第29話 食らう
「聖加が目を覚まさない」と、聖加の姿をした兄「要」はそう言った。
どういうことだ?目を覚まさないっていうのは?だが、それは言葉通りの事だろう。そして、大事なことは 何故だ? と言うことである。
俺も、愛おしそうに聖加の頭をなでる千年の隣に座ると、率直に要に聞いた。
「何故、目を覚まさないんだ?」
要は深いため息をつくと、こんなことを話し始めた
「昔昔、人々は悪い夢を見ると「「ゆうべの夢はバクにあげます」」と3回となえて悪夢を無かったことにする風習があったそうだ」
「それが何なんだよ」俺は少しイライラしながら聞いた。
「そして、俺たちは実の兄妹ではない」
「は?」「へ?」突然のカミングアウトに俺たちは目を見開いて驚いた。子供の頃からなんの疑いもなく接してきたからこそである。
だが良く考えてみると、この寺では二人きりで住んでおり、両親はいない。
前の寺の住職が亡くなってから、本山からやってきたとしか聞いていない。
というか。大人たちはそれ以上のことを言わず。とにかくこの寺を守ってきた。
だが、それと聖加が目覚めない事と何の関係があるのか?
要は続けた
「昔昔、人がバクへと送った悪夢を受け取って、その体で浄化する少女がいた。ところが沢山の悪夢を吸い込んでしまい死んでしまったのだ。」
「そこでお釈迦様はその娘を哀れに思い、極楽浄土へと導いた。」
「すると、またもや現世では、悪夢で死ぬものが現れだした。」
「困ったお釈迦様は、その娘にもう一度現世で悪夢を吸ってくれるようお願いをなされた」
「それじゃ、またその娘が悪夢を吸って死んでしまうじゃないか!?」
俺は昔話に、思わず突っ込みを入れてしまった。
「だから、お釈迦様は あるお考えを 思いつかれたのだよ。」