プロローグ
果てすら分からぬ漆黒の闇
宇宙
その宇宙には計り知れないあまたの銀河が存在する。
その数は一兆とも二兆とも言われ、観測精度が上がるにつれて銀河の数は増えてゆく。
更にその銀河に目を凝らすと
盤状に渦を巻くもの、棒状、レンズ状、変わったものでは環のような 幾何学的な美しさをもつものまで・・・
様々な形状の銀河が存在する。
そして、その数ある銀河の中で穏やかに弧を描き、中心にまばゆい輝きを放つ銀河がある。
その銀河の光輝く中心・・・ではなくて、ちょっと外れの銀河から伸びた光の腕の中に、大切に抱え込まれるようにして存在する一つの惑星。
その惑星は多くの清らかな水をたたえ、まるで宝石、まるで奇跡のように美しい青い惑星、そう我々の住む地球である。
地球は約七割が海、残りの約三割が地表であり、そこでは長い年月世代を超えてさまざまな進化が繰り返され、多種多様な生命を育んできた。
波乱に満ちた45億年と言われる地球の歴史の中で
人類はその誕生からほんのまばたきする間に文明を発展させ
人々は都市を作り、地中から頭上までありとあらゆる交通手段を張り巡らせ、また狭い地域で空に届くかのようなビルディングを建て、暮らし。
他の生物とは違った時間軸でもあるかのように発展し、更には宇宙へとその生活の場を移り出そうとしている。
そしてここに男が一人
目まぐるしく変化する暮らしの中で
よどんだ水たまりに佇み
高層ビルの隙間から見える狭い空を眺めている・・・
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
はーい。ナレーションお疲れ!
星空を見上げる男とは・・・この俺!
そして俺が住むのは、東京からはるか離れた地方の山奥!
そんで俺は都会人でもなんでもなくて、超が付くド田舎の村、その名も「天ノ村」に住む高校2年生。
名前は 及川尊 という。
「んはー!マジ宇宙超広れえええええええー!」
俺はご自慢の愛機であるドブソニアン望遠鏡の接眼レンズから目を離し、肉眼で夜空を仰ぎ見る。
周囲は家の明かりや街灯がポツンポツンと見える程度でほぼ真っ暗闇、頭上の星空の方がよっぽど賑やかだ。
こういう趣味だと田舎万々歳だなぁ。
うんと背伸びをすると、横に置いていたアウトドア用の椅子にどっかと腰をおろし、ちょっと湿った夜の空気を胸いっぱいに吸い込む。
なんすかねえ、こんなド田舎のダッセー高校生の俺でも星空見てると、まるで世界の中心にいる気がするわけで!
そんで自分の悩みなんて宇宙とくらべりゃちっぽけなわけで!まあ実際のところ明日の課題とか全然やってないしこのままだと明日ヤバイ!!ってわかっちゃいるけど、今のこの満天の星空の下では課題など小さすぎてどーでもいいことなのである。
「フッ・・・」
(この男、今さえ良ければいいタイプのようだ)
読んでいただき、ありがとうございます。どうぞ宜しくお願い致します。