第89話 繭を探せ!
神社の鳥居に突如現れた巨大繭。
そのおかげで神社周辺、まるっと一山・・・膨大な範囲の捜索が始まった。
しかし、捜索を始めて見ると出るわ出るわ!
とっぷり日の暮れるまで捜索をし、その数は大小さまざま有るが(小と言っても30㎝程の大きさだ)なんと33個も見つかったのである。
「やばいっしょ・・・」
俺は、境内の中に設けられた休憩所で松明の灯りの元、木の器に入った炊き出しのポトフを持ったままガックリとうなだれた。
休憩所では今まで捜索に当たっていたもの全員が集まり、飲み食いしながら体を休めている。
「いくらリアルと違うとは言え、ちょっと想定外だったね・・・いつの間にこんなに繁殖してたんだろう・・・」
千年も俺の横に腰掛けジャージ姿でげんなりしている。ん?ジャージ??
「お前さぁ・・・なんでこの世界でジャージなん?」
「うん、いつもの服じゃ動きにくいなーって思ってクローゼット開けてみたらこれがあってね。着てみた」
「べ、便利だな」
「尊のクローゼットはやっぱり それ しかないの?」
「そうだ。・・・ううっ・・・暑いよう」
「難儀だねぇ」
千年に頭をポンポンされていると、そこへ聖加の姿をした要とニコルちゃんがやってきた。
「どうした?」
驚いた俺は持っていた器を落としそうになった。
「いや、ギルドから使いの者が来て、ここへ来るように依頼があった」
ニコルちゃんも同じくウンウンと頷いている。
うーん、これは嫌な予感しかしない・・・
丸一日捜索して疲れたことだし、ちょっとここらで俺は一旦家に帰ってだな・・・
すると・・・総代さんのパンパンと手を叩く音が休憩所内に響いた。
「皆お疲れ様でした。おかげでとりあえず繭の数とその場所の把握は出来ました。この先はギルドが主体となって駆除を進めていくことになるので、ギルドから説明してもらいます」
そう言う総代さんの隣には村長、副村長とギルドの人らが数名そろっている。ん?ここからじゃ見づらいが大塚さんもいる?山奥の漆黒の闇の中、ゆらゆらと揺れるかがり火の炎の明かりだけでは、大塚さんであろう人物は半分闇に溶けてこんで判別しづらい。
「えー、まずは皆さん遅くまでお疲れさまでした」
話し始めたのは村長である。
「皆さんが探して下さった繭は大きさはさまざまですが合計で33個にのぼります。中でも一番大きな繭が鳥居についている物のようです」
「何の繭なのか、そしていつ羽化するか分からないので大きなものから駆除していくことになりました」
駆除か・・・どうやるのだろう、あんな大きなものを・・・
「駆除にあたりましてはギルドに冒険者として登録されている方々の中から、特に今まで実績のあった方々に依頼する次第であります」
要がウンウンと頷く。
いや、ウンウンじゃねーよ!俺何にも聞かされてないよ?
まったく案の上だよ!
無理やり捜索にかりだされて、その上駆除まで?ちったー休ませてくれよ!
ああ・・・疲労が更に増して体が重い~
「尊さん、尊さん」
もう!次はなんだよ!
俺は自分を小声で呼ぶ声に反応して、嫌々声のする方を睨むように見やった。
大塚さんだ。
大塚さんが俺の横で腰をかがめて小声で何かを話そうとしている。
「あの鳥居についている 繭 なんですが・・・ギルドで照会してみても何の 繭 か分からないのですよ」
ああ・・・それは今村長から聞いた。
「ですが、どうも・・・あくまで私の 感 なんですが、あの 繭 一筋縄では行かない気がして・・・どうかお気を付けて駆除に当たって下さいね」
いや、そんな面倒なモン俺にどうしろと・・・