おはよう世界 第三話
「朝日は年いくつだ。おれらの学校にそんな名前のやつはいない。」
大の言う通り僕は学校には行っていない。
「それにお前はこの場所も知っていた。誰から聞いた、答えろよ。」
大が僕に詰め寄った。
「僕の、、母さんだよ。」
「大人がこの場所を知っているはずがない、教えるはずがないんだ。」
大からの疑いはまだ晴れないようだ。
「はーい、そこの三人ご飯できたからこっちきて。」
日向が僕らを呼ぶ。声の先には机と椅子が沢山並んだ空間があった。
「いただきまーす。」
子供達の声が地下に響く。ざっと数えて十数人と言ったところだろう。一番小さい子で七歳くらいかなそんなことを考えていると、
「だーかーらーこの場所は大人には秘密なんだよ。お前の母ちゃん何者だ?」
大の声に遮られた。
「殺人者だよ。」
俯いて答える。
「あはははは。面白いこと言うな。この町に犯罪者はいないんだよ。」
馬鹿にしやがって。
「なんだよ、さっきから。あの男たちは、逃げてるってどういうことだよ。ちゃんと説明しろよ。俺の母さんも妹も弟も、もう、、」
大に詰め寄りながら必死に堪えていた涙が溢れた。大はしまったという顔をしていた。
「笑ってすまない。この国では数十年前から「回収」が行われるようになったんだ。」
大が話した内容は僕の希望を打ち砕く物だった。みんな回収から逃げて彷徨っているところを助けられたこと。僕らの居場所はもうどこにもないこと。どこまで歩いても真っ暗なトンネルのようだった。
「けどな、十五歳まで生きていればいいんだ。大人になったら殺されない。俺たちは自由なんだ。」
大は笑顔でそう言った。
「本当にそうなのか?僕の母さんは目の前で殺された。あいつらは大人も殺す。」
「俺の兄さんも十五歳になったから出て行ったんだ。殺されているはずがない。」
「じゃあなんで助けに来ないんだ、様子くらいみにくるはずだろう。」
僕も大も黙り込んだ。沈黙を破るように日向が明るく言った。
「私たちで変えよう。誰かが決めたルールなら誰かが変えられる。私たちが、明日を変えるんだ。」