2話
「…えーっとですね?その、あなたを呼んだのは俺ですけど、ついでに暴れられたら困るかな〜って軽いノリで隷属の紋章刻んだのも俺ですけれども、まさか原初の大精霊様が来るとは思わないじゃないですか?いやほら…」
焦った俺は徐々に尻すぼみになりながら原初の大精霊ユンシアに言い訳を並べると、ユンシアは呆れたように自分の髪を弄り出した
(やべぇツヤツヤな髪してんな…)
言い訳しながらそんなことを考えているとユンシアがふと
「まぁいいわ。あなたが死ねば隷属の紋章も消えるのだし、たまには人間の世界で人の召使の真似事でもして暮らすのも悪くないもの。それに、あなたは熱心なユンシア教の教徒らしいし?」
そう言いながらユンシアが俺の首にかかるユンシア教の高額寄付者に渡される漆黒のペンダントを指さした。
「あ、あぁ。こう見えても闇魔法に関しては誰よりも造詣が深い自負があるし、何かの縁だと思ってユンシア教とも仲良くさせてもらってるぜ。」
自慢するようで少し気が引けたが、ユンシアは気にした様子も無さげに感心した素振りを見せた
「あ、そういえば15年ほど前に闇魔法との適性がずば抜けてたかい人の子に加護をさずけた覚えがあるわ。あなたがその時の子なのね…予期せぬ出会いではあるけれどこうして私を呼び出すことの出来るほど成長したと思うとなんか嬉しいものね」
微笑みながら照れ隠しのように目を下にそらしたユンシアに見とれてしまいお互いに微妙な間が空いた。
「あ、あのほら、こうして召喚しちゃったのは申し訳ないと思うけど、ユンシア様さえ良ければさ、一緒にこの屋敷を抜け出して世界を回ってみないか?人の姿で回ることなんてなかったんだろ?」
見とれていたことを誤魔化すかのように早口でクオンがそう言うとユンシアは考えるような素振りを見せた
「んー、そうね。でもあなたは貴族の三男なのでしょう?色んなしがらみが…」
(ユンシア様は俺の周りを心配してくれてるらしいけど…)
俺は貴族の三男ではあるのだが、父は早くに死に長男であるシズルがアルカード家を継ぎ、資金も少ないため15歳で家を出ることになっているのだ。ただでさえ3ヶ月ほど期限が過ぎているので逆に出ていくとなれば両手を振って喜んでくれるだろう。
そのことをユンシアに伝えると
「そうなの…、ならいいわ。行きましょう?私はあなたの奴隷だもの。私を飽きさせないでね?マスター?」
彼女はそう言って悪戯っぽく微笑んだ。
「あ!あと様はいらないわ。ユンシアって呼びなさい。いや、ユンでいいわ。特別よ?」
きっとこの日の出来事、ユンの表情を一生忘れることは無いだろう。
それほど彼女の姿は美しかった