第10話 そして一日が終わった
俺は頭が真っ白になったまま箸に肉をぶら下げ、祖父母をポカーンと見ていた。
それに気づいたじーちゃんが
オレニコウイッタ。
「その肉は、こないだ玄関ぶち破って入って来た猪の肉だぞ!」
あっ、そーですかー・・・
「ほら食え食え、油がのって結構旨い、これで仇もとれたぞ!ハッハッハッハッハー!」
俺は小さく「美味しく頂いてます」と言うと、ぼそぼそと食った。
なんだかんだで鍋一杯の牡丹鍋を食らいつくし。
〆のうどん玉まで食べた頃、ちょうどスマホの着信音が鳴った。千年からだ。
「ごちそうさーん」と言いながら俺は席を立ち、俺にはちょっと低いかもいをくぐりつつ電話を取り自室へと戻った。
「ちょ!夕飯なんだった?」
電話に出るやいやな千年が甲高い声で聞いてきた。
「牡丹鍋―、味噌仕立てで柚子と山椒が効いてるやつー」
「え、うちすき焼き風だったけど、味噌もいいねえ・・・じゃなくてー!」
「聞いたでしょ?あのお肉!」
「ああ…昨日お前が仕留めたやつだろ」俺は昨日光った右手を見ながら淡々と答えた。
「どういうこと?あの猪倒したんじゃなかったの?なんで生きてるの?光ってぱーっと消えたんじゃなかったの?」
千年は興奮して一気にまくしたてた。
さっき化かされたってことで二人納得?したつもりだったがやはりそうじゃない。
ま、俺も同じだんだけどね。
だが、俺はずっと考えていたことをようやく言う決心がついた。
「あれは夢でも化かされたわけでもない、現実だ」
「そして、そこで起こったことは相手にはダメージが無いが、俺たちにはダメージがあるってことだ。」
「・・・う・・・」
千年は少し反論しようとしたようだったが「そう、みたいだね」と喉の奥に詰まったものを飲み下すように、大人しく俺の意見を認めた。
俺は通話を切るとベットにどさりと横になり、天井に右手の平を天上に向けて突き出した。
そして、がばりと起き上がり「はああああああああ!」と右手を突き出し「なんか」を出そうと試みた。
・・・が、なんにも出るわけはなかった。
ですよねー・・・
「ま、そうそうあんな変なこと二度と起きるわけないしな。」
俺は再びベットにどさりと大の字に横たわった。
だがそれは大間違いだった。