華麗なる戦いの日々
過去最高の評価点が頂けて…嬉しくて調子こいて更新します。うひょー
感謝
うおぉおおおおおおおおおおおおお!
「スキル=スパイシーッタックル!」
拝 啓
皆様は異世界に転生したら、やっぱり冒険者になりたいですか?仮にチートが無くたって…始まりの町でザコモンスター倒してウハウハとか…そんな甘えた事考えてませんか?
いえいえ、私もこの世界に来るまでは舐めてました。蜂蜜ドバドバ入れた子供用甘口カレーな頭でした。はい…では、真実を話しましょう。
「やだぁあ!こわいぃい!牙がぁ!牙がぁあん!」
「おら!っとっと突っ込めよ糞兄貴!」
例えば、解りやすいのが痛みです。えぇ…異世界物だとなんやかんや、すーぐ傷治ったりしますよね?魔法とか薬も豊富です。
いえいえ、そんな大きなケガの話ではありません。
私が言いたいのもっと小さな事…例えば画びょうです。
さぁ、地面にちょこんと画びょうを置きましょう…小さな針が上に向いてますね。本当に小さい針です。腕が捥げたり…矢が刺さったり…獣に噛まれたり…、酸で焼かれたり…皆さんの考える冒険の痛みの前では、本当にあって無いような小さな痛みですね。
さて…
「うぁああ!盾を越えてくる!爪!爪がひぃいい!猫子ちゃんギブ!ギブゥウウウウ!」
「こいつら学習してるぞ、トゲ無い所手で押さえてくるし…スパイシータックル使えねぇええ!」
「ハハハハハ!いいよぉお二人ともぉお!戦いの辛さを知りなさぃいい!アハハハハハ!」
…そう、 床に置いた小さな画びょう
それをあなたは思いっきり裸足で踏めますか?
「痛いのやだぁああ!むりぃい!爪こわいぃい!牙こわぃいい!」
「ごべんなさぃ!今まで一人に任せてごべんなざび!たずげてぇえ!」
画びょうなんかよりぶっとい牙と爪が、目の前で一斉に向かってくる…むしろそれに飛び込んでゆく、裸足で画鋲を踏み込むように、自ら痛みを求める様に…それが冒険者の生きる道です。
うん、無理…ぼくおうち帰る。無理…
「スキル=猫邪羅死!散歩必殺!」
…猫子の叫びが耳に入ると同時に、盾を押さえつけていた魔物の腕が宙を舞う。否…腕だけじゃなく…足も…胴も…首も…!
ブシャァアアアア!
血と臓物の雨が降った。
「ハァアアア!ハァアアアア!!」
猫男は狂乱状態で寄声を上げている…目の前に、牙だらけの首が落ちてきたのだ。
正男はそんな無様な声は上げずに…ただ、静かに漏らしていた。
「ドリフタードッグ<野良犬>5体、討伐完了!二人が二体抑えてくれたからいつもよりずいぶん楽だったわ」
「ハハハ…猫子ちゃん、嘘が下手だなぁ…ハハハ」
うん、絶対嘘。絶対一人でも余裕だこのアマゾネス。
「ハァアアア!ハァアアアア!」
猫男は戦いが終わっても盾を降ろさない…否、降ろせないんだ…怖いんだ…世界が…
「終わったよ…猫男、…終わったんだ…帰ろう…帰ろう…」
現実は辛口だ。
今回は幸いな事に爪の痛みも、牙の痛みも味合わなくて済んだ。
…ただ盾を持って耐えてただけだからね…だけど腕は痛いし、足も…獣が盾にぶつかる度に膝で抑えてたから…膝が赤く腫れてるのと、うん…手の皮がずり向けてやがるぜ…うぅぅう
無理…ほぼ無傷だよ。アニメ漫画では無傷扱いのこの程度の状態でもめっさ痛いよ…うぅ…
「さぁ!ちゃっちゃと袋に首詰めて?これで船代貯めればサカナールへはあっと言う間よ?役場に言って、明日の分の仕事も探しちゃいましょう!うふふ…いい気分!」
「ハァアアア!ハァアアアア!」
…猫男は帰ら道も、宿に就いても…日が沈みまた登ってもこうだった、…彼の心は…もう…うぅう。
◆ ◇ ◆ ◇
俺達…華麗なる冒険団…否「カレーなる冒険団」はミートボルから更に南下しながら、様々なクエストを攻略していった。
ドリフタードッグ<野良犬>討伐
連続下着ドロボー<河童>の討伐
ウォーキングマツタケの捕獲
…挙げれば切りが無い。
働いて働いて…ちょっと貯まると飲みに行って、ようやく川下りの船の代金が…
「今日の討伐で、船代が貯まるわ!足で歩けば1月だけど…船ならなんと4日で海まで行けちゃうわよ!交易の港町サカナール!」
「や…やったー!やったな猫男!」
「ハフー!(やったー)ハフー!(やったー)」
俺達三人は泣きながら抱き合った。あ…ゴメン、肩打撲あるから触らないで…うん、マツタケ追ってる時ぶつけちゃって…うん。
あ…ごめん、お尻触る気はなかったんだ。うん…わざとじゃないよ?うん…はい、その後撫でたのはわざとです。ごめんなさい。
痛い…肩いた…痛タタタタタタ!
…コホン
「最後のクエストは牛ガエルのハントよ!大きいのが街道近くに出たんですって!」
「牛ガエル!?…フフハハハ!余裕!なぁ猫男!」
「フォフー!(余裕)フォフー!(余裕)」
ウシガエルなら、猫まんま村に居た時に既に無手で捕まえている。フフフ…懐かしいなぁ、ただただ怠惰に過ごしたあの頃。
思えば、カレーさえ…カレーさえ猫子ちゃんに食べさせなければ、こんな事にはなってなかった。うん…そりゃ大変だっただろうけど、冒険者とかならないで…タイショウの店で働いてたり…そんな平和な今があったかもしれない。うん
おのれカレーめ…大っ嫌いだ。
「よーし!じゃぁちゃちゃっと捕まえて…冒険生活とおさらばだ!」
「オオオオオ!(オオオオ)」
俺達は意気揚々と宿屋を飛び出す!この苦難の生活の…終わりはもうすぐ!なんだか愛用の盾も軽く感じる!
「うーん…なーんか正男さん勘違いしてる。」
猫子の不穏な独り言は、幸か不幸か…浮かれる二人の耳には入らなかった。
かくして、カレーなる冒険団…最後の戦い(予定)が始まるのだ。