第62話 縁談話
牧野~~~~~!
なんか縁があるというか、どこまでも邪魔っつか!
そして、しれっとお前議長の息子だったんかい!
俺はハッと気づき鷹見さんに「もしやコネで役所に?」と小声で聞いてみた。
鷹見さんは顔の前でブンブン手を振って
「や、さすがに違うよ!」
とちょっと汗をかきつつ否定したが・・・怪しいのう・・・
「いや~こないだのワームは大変だったなぁ~」
その時、俺達の背後から聞き覚えのあるヤツの声がした。
「もうね~どんな攻撃も効かないのよこれが!だから冒険者パーティーさんに頼んだんだけどさ~、あれ本来なら俺の仕事だからね~、いやぁ~まいったよぉ~」
ああ・・なんか盛ってるし・・・どこまでも癪に障るやつ・・・
それに、おまえはパン一で後ろでギャーギャー言ってただけじゃねーか・・・
ちらりと後ろを向くと、牧野(息子)がそれなりの正装をして女性陣に話をしている。
これが意外な事に正装するとなかなかのイケメンで、それがさらに俺の癪にさわる。
いや・・・もう一人鷹見さんも癪に障るようだ。俺達は目を合わせると(今度しめましょう)と心の中で誓い合った。
さて、話はニコルちゃん婚約騒動に戻そう。
「おお、ちょうど良かった、今おまえの縁談の話をしていたんだよ」
牧野父、議長は後ろでくっちゃべってるドラ息子に声をかけた。息子の方は女性陣に愛想よく手を振ると「せっかく盛り上がってたのに~」と不服ながらも楽しそうにこちらへやって来た。ああどこまでも空気の読めないヤツ!
見てみろ、ニコルちゃんの表情を・・・
まるでお通夜にでも行くような表情じゃねーか・・・
ニコルちゃんパパ上様に至っては、必死に素数を数えて冷静さを保っているぞ・・・
「あっ、こんにちは~皆さん♪ こないだはどうもありがとうございました~、いや~大変だったっすね~☆」
と、千年に向かって話しているが、当然千年はそっぽを向いている。
つか!俺は?ねぇ!まぁいいけどよー、ホント腹立つわー!
なにかペラペラと話しながら牧野(息子)は周囲をキョロキョロしている。たぶん聖加を探しているのだろう。
「おまえもそろそろ良い年齢だし、縁談をと考えてだな、実はここにいらっしゃる ニコさん を将来お前のお嫁さんにと考えていたんだよ」
「えっ!」
ちょいマテ、そんな大事なこと今この場で本人に?この牧野(父)もたいがいじゃないか?
「ちょっと待ってよおやじ~!俺には聖加さんっていう心に決めた女性がいるんだぜ~」
「まぁ、聞け・・・その聖加さんはこの村の冒険者兼、要職についておいでの方だ、とてもお前が憧れたところで、お相手してくださる方ではないぞ?」
ん?
なんですと?聖加はこっちの世界でもなにか役割を担っているのか?初めて聞いたぞ。
「それに聖加さんは・・・いや、何でもない」
と、牧野議長は何か言おうとしたが、それを飲み込んだ・・・何を言おうとしたんだ?
なんか今夜のパーティーは、引っかかることばかりで一向にモヤモヤが晴れねぇなぁ・・・
俺はなんかもう疲れ切って、帰ろうかと思い出した。
すると、何かちっちゃい影が俺の前にあらわれたかと思うと
そのちっちゃな腕で俺に抱き着いた。
そのちっちゃな影の本体はニコルちゃんだった。
そして・・・
「ニコルは!このお兄ちゃんと結婚するって決めてるんですっ!」
と可愛い声ながらもきっぱり言い切ったのであった。
ニコルちゃん、そうなんだー・・・って・・・・・
はぁあああああああああああ!!!