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乙女ゲームの悪役魔女、不遇王子を応援してたら溺愛されました!~黒幕はメイドです~  作者: 朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます!
1章、王太子は悪です

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14、2枚のカードとダンジョン&ダンジョン

 『五果(ごか)三枝(よんえ)』……5月3日。夜20時。


 魔女家に帰宅してダイニングルームに行くと、魔女家当主のキルケ様が上座にいた。

 

 当主として多忙を極めるキルケ様と食事を一緒にする機会は、これまではあまりなかった。

 キルケ様は魔女帽子をかぶったまま、私は魔女帽子を脱いで。端と端が離れた長いテーブルのあちらとこちら、親子で向かい合って夕食を開始する。

 

「マリンベリー。広中街に魔物が出たんだって?」


 緊張気味にご馳走を食べていると、キルケ様が尋ねてくる。

 ああ、聞きたいことがあったんだ。

 夕食を一緒にする理由がわかって、ホッとした。

 

 理由がわからないと不安になる。理由がわかると安心する。

 わからないとモヤモヤする。わかるとスッキリする。

 人間って、そんな生き物だよね。


「はい、キルケ様。パーニス殿下が倒してくださったらしいです」

「街中に魔物が出没するようになったのは物騒だね。20年前には街中には出なかったのだけど。……怪我はしなかったのかい」

「パーニス殿下は無傷でした。お強いですから」

「ボクはパーニス殿下の心配なんてしてないよ」

 

 キルケ様はそう言ってフォークとナイフを置き、ふわっと空中を飛んで私の傍に来た。


「キルケ様?」

 

 キルケ様の紺色の目が上から私を見下ろしてくる。なんだろう。


「怪我はなさそうだね、マリンベリー」

「あっ。な、ないです」

「ん。よかったよ。魔物が出て怖かったろう。明日は魔法学校を休んでもいいよ」

「いえ。学校を休むほどじゃないです。もうすぐ狩猟大会があって、明日はグループ分けも発表されるので」

「ボクの娘は真面目だね」


 キルケ様は口の端を持ち上げ、私の頭をぽんぽんと叩いた。


「キミはボクの娘なんだ。何かあったら隠さず言いなさい」

「……っ、ありがとうございます、キルケ様……!」

 

 至近距離で強気に微笑むキルケ様は、とても可愛かった。

 ありがとう乙女ゲーム。強気な保護者ショタ、最高。

 

 私は口元を押えて悶絶した。


 部屋に戻ると、イージス殿下とパーニス殿下から見舞いの花が届いていた。

 

 イージス殿下からは、海岸に自生するアルメリアのブーケ。ピンク色の(まり)みたいに群れ咲いていて、可愛い。

 花言葉は「同情」「思いやり」「共感」かな。

 

 パーニス殿下からは、釣り鐘状の花が寄り添う姿がピュアな印象の赤いカランコエのブーケ。

 花言葉は「あなたを守る」「たくさんの小さな思い出」「おおらかな心」かな。


 メッセージカードも届いている。2枚。


「申し訳ございません、お嬢様」


 寝る前のホットミルクをテーブルに置いて、赤毛のメイド、アンナが頭を下げた。


「どうしたの、アンナ?」

「そちらのカード、名前が書いていなくて……どちらのカードがどちらの殿下からか、わからなくなってしまったのです」

「なんだ、そんなこと? 筆跡でわかるじゃない……」


 カードを見ると、2人の殿下は、筆跡が似ていた。


 1枚目には、『君ともっと話したい』。

 2枚目には、『君にもっと意識されたい』。


「……わからないわ」


 わからないものは仕方ない。

 私は考えるのをやめて、いただいたブーケを愛でた。


 お花はどちらも可愛くて、いい匂いがした。

 2人揃ってお見舞いをくれた。お見舞いは嬉しい。

 

 気になることはあるけど、今は……それでいいじゃない?

 

 

   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆


 ――翌日。

 

 『五果(ごか)四枝(よんえ)』……5月4日。早朝6時。


「今日もがんばろう、クロヴィス」

「はいっ、パーニス殿下!」

 

 箒で空を飛び、見下ろす地上でパーニス殿下とクロヴィスが走っている。

 

 黒狼のセバスチャンと耳長猫のルビィも一緒だ。

 毎日の走り仲間として、絆を育んでいただこう。


「ぴぃ、ぴぴぴ」


 ニコニコと見守りながら上空を飛んでいると、鳥の群れと一緒になった。

 鳥の仲間に入れてもらえたみたいで、なんだか嬉しい。 


 ――8時、登校時間。


「広中街の魔物出没事件の話、聞いた?」

「やっぱり、魔王の生まれ変わりが……」

「ダメ王子が生まれ変わりって噂あるよな」

 

 パーニス殿下には、不安をぶつけるような声や視線が注がれた。

 同時に、「魔物討伐したと聞きました」と尊崇や憧憬の眼差しで声をかけてくる生徒もいる。


 もちろん、事件以外のことでソワソワしている生徒たちもいっぱいだ。

 

「狩猟大会のグループが決まるぞ。楽しみだなあ」


 狩猟大会は、一般的には中世ヨーロッパ貴族のピクニックがイメージされやすい。

 例えば、馬に乗った騎士たちがウサギや狼を狩り、狩った数を競うとか。

 令嬢たちが勝利を願って騎士にリボンをプレゼントしたりとか。


 でも、この世界……『カラクリ大樹の追憶と闇王子』という乙女ゲームでは、もっとゲームっぽさのあるイベントになっていた。


 まず、狩猟大会は魔法学校の行事だ。

 生徒たちがグループをつくり、競うのである。


 ゲームをしていた時のイベント名は、狩猟大会『ダンジョン&ダンジョン』! 

 ……ダンジョン攻略イベントだ。


 狩猟大会『ダンジョン&ダンジョン』は、『イリュージョンスカイ・ダンジョン』と『アクアリウム・シーダンジョン』という2種類のダンジョン攻略でポイントを競う大会だ。

 乙女ゲームは意外と冒険したり戦ったりするのである。

 守られるだけのヒロインちゃんも王道なんだけど、意外と戦ったりするヒロインちゃんも多い。

 格好良い&可愛い女の子なヒロインちゃんは、人気だ。私も大好きで、憧れた。

 

 イベントの会場は、海の近く。

 宿泊施設が用意されていて、1泊2日のワクワクイベントだ。

 

 魔法学校には寮もあるのだけど、王都住まいの貴族の子女たちは多くが自宅から通っている。

 そこで、彼らの自主自立と他者への許容性の成長を促すため、ちょっと親元から離して同級生と寝泊りさせよう、というコンセプトらしい。

 魔法学校は真面目な教育機関なのである。


 悪役令嬢マリンベリーは、イベントではヒロインちゃんと絶対に別グループになる。

 ライバルキャラだからだ。


 教室に行くと、グループが書かれたカードが渡された。

 

「私のグループは……」

  

 私のグループは、イージス殿下と一緒だった。

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