第8話:城壁建造と鑑定千里眼
〈イージアル視点〉
会議が終わり、執務室から出るとジャスに話し掛けた。
「ジャス殿、塀を築く場所ですが、今後のことも考え、少し広く造ってしまいますが大丈夫ですわよね?」
「大丈夫ですじゃ。今後、町が発展していくことを考えれば、広い方がいいでしょう」
「では、早速始めますので、わたくしは失礼します」
わたくしはジャスに別れを告げ、早々と外へ出た。
「早く終わらせ、京平様の元へ戻りたいけど、雑な仕事はできません。正確に迅速に終わらせます」
そう言うと、わたくしは背中から黒い翼を出し、空高く飛んだ。
村を一望できるほどの高さで停止し、どこに塀を築くかを考え始めた。
「今後のことを考えるならば・・・・ええ・・そうですわね・・・」
独り言のように呟き、自己解決した。
「今後、この町を街へ、そして都市にするのですから、都市を囲むような塀を造ってしまいましょうか。では造ってしまいましょうか」
黒い翼を羽ばたかせながら、上空で両手を上げた。
「《岩よ、この町をあらゆる脅威から守るための堅強な壁を造りなさい》」
そう言うと、ゴゴゴと大きな音を鳴らし、砂漠の砂の中から岩が隆起し始め、見る見るうちにビル3階建て分の高さの塀、いや城壁が建造された。
「・・・・都市1個分だと広すぎでしたわね」
よくよく見てみると、中央の噴水がある広場から歩いて30分はかかるであろう距離に城壁を建造してしまった。
さらに町の周りは砂漠の砂を排除していないため、城壁と町の間に砂漠がある状態である。
「では次は・・・・」
わたくしが次の作業に入ろうとした矢先だった。
とある事をすっかり忘れてしまっていたことを思い出した。
「わたくしとしたことが失念しておりました。京平様の食事を作っておりません!」
何て言う事だ。
自分の主が腹が空いていると言っていたにもかかわらず、それを忘れてしまうなんて、眷属として不甲斐ない限りである。
「大変です!急いで戻り食事を作りませんと!!」
そう言うと、すぐに主がいる屋敷の方を向き、急いで戻ろうとした。
だが、途中で戻るのを止めてしまった。
「しかし、今戻ったところで、屋敷には芋と豆しかありません!先程、厨房を見た際、油などと言った物もなかった。それで何が作れると?これではいけません!町民ならいざ知らず、京平様が粗末な物を口にするなど、わたくしが許しません!」
わたくしは屋敷に戻ろうとするのを止め、空中で周りを見渡した。
「わたくしにはスキル『千里眼』があります。これがあれば、最短距離の場所で食材になる物を探せます!」
そう、わたくしのスキルは複数あり、一つは何回も使っている『万物支配』、それと今使っているどこまでも見通し、物を鑑定する複合スキル『鑑定千里眼』などがある。
このスキルなら遠い距離でも食材を探すことが出来る。
わたくしが『鑑定千里眼』を使い、辺りを見渡していると、一ヶ所、近い場所に良い物を見つけた。
「あれは?あれならば、上質な油が採れそうですね!それに距離もわたくしのトップスピードならば数分で取って戻ることが可能ですね!」
わたくしの瞳には、大きな椿のような種子を実らせている植物が映っている。
「『鬼椿』という花らしいですわね」
その植物を見ることで、脳内にその植物の説明が流れ込んできた。
『鬼椿』:鬼の如き濃い赤色をした、人の頭部ぐらいの大きさの椿。
その種子は花と同じほどの大きさをしており、それからは香りのいい油が大量に採れる
「京平様、すぐに鬼椿の種子を取って参りますので、少々お待ちくださいね!」
そう言うと、わたくしは黒い翼を羽ばたかせ、鬼椿のなる方向へと猛スピードで飛んで行った。