第34話 目が覚めると
朝だ、いつもの朝だ。外ではカッコウがうるさいほどに元気良く鳴いている。って近すぎるわ!
あーいつもにも増してだりぃ起きなきゃ・・・
俺は、この時期ほぼ毎日カッコウに起こされてるなー、などと思いつつ目が覚めると。
いきなりベットから立ち上がり周りを見渡した。
見慣れた いつもの俺の部屋 だ
「エイドリアーーーン!」
こないだロッキーっていう古い映画を見たんで、つい両腕を上げ大声で発してしまった。
ようするに俺は大喜びをしたのである。
俺は元の世界に戻ったのだ!たぶん!
はー良かったー
・・・と、言っていいのか?
とりあえず確認だ。俺はチャットを開いた。
相手が出るやいなや「もしもし!」と半ば叫ぶように声を出す。
「・・・もう、朝から君達どうしたのよぉ」
画像は無いが、聖加の声である。
「いやその、元気かなーって」
「何言ってるの?さっき千年からも通話があって、似たようなことを言ってたわ」
「そうか、ところで昨日は具合が悪そうだったけど今日はどうだ?」
「・・・ああ、兄から聞いたわ、また倒れたって。ごめんね心配かけたね、でもいつものことだから特に大丈夫だよ」
「そうか・・・それなら」
良かったと言っていいのか?俺は言葉を飲み込み通話を切った。
聖加は昨日のことを覚えていない?まる一日目覚めないなんてことが普通なわけないじゃないか。
それにしても以前の世界に戻ってこれてよかった。
だが、またあの世界に戻るかもしれない・・・よな・・・、俺は網の目のようなスキルをとりあえず「茨」と呼ぶことにした。
ただ茨と呼ぶにはカッコ悪いから「Thorn」と呼ぶことにした。ネットで調べたのだ。
(やはりこの男中2からは抜けられないようだ)
もしかしたら、もうもう二度とあの世界には行かないかもしれないし、また行くかもしれない。それは分からない。
念のためスキルのことを、千年達にも伝えておかないとな。
さて、恐ろしいくらい何事も無くいつも通り授業が終わった。
そして千年と今日の夕方、要と聖加のいる寺 「浄土寺」 へ行くことにしたのだ。
「ねぇ、こっちの世界で一番いいのは自転車とかがあることだよね」
千年はコロコロ笑いながら俺に言った。そうなのであるあちらの世界では徒歩オンリーもしくは馬車という正に中世ヨーロッパ仕様なのである。移動手段においてはこのリアルの世界の方が楽である。
・・・いや、その前にモンスター討伐なんてものは、リアルの世界にはないのだが。
浄土寺の鬼のような階段を徒歩で上り詰めると、ちょうど要が境内の掃除をしているところだった。
思わずたじろぐ俺と千年。
要が横目で「なにしに来た」とぎろりと睨みながら俺たちに聞いた「おいおい、ずいぶんな挨拶じゃねーか。昨日は助け合った仲間だろ?」俺がそう言うと、要は鼻で笑いやがった。
「それはそうと聖加に会いに来たんだけど」
「聖加はいない」
「い、いないって?なんだよ」
意外な言葉に俺は、背筋に冷たいものを感じた。