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冷え性で反抗期の女子中学生が夏なのに親から長袖の制服を着せられてイライラする話

作者: SKY

小説家になろう初投稿です。


以前ピクシブで投下した作品をベースに大幅に加筆した物です


先人の方々みたいにボタンの表現全然出来なかったです。


私は夏が嫌いだ。



正確には【夏の涼しい日の中学】が嫌いだ。



元々暑くない他の季節とか、夏でも普通に一日中暑い日とか、中学校にいない時は問題ない。



とにかく天気が悪かったり季節の変わり目とかで、寒めの夏の中学校は大嫌いだ。





【中学1年生 6月下旬】



(あーもうっイライラする!)

中学1年生の夏の日、私【明美】は憂鬱な中学校生活を送っていた。


そう聞くといじめとか勉強の事とかを想像するだろうけど、友達関係は良好で成績も悪くない。


イライラの理由は……他のクラスメイトは全員半袖開襟シャツなのに、私一人だけ冷え性体質なせいで夏服期間なのに【長袖カッターシャツ】をお母さんから着せられてるからだ。


少し前にかかった大きめの病気の後遺症で【上半身限定の変則な冷え性になってる】みたいで、今ちゃんと暖かい格好して対応するかどうかで

今度冷え性が治るか、それとも逆にもっと重い症状が出てそれが一生続くかが決まるらしかった。


それを聞いたお母さんは私に「これからあんたには暑い時以外は夏でも必ず長袖を着る習慣をつけさせる」っと宣告してきた。

中学生になってまだ数ヶ月の私にはクラスで一人だけみんなと違う格好するのは到底受け入れられる事じゃなくて

「病気になっても私の勝手だ!」「寒くても友達と一緒がいい!」って必死に抵抗したけど無駄だった。


そして翌朝、夏なのに涼しい日だったから早速長袖のカッターシャツを着せられてしまった。

首元のボタンまでキッチリ留めさせられて、手首のボタンも2段階あるボタンのうちのキツくしまって手首の隙間が少なくなる方のボタンで留めさせられてしまって

「暑い時は袖捲りしていいけど、暑くない時はその手首と首元のボタンはいつも必ず留めてなさい!」と言いつけられた。





「はぁ……」

無理して半袖を着てた頃は、何ていうか微妙に涼しい外気が私の露出した首元や腕に長時間当たり続けて段々寒くなってきて

それが少しずつ全身に伝っていって鳥肌が立って震えてた。


だけどお母さんに長袖のカッターシャツを着せらだしてからそういう不調は嘘みたいに無くなった。

手首と首元のボタンもキッチリ留めて隙間が無い長袖カッターシャツだと、天敵の外気に腕や首元やうなじが一切晒されなくなってそれが私の体にはかなり相性がいいみたいだ。

考えてみれば今よりもっと気温の低い5月の終わりとかこの格好で平気だったんだんだから当然か。


でも私はそんな長袖のカッターシャツが嫌で嫌でたまらない。

今すぐみんなと同じ半袖に着替えたくてしょうがない。


……教室を見渡すと私以外のクラスメイトは全員半袖の夏服で涼しげだ。

半袖の夏服は第一ボタンが胸元の低い位置にあるから一番上のボタンを留めても鎖骨とかが普通に見える位首元は開いてて開放感がある。

私の学校はまだ教室にエアコンが無いからエアコン対策する必要もないから冷え性じゃないみんなはこの格好で大丈夫なんだと思う。



みんなの涼しげな服装を見た後今度は机の上にある自分の両腕を見下ろすと、そこにあった私の腕はみんなみたいに二の腕の途中から露出なんかしてなくて手首までしっかりと覆われている。

そしてキツい方で留めてる手首のボタンのせいで袖口は完全に私の手首に固定されていて、このボタンが外れない限り袖が捲れる事は絶対に無い。


今度はその長袖に覆われた腕を首元に持っていっら【カッターシャツの固い生地の感触、襟の感触、しっかりと閉じられた首元のボタンの感触】がして

嫌でも今の自分は首元もみんなと違ってキッチリカッターシャツに覆われてるんだと実感してしまう。


私の学校の長袖シャツは第一ボタンが首元の高い位置にあるカッターシャツと決まっているから、当然一番上のボタンをまで留めたカッターシャツは

開襟のシャツと比べて首周りの露出はまるで違う。

しかも何かやけにサイズがピッタリで固い襟が私の首に360度しっかりフィットしていて隙間は全く無くてキッチリしている。

しかもこの学校の制服にはリボンとかネクタイは無いから「ピチッ」とした第一ボタンがモロに露出していて更に目立ってしまう気がする。



クラスで自分ひとりだけこんな格好だと凄く悪目立ちしてる気がして周りの目が凄く気になる。

見た感じみんな私の長袖を全く気にしてないみたいだけど、内心どう思われているのか気が気じゃない。


お高くとまってるお嬢様とか? 日焼け気にしすぎなぶりっ子とか? 

