第42話 新たな・・・
俺達三人は野原の真ん中で、正座して顔を突き合わせていた。
「どうする」と俺は二人に聞いてみた
「あの戦力、防御力・・・正直一番使える」と要は言った。が、オメーが一番レベル高いし、ステ振りも完璧なのに戦わないってのはどうよ。
そうなのである、要は防御に徹するし。
千年はリアル世界の巫女の時に、奉納として弓を射るため実際命中率は高いのだが、動きながら射るのは得意ではない。
俺に至っては恥ずかしながらまだ使える魔法が極端に少ない上に、どうやって増やしたらいいかすら分からない。
で、気づいたら3人でニコルちゃんをパーティーに勧誘していた・・・
こうなったら、俺達全力でニコルちゃんをお守りするぜ!
(こ、こうするしかこのパーティーには生き残れる道は無かったのである・・・)
改めて、掲示板に討伐依頼を見に行ったとき、バニー雛形さんが血相を変えて俺たちの側へ走ってきた。何事かあったのか?
「す、すみません。皆さんちょっと二階に上がって頂いてもよろしいですか?」と半ば強引にグイグイと俺たちは例の二階に押し上げられた。
そこでは大塚さんが顎に手をやり、神妙な顔をしてカウンターの中で水晶を眺めていた。
何かあったのか?
大塚さんは俺達を見ると、フッとため息をつきながら「皆さんお呼びたてして申し訳ございませんでした。」と少し暗い顔をして言った。
「どうしたんですか?」と千年がおずおずと尋ねてみると。
「これをご覧下さい」とモニター代わりの水晶を俺達に見せてきた。
そこには、鎧の音や銃の音が響き、恐怖におののく人々の声が聞こえてきた。一瞬光が見えた瞬間何かうごめく巨大な影が見えたのだ。
「これは・・・?」
「分かりません」
「この場所は町の南に位置する地下ダンジョンの中なのですよ。このダンジョンを通らない限り隣の町に行くことはできないのですが、どうやらそこにモンスターが・・・」
そう言えば、リアル世界でも村の南にトンネルがあって、それを通れば山の下をくぐり抜けて隣の町へ行けるんだが、この世界ではダンジョンになっているのか。
「なるほど、それで俺達にどうしろと言うのだ」と要が素に戻って大塚さんに尋ねた。
「少々厳しいとは存じますが、皆さんにこのダンジョンを攻略して頂きたくて、お呼びたていたしました。」
(え?こんな俺達の弱小パーティーに?)
「大塚さん、俺達まだそんな実力は・・・」
「ええ、失礼ながら皆さんのパーティーではまだ・・・ですが、既に上級者のパーティーに何組かお願いを致しまして。その先発隊は幸い死者や重傷者は出ていないのですが・・・皆さん負傷してしまい・・・何より皆さん戦闘意識が低下しておいででして・・・なんでも討伐対象に近づく事すら出来なかったそうで・・・」
「やむを得ず・・・か」
大塚さんは黙ってうなづいた。
え、ちょっと待て。たぶん先発隊って俺達よりも強いパーティーを送り込んでいるはずだろ?性能的に低い俺達で役に立つわけないじゃないですかー!
「あ、あのたぶん俺達で行ってもお役には立てないんじゃないですか?」
「いえ・・・あなた方はパーティーとして、ふとした時に素晴らしいチームワークを発揮なさいます。それに・・・」
「ニコルさんがいらっしゃいますから、ニコルさんはパーティーに入られたのですよね?」
え?ええええええー!ニコルちゃんってそんなに強いわけ?
俺達三人は一斉にニコルちゃんに注目した
ニコルちゃんは「あ、あのっ!私!そんなっ!」と既に涙目である。
それとは裏腹に、大塚さんは満面の笑みでニコルちゃんを見ていた。