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第4話 現実(俺の住むリアルの世界)

結局、良く眠れないまま朝を迎え、授業を受けることになってしまった。


課題は・・・もちろんしていない!


授業と言ってもド田舎山奥過疎地域の俺の村は、高校はふもとの町まで曲がりくねった山道を十数キロ以上行かないと行けないため(今はでかいトンネルが開通したが)昔は車で送り迎えだったり、町の親戚の家に居候させてもらっていたのだが。


過疎地域の再生プロジェクトやらで、昨年から授業はネット形式となっていて、実際の登校は週一で良くなった。


インターネット様様である。


俺は、何時もにも増して上の空で授業を受け、全ての授業が終わるやいやな、同級生の個人チャットに切り替えた。



舟橋千年ふなばし ちとせ



入力欄に名前を入力して相手の返信を待った


「・・・忙しいんだけど・・・」


相手はメンドくさそうに音声のみのチャットで返信してきた。


「あ、ごめ・・・」


俺は一瞬ひるんだが


「ちょっと聞きたいことがおまえにあんだけど」と一気にまくしたてた。


相手、船橋千年は着替え中なのかシュッシュッという衣擦れの音が聞こえてくる。


「あのね、これからお仕事なんだ…夕方には終わるからウチ、来なよ」


「分かった、6時過ぎぐらいにそっち行くわ」


チャットはプツリと向こうから切られた。



「6過ぎか…まだ時間あんな」


千年の家までは遠くはないが、結構な坂道を登るため、そろそろ出かけた方がいいだろうと俺は判断した。

だがばーちゃんは見当たらない、多分ふもとの温泉にでも出かけたのだろう。


それで出かける前にじーちゃんに一声かけて出ようと思ったが、丁度診察中の様子なので声をかけるのを俺は止め、ちゃぶ台の上に書置きだけ置いて出て行った。


実はじーちゃんは診察を受けている側ではなく、診察をしている方なのだ、要するに医者である。


高齢の為さすがにバリバリの現役は退いているが、ネットでの診察を行っている。



(説明しよう)


この「天ノ村(天野村)」は、ド田舎というより秘境と言った方がいい程の山奥にある村である。


どこの地方都市にもれず、この村も過疎化の一途を辿っていたのだが、やれ山里の景観を守れだ、歴史的文化を守れだのなんだのと言うことで。


総務省より 「過疎化地域自立促進特別措置による特殊モデル地域」 とやらに選ばれたのだ。


と言いうと聞こえがいいが、この手の計画を引っ張る為に、村長がどんな汚い手を使ったのかは分からない。

が、とにかくあまたの候補の中から選ばれし過疎地域なのである。



その、長―いタイトルの計画の中身は、ネット回線の普及とそれをフルに活用した生活。


災害などで孤立しない為、また景観を損ねない為に地下にでかいトンネルを掘り里へと繋げたり。


ドローンを使った物流、そして村内にくまなくセンサーをとりつけ自動運転の小型車を走らせるなど世界でも稀に見る程のハイテクを極めている。


さらには住民全員に配られたリストバンド!これのおかげでパソコンが無くてもバーチャルモニターが開け操作できるという気合入ったシステムになっているのである。


一見何にもないド田舎で人が文化的に住めるようには見えないのだが、最先端技術の欲張り詰め合わせセット状態なのである。


ある意味ユートピアと言っても過言ではないだろう。


・・・まぁ・・・


人口が少ないのを逆手にとってのやりたい放題のモルモットと言ってもいいのかもしれないのだが、そのおかげで近年日本国内だけではなく世界中から物好きが移住して、実際村の住人の生活も一変し、のんびりとした山里に居ながらにして近未来的な環境で何不自由なく暮らすことが出来ている。


俺は自転車で坂道を立ちこぎしながら、千年の家へと向かっていた。昨夜からのモヤモヤもありペダルを踏む足に力が入る。


いつもながら結構な坂だ。ずいぶん上がってき村がよく見える。俺はいったん休憩するため自転車を止めて村を一望した。


下から山へと抜ける風が心地いい。


この「天ノ村」は四方を山に囲まれていてすり鉢状になっているため、山の上へと上がるとミニチュアのように村が一目で見て取れ、なかなかいい眺めだ。


そして、今向かっている船橋千年の実家は神社で、奴は巫女をやっている。


そして千年は俺の数少ない幼馴染でもある。


神社の境内に入ったので俺は自転車を降り、あたりを見渡した。


千年んとこの神社はこの村に古くからある神社で、神社の裏手の山の頂には「船着き岩」と呼ばれる巨石がある。


その昔空からやってきた「船」が繋がれていたという言い伝えがある巨石である。


その言い伝えからか村の名前が「天ノ村」と名付けられたとかなんとか・・・。


かぐや姫しかり、案外SFチックな話って日本にはちょいちょいあるよな。



俺は境内の楠の下で、日をよけながら千年を待った。


ふと、せっかくだしお参りくらいしなきゃね、と手水舎に手を洗いに向かう。


御影石で作られた手水舎には山から清水を引いているので、常に清らかな水で満たされている。


今日はその手水舎に咲きかけの紫陽花と青紅葉が浮かべてあり、なんとも清々しい美しさが参拝者の心を癒している。


・・・ま、こういう洒落た事すんのは千年だな…



「えと、お待たせ?」


その時、俺の背後から声がした、千年だ



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