でもやっぱり、前に病気になったのみんな知ってるし病弱でひ弱な子って思われてるのかな…?

っていうか実際それ正解で夏でも中途半端な暑さの日は長袖着てないと体調悪くなるし……

何だか自分が劣ってるみたいで凄く嫌だ。

まるでこの長袖がダメな子の烙印みたいに感じる。


私服の時だったらどうせみんな服装バラバラなんだし長袖でもそんなに嫌じゃないけどみんな同じ格好をする制服の時は私一人仲間はずれの格好は嫌だ。



この手首とボタンと首元のボタンが手枷と首輪みたいに感じる。

お母さんに手枷を首輪をかけられて学校に行かされてる様な気分だ。

こんな服装嫌だ!

恥ずかしい!

こんな格好をさせるお母さんがムカつく!

せめてこの手首のボタンを外して腕まくりして、首元のボタンも外したいよ!

だけどお母さんに約束させられたから暑くもないのにこの手首と首元のボタンを外すわけにはいかない!


……私はボタンがかなり気になって気づけば手首と首元の部分をずっと触ってるけど、あくまで触るだけしか出来ないで外す事は出来ないのが歯痒かった。







【中学1年生 7月上旬】

7月に入った。

だけど今年は中々完全な夏は来ないで相変わらず私は毎日しっかり長袖を着せられてる。


……相変わらず周りの目が気になってしかたないけどお昼前とかになると大分気楽になる事が多くなった。

気温が本格的に高くなると袖を捲って首元のボタンも外せるからだ。

暑くなったら私は長袖じゃなくても寒さで震える心配はないから着崩す事ができる。

半袖ブラウスを着てるみんなと、長袖カッターシャツを着崩した私とじゃ微妙に違いはあるけどそれでも大分気楽だ。

っていうか長袖ブラウスを着崩して着てる子は他のクラスには少し居るし。



……そして逆に最悪な時もある。

途中から天気が悪くなったりして今まで暑かったのがそうでもなくなった時だ。

お母さんとの約束があるから、肌寒くなるより前の段階の【これなら長袖でもそこまで長袖でも暑くなさそう】っていう段階ですぐ捲ってた袖を下ろして手首のボタンを留めて

首元のボタンもキチンと留めなくちゃいけない。


私はこれの作業が凄く嫌だ。

周りのみんなと違う格好になっていく恥ずかしさ。

この服装にならないと体調崩してしまう可能性あるっていうのを嫌でも自覚させられる屈辱。


せっかくみんなと同じ様な服装になれたのに後戻りなんて嫌だ!

……また暑くなるまではこのボタンは外す事は出来ない。

こんな約束をさせるお母さんも嫌だけど、長袖の暖かい感覚に思わずホッとしてしまう自分も嫌だ。


そういえば私ってお母さんに長袖カッターシャツを着せられ始めてから【寒くて鳥肌立ったりする】どころか【ちょっと肌寒いな】と感じた事すら全く無い様な。

……なんだろう? これだと一人だけこの季節では目立つ格好をさせるお母さんが正しいみたいになってしまうじゃない!

そんなわけないのに! イライラする!




【中学1年生 7月中旬】

7月も10日を越えたあたりから急に完全な真夏になった。

今年の夏は涼しい日はほとんど無くて連日猛暑だろうってニュースで言ってる。

こういう日は流石にお母さんも半袖の開襟ブラウスを用意してくれる。

やっぱりみんなと全く同じ服装だと気分が良い。

もう少ししたら夏休みだし最高!




……こうして私は夏休みを満喫して……2学期が始まった。





【中学1年生 9月上旬】

あーもうっ最悪!

夏休みが終わって9月にもなって少ししたらそんなに暑くない日が来たんだけど、その瞬間お母さんにまた長袖のカッターシャツを着せられた!

