


「昨夜の十一時から今朝の三時頃まで、どこで何をしていらっしゃいましたか?」

 岡崎君の問いに、大野さんは頭を掻きながら答えた。

「このホテルの自室で寝ていましたよ。ちなみに、俺が部屋にいた事を証明してくれる人は誰もいません」

「そうですか……四谷さんが殺害される動機に心当たりは?」

「うーん……こんな事言っていいのか分からないけど、捜査だしなあ……。団長、既婚者なのに砂川さんを愛人にしてるって噂があるんですよ。それが関係してるんじゃないですかね」

 砂川さんというと、『シューティングスター』の看板女優、砂川ミコか。次は彼女の話を聞いた方が良さそうだ。


 大野さんが部屋を後にすると、数分もしない内に砂川ミコが部屋に入って来た。彼女は二十五歳。フワフワのセミロングの髪が良く似合う。劇ではミシェル役だった彼女は、アリバイを聞かれると考え込むようにして言った。

「その時間は、自分の部屋で寝ていましたけど……あ、一度ホテルから出てコンビニに行きました。急に甘い物が食べたくなって」

 コンビニの防犯カメラでその証言が裏付けられたとしても、死亡推定時刻には四時間の幅があるから潔白の証明にはならない。


「では、四谷さんが殺害される動機に心当たりは?」

「……うーん、思い当たらないです……」

 砂川さんは、手を頬に当てながら答えた。

「あなたと四谷さんは、ただの団長と劇団員の関係……という事でよろしいですか?」

「それってどういう意味……ああ、そういう事ですか」

 岡崎君の問いに、砂川さんは納得した様子で頷いた。

「私が団長の愛人だという噂があるのは知っています。でも、そんなの嘘です。確かに私は団長に言い寄られていましたが、上手くかわしていました」

「そうですか……」

 岡崎君はそれからいくつか質問すると、砂川さんを解放した。

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