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第30話 昔々のお話


「それじゃ、またその娘が悪夢を吸って死んでしまうじゃないか!?」


俺は昔話に、思わず突っ込みを入れてしまった。


「だから、お釈迦様は あるお考えを 思いつかれたのだよ。」


「お釈迦様は、娘にこう聞いた「「お前は前世で不思議な働きをして、皆を救った。辛いだろうが、今一度現世に戻って 悪夢を吸うて もらえぬだろうか?」


「お釈迦様はそう言って、いつも覗かれている蓮の花さく池を娘に見せた、そこには悪夢から目覚めぬまま亡くなってしまうたくさんの人々が見えたのだ。」


「娘はたいそう心を痛め「「私でよろしゅうございましたら現世へまいります」」そう言った。


「お釈迦様は娘の健気な心に、「「これを飲んで行きなさい」」と言って、娘に眩しい光はなつ朝日を飲ませた」


「そして、とある寺に、小さな幼子が本堂の納経台の上に捨てられているのを、その寺の住職が見つけた」


「住職は不思議に思いながらも、その子を他の孤児らと育てていった。」


「するとある夜明け前、顔も青ざめ足取りもおぼつなぬ状態で、立派な馬にまたがった武士が少しの共をを連れ現れた。聞けば毎晩夢に鬼が現れては領民を一人一人と食っていく夢を見るという」


「故に眠るのが恐ろしくて、幾晩も眠っておらぬという、この寺が薬師如来様と伺ってご祈祷ねがえぬかと思い人気の少ない時間にやってきた」と言う


「それはそれは…近頃はそういうお方が沢山お見えになるのですよ…」」住職はそう言って祈祷を始めようと支度を始めた。」


「その時、寝ていたはずの娘、ようやく12になったばかりの、寺に捨てられていたあの娘が、住職が本堂で祈祷を始めようとしていることに気づき、祈祷の支度を手伝おうと本堂へと向かった」


「すると娘は本堂に入るや否や祈祷の支度など目もくれず、病んでいる武士に駆け寄りその手を握り締めた」「すると武士は泡を吹いて倒れてしまったではないか」


「怒ったのはその従者達、スラリと刀を抜くと「「何をする」」と娘に切りかかっていった」


「住職もはやこれまでと、娘をかばおうと駆け寄ろうとするも体がピクリとも動かぬ」


「娘は ふふ とほほ笑むと はだしのまま本堂から表に出た」


「すると丁度向かいの山から朝日が昇り、娘を照らしたのである。よく見れば娘は微笑みながら大きく口を開け、その朝日を吸うているではないか。」


「従者は不思議な光景を目の当たりにしたが、それでも娘に切りかかろうと向かった」


「すると「「止めい」」と背後から聞き覚えのある大音声が聞こえた、その声の主は、先ほど倒れてしまった主であろう武士の姿であった。なんと武士は顔色も良く、すっくと己の足で立っているではないか」


「そして「「その娘の影を見よ!」」と従者に叫んだ


「朝日を浴びたその娘の影は、なんとお釈迦様のお姿ではないか」


「一同は皆その娘の姿に涙を流し、伏して娘に祈ったという」


…え、ちょっとまて。その話と聖加のこの状態って…

俺はゴクリと唾を飲み込んだ。


「だから、その昔話と今の聖加の状態がどう関係するんだよ!」


要はじっと同じ顔をした、すややかな寝息を立てる聖加を見てハッキリと言った。


「だから、その娘というのが 今の聖加 なんだよ」




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