学校に行くとクラスメイトはまだ全員半袖だ。

昨日まで私も毎日半袖でいたから余計に早すぎる衣替みたいになってこの長袖が目立ってしまう。

久しぶりの手首と首元のボタンの感覚が凄く気になる。


今私の首にはカッターシャツの固い襟がピッタリと巻き付いててその正面にキチッと閉じられたボタンがある。

そのボタンは鏡でも使わないと見れないけど、常に感じる襟の固くもフィットした感触のせいで嫌でも私の首元は

みんなみたいな開放感ある状態じゃなくてキッチリと露出を許さない状態になってるのが分かる。


長袖も嫌だけどこの首元のボタンも嫌だ!

せめて制服がリボンあればボタンを隠せるのに!

自分じゃ普段は見えないから分からないけどみんなから見たらこの首元ってどんな風に見えてるのか気になるけど怖くて知りたくない。

思わず自由を求めて少し体をブンブン回したけどこの当然この首元のボタンは外れる事は無いし、仮に外れたとしても暑くない以上そのボタンはしっかりとはめ直さないといけない。


袖も袖で捲りたくてしょうがない!

首元のボタンと違って手首のボタンは自分の視界に入れることが出来て、目の前にあるこのボタンを取りたくてしょうがない!

でもどんなに捲りたくてもそんなに暑くない以上このボタンは嵌めてなくちゃいけない。

やっぱりこの言いつけはちょっとやりすぎだよ。

早くお昼になって暑くなって!



【中学1年生 9月下旬】

ふっふっふ。

もう大分秋が近くなって気温下がってきたからクラスではもう私以外にも何人かが長袖カッターシャツだ。

これで私はもうクラスで一人だけ違う格好じゃない!

みんなにとっても肌寒いなら私にとってはもっと肌寒いけど長袖を堂々と着れるから何の問題もない。


……最近気付いたんだけど私の上半身の冷え性って【素肌を露出していると】かなり悪影響らしいけど

逆に言うとカッターシャツ1枚で覆ってさえいればそれだけで他のみんなと大体一緒位には平気になるみたいだ。

要するに私は【半袖ではなくて長袖を着てないと身体が冷えるボーダーライン】はみんなよりかなり低いけど

【カッターシャツの上から更にセーターとかを着てないと寒く感じるボーダーライン】とかはみんなと少ししか変わらないみたい。

これから寒くなる季節だし私はもう大丈夫だ!これからみんなとずっと同じ服装が出来る!

……何だか寒い季節ほど影響が出ない冷え性っていうのも変な気がするけど。





……こうして本格的に寒くなっていって私の精神的に辛い時期は終わりを迎えた。

厚着が必要になるボーダーラインはみんなと少ししか変わらないって言ったけど、逆に言えばそこそこは違うから

セーターやタイツを着用するタイミングもクラスの中では結構早い方だった。

だけど私一人だけが飛び抜けて早いわけではなかったから別にいっかっていう感じ。


……そして私の憂鬱な日々は終わりを告げて私は2年生に進級した。





【中学2年生 5月】

最近クラスメイトの大半の人がカッターシャツの首元のボタンを留めないで着ている。

1年生の頃は中学入って最初の年だからみんな緊張してたけどそれも薄まって着崩すの子が増えている。

私の場合はどうかな……?

きちんと長袖でいるなら第一ボタンを外すだけで体調崩す何て事は流石に無いと思うんだけど……

でも首元とかうなじがスースーするのは確かだし。

まぁいっか、このままキチンと留めてよっと。





【中学2年生 6月下旬】


……はぁ……去年と同じだ。

大分暑くなってまたまたクラスメイトは私以外全員が半袖の開襟シャツに衣替えした。

だけど相変わらず私一人だけは長袖カッターシャツのままで、暑い時以外は捲ったりしないで手首と首元のボタンまでキッチリ留めてる。

「1年経ったしもう半袖で平気だよ!」

って必死にお母さんに言ったけど、お母さんは許してくれない。


去年散々経験したから慣れてはいるけど、クラス替えして私の事知らない子とかからは「なんでまだ長袖なんだろう?」って思われているのかな?


あーもうっ!

また去年みたいな事を秋まで繰り返すの!?

もうこんなの繰り返すのやだよ!



