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8日目 死神さんが再び学校へやってきたようです

 日曜日が終わり、憂鬱な一週間始まる。

 死神さんと出会ってから、学校の時間が退屈になってきた。今までも大した面白みもなかったが、家に帰れば彼女と会えるのだから、余計に今まで通りとはいかなくなる。早く学校を終えて帰宅したいという気持ちが高まってきた。


 座学が終わり、体育の時間になる。体育館での授業となるため、クラスメイトたちは次々に教室から出て行った。

 教室に残った生徒がまばらになってきたころ、席から立ちあがり移動をはじめた。まだ休憩時間ということもあり、廊下は他クラスの生徒もいる。


「次の授業はなんでしたか?」


 誰かがこちらに声をかけてきた。普段は誰も話しかけてこないので、億劫に思いながら適当にあしらう。


「体育だよ。休み時間は短いし、急いだほうがいいと思う」


 話しかけてきた生徒は離れる様子がない。気にしないようにして体育館へ行こうと足を速めた。


「少年、無視するのは感心しませんね」


 はっとして、先ほどの生徒を見る。そこにはセーラー服を着た女子生徒が自分と一緒に歩いていた。

 その女子生徒の白い髪はいつも通り手入れがおざなりで、まるで病気にかかっているかのように青白い顔。隈のある目はとても不機嫌に見えた。


「え? し、死神さん?」


 つい、間抜けた声が口から出てしまった。


「ようやく気付きましたね、少年」


 頭が悪くなった気がした。


「なんで学校にいるんだよ。部外者がこんなところにいたらまずいだろ」

「大丈夫です。こんなにたくさんの生徒がいるんですから、私ひとりくらい増えたところで誰も気付きません」


 こんな白髪の生徒なんて、目立たないわけがない。すぐにバレて大騒ぎになってしまう。事実、すでに注目を集めている。騒ぎになるのも時間の問題だ。こはいち早く消えてもらおう。


「はやく――」

「それよりも、この服装はどうですか? まだまだ現役でやっていけると思うのですが」


 死神さんの恰好に目を向ける。

 自分と同じくらいの背丈の死神さんは黒いセーラー服を着ていた。黒地に赤い線の入った襟、胸に結ばれた赤いリボン。真っ黒なスカートはかなり短く太ももが少し見えていた。黒ローブではないが、圧倒的に黒が多い。黒ローブと比べれば断然に良くはなっている。


「あ、あの、とても言いにくいけど……現役はちょっと……」


 しかし、問題は似合っていないことだ。各々のパーツは良いのだが、全てが合わさると、圧倒的なコスプレ感がある。大人が無理してセーラー服を着ているので、とてもアンバランスであり、学生にはとても見えない。

 どこかの怪しげな店で接待している女性に見えてしまう。自分は学生なので、そんな店のことはよく知らないが、そんな気がする。


「えっ……そ、そうなの? そっかー。現役から見るとそうなんですねー」


 目から光が消えて、自嘲気味に微笑んでいる。このままだと、死神さんが病んでしまいそうだ。


「でも、約束を守ってローブ以外の服を着てくれたのは、嬉しかった。ありがとう」


 そう言うと、死神さんの目に光が戻ってくる。心なしか口角があがって喜んでいるように見えた。


「いえいえ、どういたしまして。服に関しては少し外してしまった感がありますけど、次に期待してください」


 もう次のことを考えているのかと、胸がうきうきしてくる。欲を言えば、今回のような黒が多い衣類ではなく、もっと明るい感じの服装を見てみたい。次はきっと見せてくれるはずだ。


「あ、時間!」


 死神さんと話していて忘れていたが、体育館へ向かわなくてはならない。それに、体操服に着替える必要もあるため、時間ギリギリになってしまう。


「死神さん、また後で。早く帰らないと生徒じゃないことがばれて大騒ぎになるだろうから、気をつけなよ」


 そう言い残して、体育館へと向かった。


 男子更衣室に駆け込むと、手早く着替える。体育館についた時には、授業が開始する直前だった。周りには体操着に着替えた男女が体育館の中で雑談をしていた。

 すぐ近くからやけにざわついた声が聞こえる。何か問題が起こったのかもしれないと、ざわめきに近づいた。


「どこを見ているのですか、少年」


 何となく既視感を覚える声の方に身体を向ける。そこにはひとりの女子生徒が立っていた。彼女の髪は白く肌は青白い。


「少年も年ごろですから、女の子を視線で追ってしまう気持ちはわかります。ですが、もっと見るべき女性がいるのではないですか?」

「なんでいるの!?」


 体操服姿の死神さんがいた。上着の袖と首もとが黒い色をしている。白い体操着にまで黒のこだわりが垣間見えた。

 今まではローブを着ていたので、気付かなかったが、死神さんは意外と胸が大きい。クラスメイトの胸と比べるまでもない大きさに目を離せない。


「今度の服装はどうですか? 今度こそ、喜んでしまってもいいのですよ」


 死神さんはふふんと鼻を鳴らす。そんな彼女の全身を眺めていると、見ていられなくなってきた。


「あの……言いにくいんだけど、今時の体操服はハーフパンツなんだよね」


 死神さんの下半分はブルマだった。紺色のブルマだ。そこから見える太ももは細いながらに肉感があり、見ているとドキドキと胸が高まってくる。

 今日日普通の学校生活を送っていればお目にかかることはないものだ。辺りが騒がしい理由は、死神さんのブルマのようだ。みんなの視線が彼女に注がれている。


「え? 体操服と言えば、ブルマですよね?」


 首を横に振った。

 死神さんはシャツを下に引っ張って、ブルマを隠そうとする。引っ張られたシャツは胸に引っ掛かり、より胸が強調されている。とてもいいものを見せてもらったと、神に――主に死神に感謝したい気持ちになった。


「少年、はめましたね?」


 恨めしそうにこちらを睨みつけてくる。パニックに陥っているようで、目はぐるぐると回り、目じりには涙が溜まっていた。これは自分掘った墓穴に落ちたような感じで、こちらに落ち度は一切ない。

 他の生徒の視線を遮るように、彼女の前に立って、耳元で囁いた。


「とても可愛かったよ」


 彼女は耐えられなくなったのか、その姿を消した。今までこちらを見ていた生徒たちは首をひねっていた。そんなこんなで、授業の始まるチャイムが鳴った。

 授業がはじまったので、みんなは先ほどの出来事をわすれてしまったように移動をはじめた。


 死神さんの体操服姿を見られる時間が少なかったので、あとでリクエストしてじっくりと眺めさせてもらおう。そんな下心をもったまま、体育の授業を受けた。

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