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おはよう世界 第一話
「お兄ちゃーん。痛いよー。」
転んで擦りむいた傷が痛々しい。
「ほらもう少しだから。」
妹の手を引きながら、朝日はついさっき起こった惨劇を思い返していた。
ピーンポーン
昼過ぎになったイヤホーン、ドアスコープ越しにいた男たちはニコニコしながら手には凶器を持っていた。
異変に気がついた母が逃げなさいと地下を指さす。家の床下にはマンホールがあり、地下には使われなくなった下水道が通っていた。
ガシャン 窓ガラスが破られ手にハンマーを持った男と逃げ遅れた妹の真っ赤に染まったワンピースを横目に見ながら僕は、マンホールの梯子をおりていった。
どれくらい歩いたのだろう。入り組んだ地下ではここがどこなのか、時間の感覚さえも失われていく。
「妹の怪我も心配だ。綺麗な水を探すためにも、一旦地上にあがろうか。」
そんなことを考えていて油断したのがいけなかった。
「動くな。」
完全に逃げ道は塞がれていた。