【中学2年生 7月中旬】

去年の今頃は真夏前の気温が続いてた気がするけど、今年はその日その日で暑さが全然違うみたいだ。

天気が悪くてかなり涼しめの日もあれば真夏並みに暑い日もある。


お母さんは小まめに天気を確認してるみたいで、真夏日の時は半袖の開襟ブラウスを用意してくれるけど

少しでも私にとって肌寒そうな日は相変わらず長袖カッターシャツを着せて来る。

私はイライラしながら着るか、その前に喧嘩するかだ。


そしてこの時期でも長袖を着る事に体質的にも慣れて、昔だったら長袖だと暑く感じた捲ってた気温が今はそこまで暑く感じなかったりする。

当然暑く感じないのならこの長袖カッターシャツを着崩す訳にはいかない。

だから自然とこの長袖カッターシャツを着崩さずしっかり手首と首元のボタンを留めて着ている時間は長くなっていった。


凄く屈辱的……だけど、何だかんだで今年もお母さんにこんな服装をさせられ初めて2年目と言うのもあって【結構慣れて来ている】自分がいて、それも凄く嫌だ。


まだ中学生になったばかりで学校生活にも制服にも慣れてなかった1年前は一人長袖なのが恥ずかしくてしょうがなかった。

正直今も恥ずかしいけど、そもそもクラスのみんなはこの位の服装の違いなんて気にしてないというのも薄々勘付いてその恥ずかしさは大分薄れてきている。




それよりも今の私はお母さんの言いなりになってるという事の方がるのが悔しくてしょうがない。

去年の今頃はまだ小学校卒業して数ヶ月だったけど、中学生になって1年以上経った今は反抗出来るなら少しでも反抗してやりたいっていう気持ちがどんどん強くなっていく。


あーもうっ!

長袖カッターシャツで確かに体は助かってるかもしれないけど嫌な思いもしてるんだよ!

このままじゃ私は全部お母さんの言いなりじゃん!

もうこの事でお母さんのいい様にされたくない!




……慣れていって日を追うごとにクラスメイトの目とかは気にならなくなって【恥ずかしさ】が薄れていく代わりに

【親の管理下でコントロールされている事への怒り】が沸き上がってくる。



お母さんが【長袖】と決めたら、どれだけ喧嘩しても1日も欠かす事無くなく最終的に必ず長袖を着せられてる毎日。

ドンドンドス黒い感情が湧き上がって来る………


気づけば1学期が終わって夏休みに入ってた。

上級生の2年生にもなってお母さんにこんな事をされ続けた1学期………

夏休みの間、不意に今までの事を振り返って考えれば考えるほどドス黒い感情は私を飲み込んでいって………私は我慢の限界が来た。






【中学2年生 8月下旬】

今日は夏休み最後の日で明日は2学期の始業式だ。

昔はどこも8月31日まで夏休みだったらしいけど、今は他の休みを多くする代わりに8月の後半で学校が始まる。


本来8月といえば普通は夏真っ盛りだけど、天気予報調べたら明日は曇りで気温は低めみたい。


他の子だったら半袖着てても「今日はそんな暑くない方で良かったね」で終わるんだろうけど、冷え性の私には微妙な気温かもしれない。

多分お母さんも天気予報見てそれを知って、明日の朝になったら長袖のカッターシャツを着せてくる可能性大だ。


……確かに明日は半袖だと寒いかもしれないけど、流石にちょっとやりすぎだよ。

8月て今は1年で1番暑い時期なんだよ。


もうお母さんのいいなりで長袖を着せられる事はさせない! 

悪いけど前夜の今のうちにそんな事出来ない様にしてやる!

確か今カッターシャツのある場所は………


チキ……チキチキチキ………


寝静まった夜、私はカッターナイフを手に持って別部屋のクローゼットの元へと歩を進めた。






そして……そこにあった長袖カッターシャツにカッターナイフの刃を向けて………切り裂いた。







……翌朝


お母さんの様子を伺うとクローゼットから私の長袖ブラウスを探しているみたいだけど、見当たらないみたいで困ってるっぽい。

見つからなくて当然だよ。

私はそんなお母さんの視界にわざと入ってやるとお母さんは少し驚いた様子だった。





……そう、私は既に長袖カッターシャツを着ていたからだ。



【~昨晩~】

中学2年生にもなってお母さんに着せられる何て嫌だ!

それだったら私が自分で着てやる!

