表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界カレー列伝~カレーを持って異世界転移~  作者: 前歯隼三
華麗なる冒険編
7/249

華麗なる新装備

お待たせしました!やっぱり異世界知識で無双がないと!

「つまり、大切なのは水分補給…それも、ただの水ではいけないのだ。塩分やミネラルを同時に接種しなければ血が薄まって気持ち悪くなる。」


 冒険者ギルドで大将と別れて、俺達は南の港町<サカナール>を目指す。

 目的は港町の活気ある流通だ、世界中から人と物が行き交うサカナールならば…自分達の足で世界中を回らずとも、もっと効率的にカレーの材料を探せるだろう、うんいいぞ。冒険は足が痛くなるからもう嫌だ。


「汗ってのはただの水じゃないだろ?舐めらばしょっぱい、つまりだ…体から水と塩となんか色々滲み出てるのが汗なのさ、だから水だけじゃ駄目だ…うん…ハァハァ…解るか?そう…熱中症って病はね…フゥ…ハァ…軽く見ちゃいけない、休憩も大事だ…うん、めっさ大事だ。」


 いいんだよ!冒険を辞めれるならサカナール目指すのは良いんだよ!だけど夏だよ!このくっそ熱い時に熱い南に向かうってなんだよ!

 …俺は自分の命の為に、数少ない異世界チート…すなわち、異世界知識を仲間達に披露する。

 うん、これは仲間の命を守るためでもあるのだ。


「フゥ…熱い…と…きは…無理を…せずにぃ…ハァ…水と…休憩と…塩と…ハァ」

「流石だぜ、正男…お前の異世界知識は本物だ…大賢者だ…なぁ…ね…猫子…休もう。マジで」


 体感温度30度越え…いやね、地球よりは涼しい気もするけどこっちはフル装備ですよ。荷物持ちにて山道ですよ…無理ですよ。死にますよ。

 滝のように額から流れる汗と、延々と滲み出る背中と足裏の汗の粘着きは…生きる気力をずんずん奪い去ってゆく…ポカリ欲しい。カレーよりポカリ持ってきたかった。マジ無理。


「つ…ハァ…つまり…ね…熱中症といふのは…」


「解ったわよ!んもう!この坂登り切ったら休みましょう!?…ったくぅ」


 駄目な男二人と違って、アマゾネスな猫子はため息をついた。


「正男さんの異世界知識って…役に立つことあるのかしら…」


…ゴッファ!


「まって…猫子ちゃん…せめて休憩中に…して、今心が折れたら…無駄に水分(涙)を消費したら本当に…死ぬ…うぅ」


 一歩…ポタポタ…一歩…ポタポタ…

 太ももが重い…心も重い…頭がふらつく…足もふらつく…あぁ…ハァ…ハァ…


 …ポンッと猫男が肩を叩いた。

「お前の知識は役立ってるぜ…フゥ…俺もマジで休まないと死ぬ。」


 う…うぅ…辞めろよ親友、俺の水分(涙)を流させないでくれ!



◇ ◆ ◇ ◆



 ものくそ重い荷物を下ろし、盾とショートソードも放り投げ…ようやく木陰に腰を下ろした。


「お兄ちゃんたち…普通、郊外で武器手放すとかなくない?」


 完全につぶれる二人に冷ややかな目を向けて、猫子はカギ爪を付けたまま。座りもせずに立ったまま木にもたれ掛かる…一人周囲の警戒をしているのだ、俺達と違ってなんてしっかりしてるんだろう。


「いや、真面目に俺達なんて武器持ってても戦えないしなぁ…実際猫子が頼りだぜ。見張りサンキュ…ふぅ~」

「なぁ、次の町でもう剣売らない?ぶっちゃけ重いし…うん、包丁とかナイフで良くない?」


 実際今の道中での剣の役割は杖だった。杖なら杖で…思い鉄の杖じゃなくて軽い木の杖の方が良い。うん、剣やっぱ要らない…我ながら名案だ。


「んもう!正男さんまで!…なんなの?あー頭来る!ちょっとは二人とも強くなってよ!」


「わ…悪かったよ、猫子ちゃんの荷物俺達がわけて持つから?ね…適材適所!これ地球の言葉!」


「いいねぇ、その言葉、さすが異世界人だぜ親友!」


「………チィッ」


 それから今度は山下り…下った先で小川を見つけ、喜び飛び込みやぶ蚊に刺されまくり、半べそかきつつまた山登り。

 沈みゆく夕日と伸びる影に危機感を覚えつつ…なんとか街に辿り着いた。


 職人の町、ミートボル…山に囲まれ木材に恵まれたこの街は木を使った工芸や家具で有名な町らしい。

 宿も重要だが、先に武器やを見つけたのでさっそく俺達は店に入る。


「この剣買ってください!」

「おぉ、かなり状態が良いな…まるで新品じゃないか!」


 流石職人の町、ドワーフみたいな小男が出てきて…購入した時の半分の半分の値で買ってくれた。


「安くないですか?イメージとして購入時の半額くらいで売れると思ってたのに…」

 ゲーム脳である。ただ…納得は出来ないので聞いてみる。


「あん?中古品は半額で売るからよ…買取は更に半分にせにゃ俺の儲けないだろうが?アホ」


 納得しました、ごめんなさい…説明の前後で罵倒しないでください。心が痛いです。ぐすん


 俺と猫男の剣が小銭に変わると、今度は猫子が前に出た。…え?他に用はないはずだけど。


「おじさん…トゲ付きの盾ありませんか?2つ。」


 何やら不穏な空気を感じる、猫子ちゃんは身軽なファイターだから盾は要らないはずだけど…二つ?両手盾?ホワイ?


 すっかり日が落ちてしまったが、武器やのおっさんの紹介で宿へ向かう。

 足取りは軽い…猫子だけだが。


「フフフ…これなら臆病な二人でも少しは役に立つでしょう!盾で受けてるだけで相手にダメージ!…明日から戦闘では最初に突撃してもらうわよ?」


 俺と猫男の足取りは重かった。

 早く…早くサカナールに辿り着いて…冒険者辞めたい。痛いの怖い…、猫子さんの笑顔も怖い…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