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籠中ノ守リビト  作者: カナル
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第8話_ミトバフ参

ミトバフ過去編 最終弾です。

 ハーヴァの葬儀を行い。そして埋葬した。

このハベリームでも火葬が主流のようだ。


 ミトバフは自分が生まれた村を思い出す

あの村も火葬だったが父や母を弔う事はできなかった。

止む終えなかったとは言え親不孝な事をしたと思う。



 ハーヴァの喪もあけて、以前と同じ生活に

少しづつ戻っていくがやはり違う。

ガドールは理解をしているが、

ティクバは母がもう居ない事を理解できないらしい。


 ティクバやアデナがくずる度にサヴタやミトバフで慰め、あやす。

やはりこの年頃の子供にとって母親が急に居なくなるのは

耐えられない出来事なのだろう。

理解していると言ってもきっとガドールだって辛いはずだ。


 母にはなれないけど、母と同じように

この子等を守ろう。約束したのだから――――――ミトバフはそう誓う。


 そして辛いのは子供達だけではない。

近頃、アーヴの酒量が増えた、宴席も深酒して帰って来る事も多くなった。


 ミトバフは呑む時のアーヴに付き合うようになった。

とりとめない話しながら、酌をし合う。

盃を飲み干すアーヴの顔は苦々しい、甘い酒のはずなのに。

ミトバフは誓う

このヒトを支えよう。約束したのだから――――――。


 それから二年ほど経ち、ミトバフにまた縁談の話しが持ち上がる。

シャムラールの家も落ち着いてきたのではと言う周りの判断だった。


 郷でのミトバフは評判は良く、ハベリームの若手武官、

さらには隣の村の豪商までも名乗りを上げる。

人格も将来性も申し分ない人選のはずだった。

 

―――――― しかしミトバフは断った。


 老いた母にまだ小さい子供、どんなに武官として

優秀なアーヴでも耐えられないとミトバフは思った。

ミトバフ誓う

このヒトを支えなくては。約束したのだから――――――。


そしてさらに一年経った。

冬のとても寒い日、アーヴの母サヴタもこの世から旅立った。

あまりにも急な別れだった、別れの言葉を誰とも交わすことは無かった。


 サヴタの葬儀を行い。そして埋葬した。

この頃にはティクバも祖母が居なくなった事を理解していた。

ガドールとティクバは大粒の涙を流しながら鼻をすする。

アデナは何故、祖母が居ないのかと泣きじゃくる。


 アーヴは力ない笑いを浮かべながらアデナに

母と同じ所へ行ったのだと何度も説明していた。


 サヴタを埋葬した日の夜に

家の軒先で一人でアーヴな酒を呑んでいた

春はまだ遠く外で呑むにはまだ早い。


窘めようかと近づくと

アーヴはじっと大粒の涙を流していた。


時折、嗚咽で動くその肩にミトバフはそっと外套をかける。

ミトバフは誓う

この人が、そして家族が壊れてしまわないように”私”が守らなくては――――――。


 サヴタの喪もあけて

悲しみから平静を取り戻していくシャムラール家


 もともと仕事として世話焼いてきたミトバフは

輪をかけて世話を焼くようになった。


それから、ゆっくりと時は流れ数年経った。


 ある日の事

修練として皇都で出たガドールが

剣闘祭で優勝したと便りが届いた。


 その日の夕餉はとても賑やかだった

アーヴ上機嫌で酒を呑む。

ティクバとアデナは兄が誇らしいようで

兄からの便りを見ながら嬉しそうだ。


 夕餉を終えて家族が床に就く頃、

ミトバフは一人でハーヴァとサヴタが眠る墓前に立った。

そして祈りながらガドールの偉業とこれからの事を報告する。



「奥さま……約束通り、今まで奥さまの代りに見守ってきました。

 ……………………でも私も欲張りな女になったみたいです………………

 これからは奥さまの代りではなく”私”として

 旦那様と子供たちを守っていきたいと思います。」


「いつかそちらへ行った時、

子供達や旦那様の話しを自慢しちゃいますけど許してくださいね」


 ハーヴァの最後の願い。それはいつの間にかミトバフ自自身の願いになっていた。

今までは託されたから守ってきた、でもこれからは自分が守りたいから守るのだ。

何故ならミトバフは”欲張りな女”になってしまったのだから。


 その決意表明ともとれる言葉を呟く

”欲張りな女”の手には銀の簪が握られていた。


いつも見ていただいて有難うございます

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