……そう思った私は昨晩クリーニングから返って来てクローゼットにしまってあったカッターシャツを先に回収した。

その時にクリーニングあがりでカッターシャツを包んでいてたビニールを取るためにカッターナイフ持っていってビニールを切るのに使った。

だけど包装緩かったし別に使う必要無かったかな。



……そして着回し用の3着のカッターシャツ全部を部屋に持って行って、朝になったら先手を取って自分で長袖カッターシャツに袖を通してやった。

もちろん手首のボタンもキツい方で留めて首元のボタンも一番上までしっかりと詰めている。


最初から長袖を着てればお母さんに何も言われないだろう作戦で、お母さんは「あら、自分で衣替えしたの」って言いキッチンに戻っていった。


去っていくお母さんを見て勝ったと思った。

ざまーみろ。

今まで散々肌寒い日はお母さんに長袖着せられたせいで、クラスで一人だけ長袖でいるのにはもう慣れてそんなに気にならなくなってるもんね。

もっと条件緩くしたら長袖カッターシャツの日は少なくなってここまで慣れてなかったかもしれないけど、小まめにいっぱい着せたのが裏目に出ちゃったね♪

恥ずかしくないんだったら私も肌寒いの嫌だし長袖を着たいし、これから朝から暑い真夏の日とかじゃなかったら必ず長袖カッターシャツを着てやる!

もうお母さんの好きな様に操られたりはしないから!

私の勝ち!



そして2学期の初登校。

教室に入ったらやっぱりクラスメイトは私以外全員まだ半袖シャツで、私一人だけが手首と首元のボタンを留めた長袖カッターシャツだった。

だけどいつもみたいにお母さんに着せられたんじゃなくて、お母さん対策でしょうがなくっていう部分もあるけど自分の意思でクローゼットから取り出して

自分の意思で袖を通した長袖カッターシャツだから、屈辱感みたいなのは全く無くて堂々と出来る。

恥ずかしさも大分薄まった上に悔しさが全く無いんだから私はもうクラスでみんなが半袖の中で一人だけカッターシャツを着る事にほとんど抵抗は無い。


自分の意志で長袖になったんだからせっかくだし、ボタンも留めてないと勿体無いよね。

私はこれからお母さんの言いつけでじゃなくて、自分の意思でこの手首と首元のボタンはきちんと留めてやる!


1年生の最初の頃は、カッターシャツ手首の布地が厚くなってる部分が手枷に感じて、手首ボタンが鍵穴に感じて拘束具の様に感じた。

キッチリした襟周りも首輪に感じて、首元のボタンも首輪の鍵穴だ。

けど日に日にそのイメージは薄れていって、今日この長袖カッターシャツは本当に私を保護してくれる洋服になった。





………数年後


【高校1年生 8月下旬】


私は高校生になっていた。

ここらへんではそこそこの進学校で留学生の受け入れもしている高校だ。


今日は2学期の始業式で久しぶりに登校学校しいる所だけど結構な真夏日だ。

だけど登校中の私は長袖カッターシャツをしっかりとボタンを閉じて着用している。

中学の頃との制服シャツで違う所といえば、高校の制服はリボンを付けるかは自由で私は付けてる位か。

何となくカッターシャツはキチンと着てるのにリボンだけ垂らすのはバランスが悪い気がしてややキツめにゴム紐を調整して首元のボタンが隠れる位で留めている。


そしてもう一つ、私は中学3年の頃から【どんなに暑い日でも長袖のカッターシャツを一切捲らずにボタン全部留めて着る様になった】


切欠は【実際の所猛暑日に長袖カッターシャツ着崩さないとどれ位暑いの?】【本当に暑いなら袖捲った方がいいの?】と思って猛暑日に1日実験してからだ。

中2の前半まで長袖半袖の選択はお母さんに任せてたけど自分で判断するとなると面倒で、あと暑さ次第でマメに手首と首元のボタンを開けたり閉めたりするのも少し手間だし

いっそ【真夏日に長袖でもそんな変わらないなら袖捲らないのもありかも】と思って実験してみて、結果は【暑くなる事も多いけど大した差は無い】だ。


日差しの強くて風が無い所では袖を捲らないでいた方が快適だった。

日差しのチリチリとした不快な感覚が無くなって長袖で日陰になるからだ。

ただ風があるなら半袖の方が涼しいかな?

