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なろうラジオ大賞応募作品

雪山別荘で暖炉気分

作者: 牧村 咲希

 紳士は暖炉を満足そうに眺めた。

 パチパチと音を立ててゆらぐ炎に心が休まる。

 しかしこの暖炉は本物ではない。薪が燃える音も炎も、よく出来た作りものだ。

 紳士の住む地域は雪が降らない。本物の暖炉など必要としなかった。

 だからこそ、雪山別荘の暖炉に憧れを抱いていたのだ。

 暖炉以外もだ。壁に掛けた鹿の頭の剥製も雰囲気を味わうだけの作り物だ。


「願いがかなったけど、しょせん雰囲気だけだもんなあ」

 カウチソファーにもたれてぼやくと、隣にいる妻が笑った。

「良いじゃありませんか。雰囲気だけでも。私は幸せだわ。あの子たちも喜んでいるし」

 暖炉前に敷いたラグの上で、腹ばいに寝そべった娘が愛犬と遊んでいる。

「そうだな。幸せだな……」

 これが本物なら。

 紳士はかけていたゴーグルを外した。そのとたん妻も娘も愛犬も消えた。

 殺風景なマンションの一室で、カウチソファーに座る紳士だけがいた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 全てが雰囲気、全てが妄想....されど、思いつく限りのことはやったであろうこの紳士に、私は拍手をしたいと思った。 そこに、尊厳はあったということだ....By俺
[良い点] まさかそういう結末とはΣ(゜Д゜) 現代人の寂しさがよく描かれた社会派小説だと思いました(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾
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