ようこそ最初の村へ。5人の魔王を倒すべく集められた戦士... え?えっと...?勇者の「あああああ」、僧侶の「いいいいい」、魔法使いの「ううううう」武闘家の「えええええ」戦士の「おおおおお」...?
「おお!あなた方が魔王を打ち倒すべく選ばれた者達!!」
とある村で勇者を待っていたその賢者は魔王討伐にやってきた5人の者達を歓迎する。この序盤の村ではこうやって現れた勇者を賢者が歓迎するのはしきたりになっている。そしてな名前を確認するや否や、顔をしかめてしまった。
「『あああああ』...?」
「はい!」
「『あああああ』というのですか」
「はい!!」
その凛々しい顔つきの青年は名前を呼ばれて返事をした。彼は特におかしいとは思っていないようだ。顔つきも良く俗に言うイケメンという奴だ。そんな彼の名前が「あああああ」なのだ。その者達5人の名前が奇妙だったからだ。その5人の戦士は、勇者の「あああああ」、僧侶の「いいいいい」、魔法使いの「ううううう」武闘家の「えええええ」戦士の「おおおおお」と奇妙な名前になっている。
「えっと...ああ、あなたには魔王を倒す使命がありますね」
「はい!」
少し困惑しながらも勇者「あああああ」達を見ていつものテンプレじみたセリフを言う。
「では行ってきなさい!!世界の安寧のために!!」
「はいっ!!」
「『あああああ』サイコー!!」
「『いいいいい』様こっちむいてぇー!」
村人の声援を受けながら5人は旅立っていった。5人が完全に見えなくなると、村人達が何やらコソコソととても小さな声で話をし始めた。それは彼らの名前のことだった。
「『あああああ』」って何??なんて変な名前だの?」
「ああ、俺もおかしいとは思っていたよ。だって『あああああ』『いいいいい』『うううううう』ってなんだよ。ものぐさな奴がスティック下にさげてボタン5回連打したみたいな名前..」
「大丈夫なのかねえ?」
「うーむ...」
その心配は的中した。その勇者「あああああ」一行が途中で全滅したという情報が入ってきた。まあ強さに名前は関係ないのだが、心のどこかで「ダメなんじゃないか」という感じがしていた。また先程と同じように勇者が来るのを待って向かい入れる必要がある。勇者はやられるとどこかに現れる仕組みになっていて、幸いにもやられても大丈夫なのだ。今度の勇者はちゃんとしているだろうと期待を寄せて勇者をまった。
「勇者『かかかかか』です!」
「はあ...」
またこのシリーズかと少し賢者は落胆した。人の名前にシリーズなどと言っては失礼なのだがまたそのパターンが出てきたのだ。勇者「かかかかか」武闘家「ききききき」...と言ったようにまたそんな奇妙な名前を全員持っているのだ。
「では勇者『たたたたた』一行よ。勇者を倒すのです」
「はい!」
「あなた方は魔王を倒すべく集められた5人なのです」
「はい!!魔王を倒してきます!!」
そう意気揚々と言う勇者含める5人を見送りながら賢者ははあ...と息をついた。この者達がやられてしまったらまた奇妙な名前の者達が来るのだろう。
しばらくしてうまくいかなかったと言う情報が入ってきて、勇者を待つことにした。賢者ももうすでにパターンが見えていた。次くる勇者達の名前は....。賢者がそう思っているとまた新たな勇者一行が現れる。そしてその名前は...
「さささささです」
「やっぱり」
「やっぱりとは?」
「いえ何でもありません」
予想通りすぎて賢者はつい、そう口に出てしまう。「さささささ」「ししししし」「すすすすす」「せせせせせ」「そそそそそ」ともう全てが予想通りの名前だったのだ。少し笑いを堪えながら賢者はいつもの言葉を口にした。
「あなたは勇者を倒す...」
「やっと...やっとここまできた...」
賢者はそう言いながらフーッ、と息を吐いた。今、勇者「わわわわわ」が倒されたという報告が上がったのだ。これで全員だ。「あああああ」から始まり「かかかかか」一行、「さささささ」一行...とやってきてやっとここまできたのだ。この辺になるともうすでにネタ切れなのか勇者「わわわわわ」魔法使い「ゐゐゐゐゐ」武闘家「ををををを」僧侶「ゑゑゑゑゑ」戦士「んんんんんん」ともはや5人ですらない上によくわからないことになっている。
「もうネタ切れだろう!!」
そうに違いないと賢者は次の勇者一行の名前を期待していた。次こそちゃんとした名前だろう...そのような期待を込めて。ひらがなも「わ」「を」「ん」までくればもう終わりなのだからそう思うのが普通だろう。
「お、きた!」
賢者は次に来る5人を見てそう呟いた。今度こそ...今度こそ...と名前を期待しながら待っていた。
「ようこそ勇者よ。勇者の名前は...ん?『AAAAA』...?今度はそう言うパターンか...」
賢者は小さくそう呟きながらため息をついた。