教室内では空気こもりやすいから長袖の方が暑い気がするけどそれも大した差じゃないし、中3の2学期からは教室にエアコンが実装されて何の問題も無くなった。

他にもどちらかというと長袖の方が暑い場面はあったけど大した差じゃなかったし、冷え性なだけで暑いのは苦手というわけじゃない私はこれ位平気だった。

長袖カッターシャツに身体を包まれ両手首と首が軽く拘束される事を受け入れてる今、逆に保護感を感じて心地よくて実験をして以来カッターシャツを着崩す事は無くなった。



昔を思い返しているうちに学校が近くなって、周りは同じ高校の生徒ばかりになる。

リボンを装着している生徒は半々でシャツは長袖に腕まくりの生徒が大半。

半袖の生徒はあまりいないけど、私みたいに袖を下ろして手首のボタンを留めてたり首元のボタンを留めてる生徒はもっといない。


ぶっちゃげこのリボンの紐を緩めて手首と首元のボタンを外すだけで周りと同じ服装になれる。

今まで暖かい格好をしていたせいか体の成長と共に冷え性は何時の間にか自然と治っていたし、そもそも今日は肌寒くなんてない。

だけど私はこの長袖の手首と首元のボタンを外す気は全く無い。


中学生の頃と違って体調崩した時の怖さや健康の大切さを知ってるつもりだからだ。

中学生の頃はお母さんへの対抗心で着たけど、今は普通に自分が風邪とか冷え性とかにならない様に

自分の体を労わる為にボタンをしっかり留めている。

高校の教室にはエアコンもあるし、寒い格好をしていればまた再発するか分からないしこのボタンを留めた長袖カッターシャツは私には必要なものだ。

暑い野外でも長袖なのは……そう、コマメにボタンの開け閉めが面倒というのもあるけど単純に【クセ】になってるからだ。


そう、クセ……中学1,2年の頃にお母さんにつけさせられたクセ……

中学2年生の時私はお母さん相手に心の中で勝ち誇ってたけど、今思うと……お母さんの都合通りだよね……?

今思うと結局私が根負けして自分で着る様になった感じで、お母さんの意のままだったかも。

中1の頃お母さんに「暑い時以外は必ず長袖を着る習慣をつけさせる」って宣言されたけど本当にその通り習慣いなって、それどころか暑い時も着る様になっちゃった……

高校生になってそんな事でムカつきたくはないんだけどちょっと悔しい……

……悔しいけど良かった……かも?

うぅ~ なんか認めたくないけど 高校生になって時間が経つほど【あの時お母さんが嫌がる私に長袖を着せてくれて良かったかも】

って思ってしまう……







「……っていうのが私が長袖を着ている理由。【病弱で半袖だと体壊すから】かな」

始業式後、クラスバラバラだけど仲の良い友達と4人で行ったファミレスで私は今までの出来事を語っていた。


「えっと、大きい病気にかかっててその後遺症だったんだよね? それならお母さん過剰になるのも分かる気がする」

「でも今は症状落ち着いてるのなら良かったデース」

「っていうか別に嫌ならそんな寒くない時はフツーに袖捲ってればよかったじゃん。中学生の明美って反抗期真っ盛りなのに変に律儀だったんだねー」

「う、うっさい」

もっともなツッコミに耳が痛くなる。

あと、明美っていうのは私の名前ね。冒頭で1回言っただけだから忘れられてるかな?


「でも明美が長袖でいてくれて大分気が楽になったよ~ おかげで私も長袖カッターシャツで過ごす事出来たし」

「ドウカンです。長袖の人が自分一人じゃないのはかなり心強かったデス」

「明美さんが長袖じゃなかったら私も多分半袖のままだったと思うし、私達ここまで親しくなってなかったと思う。不思議だよね」


そう言ってる友達3人は全員長袖カッターシャツを着ていて、袖は一切捲ってなくて手首と首元のボタンをしっかりと留めている。

それはファミレスのエアコンが寒いから一時的にそうしてる訳ではなくて、学校内でも野外でもどんな時でも必ず全員そうしてる。


「やっぱ肌を出すと日焼けが気になるからさぁ~ 日焼け止め節約したいしこのカッターシャツで代用出来る所は全部代用したいじゃん?」

明らかにギャルっぽい見た目の【香織】は美容にかなり気を使っていて、日焼け防止のために長袖カッターシャツを着ている。

屋内の日陰でも日焼けの可能性はそこそこあるらしくて校内でも首元のボタン1つさえ外す事は無い。

節約家な所もあって日焼け止めの消費を抑える為にカッターシャツで代用出来る箇所は目一杯代用するのがモットーらしい。

自分一人カッターシャツはちょっと恥ずかしいから日焼け止めで妥協するつもりでいたら、違うのクラスの私が一人いつもカッターシャツだけど平然としてたのを見てマネする様になったとかで

見た目ギャルなのにカッターシャツの第一ボタンとかをいつもしっかり留めてる真面目っぷりが、第一印象から落差がある子だと思う。



「クラスにアケミさんが居てくれて助かりマシタ。 私は宗教上の理由でこのカッターシャツのボタンを外せないので、日本人でも同じ格好してくれる人がいるとホッとします」

海外からの留学生の【ソネア】はムスリムっていう海外では結構有名な宗教の教徒らしいんだけど、戒律で女性は身内以外に絶対肌を見せない様にしないといけないらしくて夏でも手首と首元を閉じたカッターシャツだ。

中には戒律が緩い派閥もあるみたいだけどソネアの所は服装に関しては大分厳しいみたいでそれを物心ついた時から守っているからかなり徹底していて、長袖だけじゃなくて厚手のタイツも履いている。

カッターシャツも手首部分が少し改造されてて手首のボタンが片側2つずつあって、万一手首のボタンが1つ取れても袖口が開いてしまわない様に徹底している。

日本じゃ馴染みのない習慣だから奇異の目で見られるかとハラハラしてたけど、隣のクラスの私がいつもカッターシャツだったからシンパシーを感じてたらしい。

美人の欧米人でどうしてもみんなの注目を集めるけど、単純な欧米人のイメージみたいに開放的に肌を出す事は一切しないでむしろ海外の人だからこそ肌を出せない事情のある子だ。




「でも長袖をキチンと着る様になって、私は逆に変な目で見られる事も無くなったと思うから本当に明美さんが切っ掛けになってくれて良かったなって……」

最後に【梨香】だけど……成績優秀、品行方正な上に学校内で1,2を争う美人だ。肌も綺麗で半袖になって腕を露出したら一部の男子がいやらしい目で見て来て悩んでたらしい。

素肌を見られるのならいっそ長袖カッターシャツを着て隠そうかと悩んでた時に違うクラスの私の姿を見て実行する決意をしたらしい。

夏でも長袖カッターシャツを着る様になって……もちろん手首と首元のボタンをいつも閉じる様になったら

よく嫌らしい目で見ていた男子が残念そうにしてそれ以来あまり見て来なくなってこの服装を凄く気に入ってる。

ちなみに袖を適度に捲ったり首元のボタンを外すのは何だかお行儀が悪い気がしてやりずらいとか。……育ちいいな。



寒さ対策のため

日焼け防止のため

決まり事のため

視線を避けるため

理由はみんなバラバラだ。


制服の着こなしも4人とも同じ様に聞こえるけど、香織と梨香と私はボタンの上から更にリボンをキツめに付けてるけどソネアだけは付けてなくて首元には第一ボタンだけを光らせている。

他にもスクールベストを上から着ているのはソネアと梨香だけとか、香織と梨香はハイソックス、私は普通の丈の靴下、ソネアは黒タイツを膝下丈スカートに合わせてたりと微妙に違う。



そして私達はクラスもバラバラだけど……気づいたら長袖カッターシャツが切欠で友達になってた。

香織、ソネア 梨香といきなり話した事無かった人達にお礼言われた時は訳が分からなかった。 





「そんなに私に感謝してるならお礼に今度ファミレス行く時はケーキ奢るのはどう?」

店を出て4人でのんびりと歩きながら何気ない会話をする。

「え~ 今月新しいサプリ買ってお金ピンチだもん」

「こら、カッターシャツのボタン外すわよっ」

「きゃっ ちょっとっ! 体育無い日は首は襟元から出ているギリギリの所までしか日焼け止め塗ってないんだからっ!

 ボタン外したら襟緩んじゃって首の部分が日焼けするじゃないの! ソネアッ、パス!」

「ダ、ダメです! こんな公の所でこのボタン外すのは私には許されマセンっ 梨香サン!」

「わ、私もダメだよっ ボタン外すって何だか不良っぽいし~」



……あの時お母さんに長袖カッターシャツを着せられなかったらみんな友達になっていないでバラバラで、ソネア以外はこの服装じゃなかったのかもしれない。


そして私は未だに後遺症に苦しんでたのかもしれない。


そう思うと友達とふざけ合いながらも鼻の奥がツンとした。

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